本年最初の田原総一朗氏インタビュー。衆院選での自民大勝・民主惨敗の理由や、脱原発が争点にならなかったこと、そして民主党再生の可能性を聞いた。【編集部 田野幸伸】
田原:今回の総選挙、僕にとって予想外がいくつもあった。自民党が200議席前後かなと思っていたし、民主党も100は取ると思っていた。それが大きく外れて、自民党が294議席、民主党が57議席。非常に大きく外れた。維新の会は5、60だと思っていたので、こちらは外れなかったが。なぜ、こうなったのだろうかというと、維新の会もみんなの党も、自民党の票を食うと思っていた。それが民主党の票を野党がみんなで食い合う結果になった。
それは野党が、自民党攻撃をしなかったからだ。さらに野党の主張がほとんど同じだったこと。
1つは反原発。原発をいつゼロにするかというスピード競争だった。
2つ目はTPPの問題、ほとんどの党が煮え切らなかった。
3つ目は安全保障について、自民党以外はほとんどなんにも言わなかった。
そして国民の大半は、一番大事な問題は不況、デフレからの脱却だと思っていた。 その中で不況対策を押し出したのは自民党だけだった。
つまり、野党は一番大事な問題についてほとんどなにも触れなかった。反原発の問題にしても、僕は、日本人の多くは、「原発は危ない」という気持ちがあり、原発をゼロにして、原発に替わるエネルギーを開発しなければいけないと思っていると思う。ところが、野党が脱原発について、リアルなメッセージを出せなかった。
昨年11月の「朝まで生テレビ」で、全党の論客に出てもらった。(激論!総選挙・そこが聞きたい!)エネルギー問題で、自民党以外は、原発をゼロにするという。
原発をゼロにするのには、3つ問題がある。まず、使用済み核燃料は青森県六ヶ所村にある。原発ゼロなんてことを言ったら、六ヶ所村が、全国の原発に使用済み核燃料を返すという。この問題をどうするか、現に、民主党は六ヶ所村からこれを言われて、9月14日に革新的エネルギー戦略を出しながら、9月19日にはこれを単なる参考資料にしてしまった。
それから、日本では使用済み核燃料の最終処理の方法に見当もついていない。これをどうするのか。40年で原発を廃炉にする。廃炉ってどうやってやるのか、時間がどれだけかかるのか。その技術者はどうするのか、これについて全く答えられなかった。それから、原発に変わるエネルギーは、どういうエネルギーをいつごろ、原発に代わるだけ開発できるのか、これについても絶句状態だった。
つまり、原発反対を言っている党が、肝心の原発について、全くリアリティがない。一種の夢のようなことを言っていた。ということで、国民は「原発なんかどうでもいいや」とは思っていたのではなく、原発反対と言っている党のリアリティの無さにあきれ、「しらけ」を買って、票を減らした。
この最たるのが民主党である。皮肉なことだけど、原発を3年で考えて、10年で方向を示すといった自民党が、逆にリアリティがあって見えた。皮肉なことにね。
田原:次に不況問題、景気問題。安倍総裁が、日銀とケンカするような発言をした。これをマスコミはほとんど誤解をした。新聞も全部誤解をした。
安倍さんが言おうとしたのは、今の不況を脱出するためには、まず円安にすべきだということ。円安にする方法はひとつ。日銀がじゃんじゃん円を刷ること。こんなことは決まりきったことなのに、なぜか、自民党の福田内閣以来、どの総理も言わず、円が高くなるのに任せた。
そして、今一番の問題は、需要が無いことなのだが、選挙戦の最中に、笹子トンネルの落盤事故が起きた。これは安倍さんにとってラッキー極まりない事故だった。ラッキーというと、非常に不謹慎だと思われるだろうが、笹子トンネルみたいに危ないトンネルが、日本中にあることがわかった。さらに、その後新聞などが、高度成長期に作られた高速道路がみんな危なくなっている、下水道、上水道なども老朽化して危険だと報じた。一挙に、安倍さんへの追い風が風速50mになった。古くなったインフラを改築、作り直さなければならない。
今までは公共事業というのはタブーだった。公共事業はばら撒きで、一部ゼネコンが儲かるだけだ。ところが、笹子トンネルの事故で、あちこち直さなければいけないというのが大きく取り上げられた。補修のための公共事業に対する反発は全く無くなった。
おそらく自民党は、この公共事業に本格的に手をつける。少なくとも10兆円はかかる。これは明らかに需要を生む。しかし、10兆以上の公共事業、カネをどうするのか。
そこで財務省が、建設国債を発行する。安倍さんが言ったのはこの点で、建設国債を発行して、これをいったん市中の銀行が買い、それを全部日銀が買う(買いオペ)。「日銀が買い取る」と言ったのを、マスコミは「日銀が国債を引き受ける」と報じた。建設国債を直接日銀が引き受ける禁じ手だと書いた。これは法律違反になる。
そこで日銀と安倍総裁がケンカ状態になった。賛否両論あったけども、これに対して市場が安倍さんに反応し、味方になった。安倍さんが日銀とケンカする前、円は78円。今はなんと84円。かなり円安になった。民主党が円安にしたくても出来なかったのに、あっという間に円安。
さらに、もう1つ大きいのが株価、安倍さんがケンカする以前、株価は8千円代後半、これが、9400~500円とどんどん上がり、ついに1万円になった。市場の安倍さんに対する反応を見て、国民はいやおうにも納得せざるを得なかった。
安倍自民党の言っていることはいいんじゃないかと。デフレ脱却、いい方向にいくんじゃないかと。市場の反応が、大きかった。僕はこれが自民党の勝った最大の原因だと思う。
マスコミ、新聞は特に、安倍さんが安全保障、集団的自衛権、憲法改正にまで踏み込んだことに大きく反応したけれども、実は国民は、集団的自衛権ではなくて、市場の反応のよさに手ごたえを感じたのではないか。
今回の総選挙は「想定外」
田原:今回の総選挙、僕にとって予想外がいくつもあった。自民党が200議席前後かなと思っていたし、民主党も100は取ると思っていた。それが大きく外れて、自民党が294議席、民主党が57議席。非常に大きく外れた。維新の会は5、60だと思っていたので、こちらは外れなかったが。なぜ、こうなったのだろうかというと、維新の会もみんなの党も、自民党の票を食うと思っていた。それが民主党の票を野党がみんなで食い合う結果になった。
それは野党が、自民党攻撃をしなかったからだ。さらに野党の主張がほとんど同じだったこと。
1つは反原発。原発をいつゼロにするかというスピード競争だった。
2つ目はTPPの問題、ほとんどの党が煮え切らなかった。
3つ目は安全保障について、自民党以外はほとんどなんにも言わなかった。
そして国民の大半は、一番大事な問題は不況、デフレからの脱却だと思っていた。 その中で不況対策を押し出したのは自民党だけだった。
つまり、野党は一番大事な問題についてほとんどなにも触れなかった。反原発の問題にしても、僕は、日本人の多くは、「原発は危ない」という気持ちがあり、原発をゼロにして、原発に替わるエネルギーを開発しなければいけないと思っていると思う。ところが、野党が脱原発について、リアルなメッセージを出せなかった。
昨年11月の「朝まで生テレビ」で、全党の論客に出てもらった。(激論!総選挙・そこが聞きたい!)エネルギー問題で、自民党以外は、原発をゼロにするという。
原発をゼロにするのには、3つ問題がある。まず、使用済み核燃料は青森県六ヶ所村にある。原発ゼロなんてことを言ったら、六ヶ所村が、全国の原発に使用済み核燃料を返すという。この問題をどうするか、現に、民主党は六ヶ所村からこれを言われて、9月14日に革新的エネルギー戦略を出しながら、9月19日にはこれを単なる参考資料にしてしまった。
それから、日本では使用済み核燃料の最終処理の方法に見当もついていない。これをどうするのか。40年で原発を廃炉にする。廃炉ってどうやってやるのか、時間がどれだけかかるのか。その技術者はどうするのか、これについて全く答えられなかった。それから、原発に変わるエネルギーは、どういうエネルギーをいつごろ、原発に代わるだけ開発できるのか、これについても絶句状態だった。
つまり、原発反対を言っている党が、肝心の原発について、全くリアリティがない。一種の夢のようなことを言っていた。ということで、国民は「原発なんかどうでもいいや」とは思っていたのではなく、原発反対と言っている党のリアリティの無さにあきれ、「しらけ」を買って、票を減らした。
この最たるのが民主党である。皮肉なことだけど、原発を3年で考えて、10年で方向を示すといった自民党が、逆にリアリティがあって見えた。皮肉なことにね。
安倍自民党に吹いた「追い風」
田原:次に不況問題、景気問題。安倍総裁が、日銀とケンカするような発言をした。これをマスコミはほとんど誤解をした。新聞も全部誤解をした。
安倍さんが言おうとしたのは、今の不況を脱出するためには、まず円安にすべきだということ。円安にする方法はひとつ。日銀がじゃんじゃん円を刷ること。こんなことは決まりきったことなのに、なぜか、自民党の福田内閣以来、どの総理も言わず、円が高くなるのに任せた。
そして、今一番の問題は、需要が無いことなのだが、選挙戦の最中に、笹子トンネルの落盤事故が起きた。これは安倍さんにとってラッキー極まりない事故だった。ラッキーというと、非常に不謹慎だと思われるだろうが、笹子トンネルみたいに危ないトンネルが、日本中にあることがわかった。さらに、その後新聞などが、高度成長期に作られた高速道路がみんな危なくなっている、下水道、上水道なども老朽化して危険だと報じた。一挙に、安倍さんへの追い風が風速50mになった。古くなったインフラを改築、作り直さなければならない。
今までは公共事業というのはタブーだった。公共事業はばら撒きで、一部ゼネコンが儲かるだけだ。ところが、笹子トンネルの事故で、あちこち直さなければいけないというのが大きく取り上げられた。補修のための公共事業に対する反発は全く無くなった。
おそらく自民党は、この公共事業に本格的に手をつける。少なくとも10兆円はかかる。これは明らかに需要を生む。しかし、10兆以上の公共事業、カネをどうするのか。
そこで財務省が、建設国債を発行する。安倍さんが言ったのはこの点で、建設国債を発行して、これをいったん市中の銀行が買い、それを全部日銀が買う(買いオペ)。「日銀が買い取る」と言ったのを、マスコミは「日銀が国債を引き受ける」と報じた。建設国債を直接日銀が引き受ける禁じ手だと書いた。これは法律違反になる。
そこで日銀と安倍総裁がケンカ状態になった。賛否両論あったけども、これに対して市場が安倍さんに反応し、味方になった。安倍さんが日銀とケンカする前、円は78円。今はなんと84円。かなり円安になった。民主党が円安にしたくても出来なかったのに、あっという間に円安。
さらに、もう1つ大きいのが株価、安倍さんがケンカする以前、株価は8千円代後半、これが、9400~500円とどんどん上がり、ついに1万円になった。市場の安倍さんに対する反応を見て、国民はいやおうにも納得せざるを得なかった。
安倍自民党の言っていることはいいんじゃないかと。デフレ脱却、いい方向にいくんじゃないかと。市場の反応が、大きかった。僕はこれが自民党の勝った最大の原因だと思う。
マスコミ、新聞は特に、安倍さんが安全保障、集団的自衛権、憲法改正にまで踏み込んだことに大きく反応したけれども、実は国民は、集団的自衛権ではなくて、市場の反応のよさに手ごたえを感じたのではないか。
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