-夜・・・-
私は食事を済ませた後自分の部屋で学校で出された課題をやっていた
「・・・分からない」
自慢ではないが私は勉強は苦手なのだ
この学園へは気合で通ったようなものだが授業もいまいちついて行けるとはいえない
まあ、居眠りしていないだけマシなのかもしれないがこのままではテストとかあったら結果は目に見えているだろう
「しかたない、かなたさんに教えてもらおう・・・」
私は一人そうつぶやくとかなたさんの部屋へと向かった
「かなたさん、亜希だけど、いるかな?」
ノックしてみるが返事はない
「かなたさん?」
再度ノックしてみるがやはり返事がない
うーむ、お風呂に入っているのかな?
「ふう・・・仕方ない、自分で頑張るか・・・」
私はそう呟くと自分の部屋に戻り教科書を片手に課題と睨めっこすることにした
-かなたパート-僕は今お風呂に入りながら目の前の問題に頭を悩ませていた
体育か・・・
女の子の中に混じって着替えないといけないんだよね・・・
なんでもっと早く気づかなかったんだろう
「うぅ・・・明日の体育どうしよう」
一人呟いてはみるもののそれでどうにか解決できる問題ではない
今の今まで体育のことはすっかり頭の中から消えていたのだ
しかも体育の授業は明日・・・
そう、泣いても笑っても明日には体育の授業がやってくるのだ
何か理由をつけて・・・とは思うが事あるごとに休んでいては怪しまれる
最悪そこから僕が男であるということがバレかねない
「はぁ・・・」
「どうしたの?かなたちゃん、ため息なんか付いて・・・
僕は風呂椅子に座り、身体を洗いながらため息をつくとどこからともなく声が聞こえる
「ええ、実は・・・
って!ええーーーっ!?な、ななな・・・なんでレナさんがいるのっ!?
わ・・・私時間、ままま・・・間違えたっ!?」
ふと気づくとレナさんがお風呂場のドアの所に立っていた。
一応タオルを巻いてはいるようだが突然のことで僕は声が裏返ってしまう
「かなたちゃん、お風呂場は声が響くんだからあまり大きなこえださないでよ
あ、時間は間違えてないよ、ボクが乱入しただけ。たまには裸の付き合いもいいんじゃないかと思ってね、スキンシップってやつだよ
お邪魔するねー♪」
「え・・・あ、あの・・・」
レナさんは僕の裏返った声を聞き最初はやや顔をしかめていたが、すぐに笑顔を見せるとさも当たり前のように浴室に入ってきた
というかレナさんっ!せめてタオルか何か捲いてっ!!
僕は声にならない叫びをあげる
「かなたちゃん?」
「な・・・なに?」
後ろからレナさんの目が僕を見据えている
ほんの数秒だと思うのだけれど、それが数分にも数時間にも感じられ、僕はレナさんの次の言葉を息を飲みながら待った
「かなたちゃん、線が細いねー、羨ましいよ♪」
「え?あ、そ・・・そうかな・・・?」
レナさんの視線が怖い・・・
早く上がったほうがいいかもしれない
そう思った時
「うん、とても男の子とは思えないよ」
「え・・・?」
レナさんの言葉を聞いて僕は凍りついた
今・・・なんて・・・?
僕の背中に冷たいものが流れていくのを感じた
まさか僕の正体も気づかれてしまったのだろうか?
いや、まだそうとは決まっていない、まだ誤魔化せばなんとか・・・
「えっとね、実はボクは人よりもちょっと感覚が鋭くてね、その人がかもし出す雰囲気っていうのかな?
そういうのを感じ取れるんだよ、かなた君・・・?」
レナさんは話しながら僕へとゆっくり近づいてくると最後にボクの背中に抱きついてきた
その瞬間僕は身動きが取れなくなってしまった
バレたっ!?
確実にそう思った
「・・・やっぱり」
僕の胸を触るとレナさんは声のトーンを低くし、僕を後ろから睨んでいる
もはや言い訳は通じないだろう
「・・・いつから気が付いたの?」
僕は恐る恐る聞いてみた
「最初からだよ」
最初からっ!?まさか僕と会ったその日に気が付いたってことっ!?
「そ・・・そんな・・・」
「嘘じゃないよ、それにさっきボクは感覚が鋭いって言ったでしょ?でも確信がなかった・・・
けど今日の体育の話で疑念が確信に変わってね、あの驚きようは普通じゃあり得ないもんね
そして悪いとは思ったけどそこの脱衣所で証拠を、君の下着を調べさせてもらったんだよ
さらに決定的な証拠がこの胸板・・・」
「・・・」
完敗だった・・・
レナさんはただ何気なしにここに来たわけではないようだ
自分の推測を裏付ける決定的な証拠を押えに来たのだ
「君も知っての通り、ボクはここの寮監なの
だからこの寮に住んでる女の子たちを守る義務もあるんだよ
君はここに何の目的で来たの?事と次第によっては・・・ボクは君を許さない」
・・・もう潮時だろう、こんなことがバレないはずはないんだ
もうすべてを話して楽になろう・・・
「分かりました、すべてを話します
その前に僕を離してもらえますか?」
「・・・いいけど、逃げない?
逃げたら容赦しないよ?」
「はい、逃げません」
レナさんは僕の言葉を信じてくれたのか手を離すと僕は全てを打ち明けた
「ええっ!それ本当なのっ!?
その遺言でこんなところに来ているのっ!?」
僕の話を聞いてレナさんはかなり驚いた表情を浮かべていた
嘘に見えるけど全ては本当のこと
「うん、信じてもらえるかどうかわからないけれど、僕が話したことは全て本当のことなんだ・・・」
「・・・それで?その後君はどうするの?」
レナさんの目が僕の目を見据えている
それはまるで僕という人間を見通しているかのように
「出ていくだけだよ
この学園では僕という存在は異質なもの、元からバレないはずがないと、いつかはバレると思ってたんだ・・・」
僕の話を聞いてレナさんは自分の顎に手を当てなにか考えているようだ
「・・・出ていかなくてもいいんじゃない?」
「・・・は?」
今度は僕が驚く番だった
え?出ていかなくていい・・・?どういうこと?
「君が変質的な目的で忍び込んでいるのだとしたら、この場で叩きのめして警察にでも突き出そうと思ってたけど、君は悪い人には見えない
それに女の子たちに手を出そうと思ったら今までいくらでもチャンスはあったはずなのにそれもない・・・
ボクは君を、かなたちゃんを信じるよ♪」
レナさんはそう言いながら僕にウィンクを一つ投げた
「で・・・でも、・・・いいの?
僕は男なんだよ・・・?」
「かなたちゃんのことは僕が責任を持つよ
それにかなたちゃんなら女の子が嫌がりそうなことをしないだろうからね」
「ありがとうございます・・・レナさん・・・」
僕はレナさんの言葉が嬉しくてつい涙が溢れてしまっていた
こんな嘘としか思えない僕の説明を信じてくれた・・・こんなに嬉しいことはない・・・
「かなたちゃん、何泣いてるんだよ
あ、そうか、それ嬉し涙だよね
明日の体育から女の子の生着替えが見放題なんだから♪」
「なっ!?」
レナさんがからかうように言うと僕は顔が赤くなってしまった
「あははは、かなたちゃん顔を真赤にして、可愛い~♪」
ん?まてよ、レナさんが僕の正体を知ったってことは、ひょっとしたら体育のことお願いできるかも・・・
「あ、あのレナさんお願いがあるんだけど・・・」
「ん?なに?ひょっとしてボクの胸を触りたいのかな??
かなたちゃんのエッチ♪」
ぶはっ!違うからっ!それ違うからっ!!
「いえ、そうじゃなくて、明日の体育のことで・・・」
「体育・・・ああ、つまりかなたちゃんの正体がバレないようにガードして欲しいってこと?」
レナさんは僕の意図に気がついてくれたようだ
「うん・・・お願いできる・・・?」
というかしてくださいっ!
「うーん・・・いいよ、引き受けてあげるよ」
「ありがとうございます」
「あはは、いいっていいって
それじゃあ、ボクはこれで失礼するね♪」
レナさんは僕の頼みを快く引き受け風呂場を後にした
ふう、正体はバレたけど・・・結果的に体育の問題はクリアできた・・・かな?
でも次はこうは行かないだろうから、バレないよう気を引き締めないと・・・
-その頃リビングでは・・・-
情事を終えたレナがリビングにいるみゆきにそっと近づいた
「みゆきちゃん♪」
「あ、はいなんですか?」
「ちょっとこっちに来てもらっていいかな?」
レナはそう言うとみゆきを台所へと呼び出した
「かなたちゃんって面白い人だね、意外なものもついてるし・・・ね♪」
「まさか・・・レナ先輩・・・」
レナのそう言いながらイタズラっぽい笑みを浮かべるとみゆきは一瞬にして顔が青くなった
「あ、大丈夫大丈夫、こんな面白いこと簡単には人に喋らないよ
だから、かなたちゃんのことはボクに任せといて、きちんとフォローしてあげるから」
「あ、はい、ありがとうございます
私は学年が違うのでどうしてもフォローできない部分が多々ありますので・・・」
みゆきはレナの言葉を聞いてホッとした
どうやらバラしてどうこうという気ではないらしい
「じゃ、そういう事だから、じゃあねー」
レナはそう言うとお風呂へと向かっていった
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。