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2013年1月19日(土)付

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アルジェリア―強行しかなかったのか

人質救出作戦で、多くの死傷者が出たようだ。なぜ強硬策を急いだのか。アルジェリアの天然ガス施設で起きたイスラム武装集団による人質事件で、政府軍が突然の作戦行動を展開した。[記事全文]

東南アジア歴訪―「価値観」を語るなら

安倍首相が、就任後初の外遊となる東南アジア歴訪を終えて帰国した。アルジェリア人質事件の対応を理由に日程を短縮。東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好協力40周年を記念[記事全文]

アルジェリア―強行しかなかったのか

 人質救出作戦で、多くの死傷者が出たようだ。なぜ強硬策を急いだのか。

 アルジェリアの天然ガス施設で起きたイスラム武装集団による人質事件で、政府軍が突然の作戦行動を展開した。

 プラント建設会社、日揮などの日本人社員17人のうち安否が確認できない人も多い。日本人2人が死亡したとの情報もある。残りの外国人を含め、人質の無事を祈るほかない。

 報道によると、人質を連れて車で逃げようとした武装集団に向けて、白昼、空爆が始まった。人質はテープで口をふさがれ、首に爆発物を巻き付けられていたという。

 そうした状況が本当なら、アルジェリア政府は人質の救出より、武装集団の全滅を優先したと見られても仕方あるまい。

 過去の人質事件を振り返ると、事態の打開を図るため、まず犯人側との交渉に集中することが多い。特殊部隊による救出を行う際も、周到な準備の末に多くは暗闇の中で行われた。

 政府は武装集団との交渉を拒む方針を示していた。作戦はそうした姿勢を貫くものだ。強硬策に出れば、人質に犠牲が出かねないことは予想していたはずである。

 この国では90年代、軍とイスラム過激派との内戦で一般市民を含む多くの犠牲者を出した。武装集団への軍の厳しい対応はこうした対立構造の根深さをうかがわせる。

 国内の他の武装集団への威嚇効果を狙ったのは間違いない。救出作戦について米欧に支援を頼まず、その内容も関係各国に知らせなかった。米欧への依存と受け止められ、国内での批判の口実になることを恐れたのかもしれない。

 しかし、国際テロ組織アルカイダとつながるイスラム武装勢力は、国境を越えて活動しており、一国だけの対応では限界がある。こうしたテロ集団への対応には各国の幅広い連携が欠かせない。

 資源開発への投資を考える外国企業にも一連の経緯は新たなリスクと映りかねない。

 武装勢力について、国際社会の情報交換や協力がさらに必要だ。アルジェリア政府には救出作戦の全容について明確な説明を求めたい。

 安倍首相をはじめ日本政府はアルジェリア側に人命第一という方針を伝え、強行しないよう求めた。こうした考えが顧みられなかったのは残念だ。

 再発を防ぐためにも、政府や経済界は事件から教訓を導き出してほしい。

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東南アジア歴訪―「価値観」を語るなら

 安倍首相が、就任後初の外遊となる東南アジア歴訪を終えて帰国した。

 アルジェリア人質事件の対応を理由に日程を短縮。東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好協力40周年を記念するスピーチも中止になった。

 それでも、東・南シナ海で軍事的圧力を強める中国をめぐる協力関係を築き、成長著しいこの地域の経済活力を取り込むという目的に照らせば、一定の成果はあったといえるだろう。

 だが、首相が掲げる「価値観外交」にふさわしい第一歩になったとは、とてもいえない。

 首相はジャカルタでの記者会見で、ASEAN外交の原則として「自由、民主主義、基本的人権など普遍的価値の定着と拡大に努力していく」と語った。

 ところが、実際の言動はどうか。例えば、最初の訪問国ベトナムは、中国と同じ共産党一党独裁体制が続いている。最近も政府批判のブロガーが相次いで逮捕され、報道の自由も制限されている。

 国際NGOによる言論の自由度調査でも、他のASEAN各国同様、例年下位を低迷する。

 首相は、ベトナム首脳と「戦略的パートナーシップ」をうたい上げたものの、こうした点を改めるよう求めた形跡はない。

 一方、民主党政権を引き継ぐ形でベトナムへの原発輸出の推進を誓った。

 原発事故の検証は道半ばである。新たな原発政策も定まっていない。にもかかわらず、他国への輸出には前のめりだ。

 ベトナム南部で進む原発の導入可能性調査は、日本政府が費用を丸抱えする。日本原電と随意契約したベトナム政府は調査結果を発表しない方針だ。メディアの取材や研究者の現地調査もほとんど認めない。

 透明性からほど遠い原発輸出の推進は「普遍的価値に立脚した外交」といえるのか。

 首相の価値観外交は、中国や北朝鮮への牽制(けんせい)に主眼があるのかもしれない。

 ただ、相手国によって、それを主張したり、しなかったりでは普遍的とはいえない。

 歴訪と前後して、逆に首相自身の「価値観」を問題視する発言が、各国の政府関係者から相次いでいる。

 豪州のカー外相は、慰安婦問題で旧日本軍の強制性を認めた河野談話の見直しについて「近代史で最も暗い出来事の一つであり、見直しは望ましくない」と指摘。米オバマ政権の高官も同様の懸念を示した。

 共有すべき価値観とは何かもまた問われている。

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