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2013年1月20日(日)付

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787型機―日米で信頼を取り戻せ

ボーイング787型機が、しばらく空を飛べなくなった。日米の航空当局が命じた。事態を重くみている表れだろう。通常、トラブル時の点検は運航に支障がないように数機ずつ順繰りに[記事全文]

たまゆら判決―高齢者の住まいに目を

被告を裁いて、それで落着という事件ではない。重い課題が突きつけられたままだ。今後、大都市圏で急増する低所得の高齢者たちは、どこで、どう暮らせばいいのか――。[記事全文]

787型機―日米で信頼を取り戻せ

 ボーイング787型機が、しばらく空を飛べなくなった。日米の航空当局が命じた。

 事態を重くみている表れだろう。通常、トラブル時の点検は運航に支障がないように数機ずつ順繰りに止めて調べる。全機一斉、というのはまれだ。

 命令の理由になったのは、バッテリーからの発煙や出火だ。燃料漏れも続いた。

 洋上を飛んでいるときだったら、火災や燃料不足で大事故につながりかねない。

 大ごとにならないうちに全機を止める。言われる前に自らふみきった全日空、日本航空もふくめ、妥当な判断だった。

 原因を調べ再発を防ぐには、製造国の米国との連携がこれまで以上に大切になる。

 787は新しい発想で設計された。燃費を抑えるため、従来はエンジンからの圧縮空気を使っていたものを電気で動かす。翼やブレーキの操作も油圧から電気に置きかえた。

 リチウムイオン電池式のバッテリーが採用されたのも、旅客機で初めてという。

 トラブルは同機の特徴である電気系統で起きた。新鋭機だけに国内の知識の蓄積は十分ではない。ボーイングと情報交換を密にする必要がある。

 いつになれば運航を再開できるか、見通しは立っていない。

 問題はバッテリーそのものにあるのか。配線や、配線につながる装置なのか。設計段階で想定していなかった負荷がバッテリーにかかったのか。まず、そこを運輸安全委の調査で見きわめるのに時間がかかる。

 仮にバッテリーの問題だとすれば、対策に数カ月かかることもあるとメーカーは言う。

 長期化すれば、航空会社の受ける影響は大きい。

 いま世界にある約50機の半分は全日空と日航が使っている。低燃費で小ぶりな787は遠い海外の中都市にも路線を張りやすく、使い勝手がよい。今後の主力機としても期待している。

 しかし、あまり停止が続くようなら、いずれは機種や路線の見直しが必要になりかねない。パイロットも操縦できる機種が決まっていて、簡単に他へ回せない。

 機体の35%は日本製だ。そのメーカーの株価が下がるなど、産業界も影響を受けている。

 ただ、ここは我慢のしどころだ。これ以上深手を負わないためにも、しっかり安全な飛行機になおす必要がある。

 運輸安全委だけでなく、航空会社やメーカーも積極的に米側と情報を共有し、787の出直しに力をあわせてほしい。

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たまゆら判決―高齢者の住まいに目を

 被告を裁いて、それで落着という事件ではない。重い課題が突きつけられたままだ。

 今後、大都市圏で急増する低所得の高齢者たちは、どこで、どう暮らせばいいのか――。

 群馬県の「静養ホームたまゆら」から出火し、高齢の入居者10人が死亡した事件で、前橋地裁は施設を運営していた法人の元理事長に、執行猶予つきの禁錮刑を言いわたした。

 たまゆらは役所の要請で、生活保護を受けている認知症の患者らを安い料金で入居させていた。判決は、苦しい経営事情をくみつつ、実態は有料老人ホームであり、それに見合う防火管理の義務があったと述べた。

 具体的に警報器の設置や避難訓練、当直員の増員を挙げ、これらの費用をまかなうのは可能だったとした。他の同様の施設には教訓になるだろう。

 だが、対策が不十分なところを閉鎖すれば済むわけではない。お年寄りの行き場がなくなるからだ。

 厚生労働省は、高齢者が住みなれた地域で、医療や介護などのサービスを利用しながら暮らし続ける将来像を描く。

 厚生年金を受給できるような中間所得層向けには、「サービス付き高齢者向け住宅」などの基盤整備を進めている。

 ところが、低所得の高齢者の住まいは、政策的な空白地帯といえる。国や自治体は、本腰を入れて取り組むときだ。

 朝日新聞の調べでは、東京23区で生活保護を受けながら、都外の高齢者施設に入居している人は昨年10月で約1800人にのぼる。たまゆらの火災が起きた2009年の2・6倍だ。

 この流れはさらに強まる。

 高齢者住宅財団の推計によると、民間の借家に住み、生活支援や介護が必要な一人暮らしの高齢者は10年時点で全国に約17万8千人。25年には33万7千人まで増える。

 低年金で、貯金を使い果たせば生活保護に頼らざるをえない人たちが多い。

 住まいとケアが一体となった特別養護老人ホームは、建設費がかかることなどから大きく増やすのは難しい。公営住宅の数も限られ、特に高齢者向けの応募倍率はきわめて高い。

 ならば、増加傾向にある空き家を活用し、ゴミ出しなど日常生活を支援していくのも一案だ。低所得者が利用できる住宅手当が必要になろうが、生活保護に至る前に手助けすることで、かえって財政負担が抑えられる可能性がある。

 誰でも、住まいなしには人間的に生きられない。

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