2013年1月16日(水)14時から、東京都港区の原子力規制委員会にて、「大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 第3回評価会合」が行われた。今回も、地すべりか活断層かの結論は持ち越しとなった。調査に参加した4人の専門家のうち、二人が、台場浜トレンチに見られる変動が、地すべりによるとの認識を示した。しかし、活断層の定義も一致しておらず、また、最重要施設下を通っている可能性があるF6破砕帯の詳細も明らかになっておらず、大飯発電所敷地内破砕帯問題は長期化する見込みである。

 昨年12月28、29日に行われた、大飯発電所敷地内破砕帯調査の評価会が開かれた。調査に参加した専門家の一人、信州大准教授の廣内大助氏は「F6破砕帯のデータは十分に得られていないが、台場浜トレンチで見られる破砕部は、地すべりでは説明ができず、活断層の可能性は否定できない」とし、F6破砕帯と連動する可能性もあると結論付けた。また、東洋大教授の渡辺満久氏も、前回同様、台場浜のずれを「活断層に起因するもの」と断定。「問題となっている敷地内の断層は、海にある主断層FO-Aが形成する隆起・変形帯の一部であり、原子炉直下の短い断層も動かす危険性がある」と示唆した。

 しかし、産業技術総合研究所の重松紀生氏は、「台場浜トレンチ内のずれは、深部まで続いていないことからも地すべりである」と主張し、「活断層によるものではない可能性が高い」と述べた。同じく、立命館大学教授の岡田篤正氏も地すべりとの見方を示し、意見は2対2で真っ向から対立する形となった。

 今回の評価会合でも、専門家らの見解は一致せず、結論は持ち越しとなった。渡辺氏は「この変動は後期更新世以降のもので、『累積的な地殻変動が否定できず、断層が原因であることが否定できない場合、活断層を適切に想定する』という国の指針に従うべきだ」と主張し、「委員によって、活断層の定義の食い違いが存在し、議論の収拾がつかない」と苦言を呈した。

 渡辺氏のこの意見に対し、原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は「重要構造物に与える影響の有無、が重要」との認識を示した。島崎氏は、先述の専門家らの報告を受け、「地すべりであれば、仮に動いても建屋に影響はない。また、台場浜トレンチの変形が、台場浜に限られ、建屋周辺に影響を及ぼさないという結論が得られれば、『安全性が高い』と言える」とまとめた。ただし、これは台場浜に限った話であり、まだF6の評価がほぼ手付かずの状態である。

 今後、原子力規制庁は、さらにボーリングデータの整理を進め、それを元に専門家らが議論を行う。また、F6破砕帯追加調査の一環として、掘削作業中の南側トレンチの現地調査を行う予定だ。【IWJ・原】