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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第10回】 2013年1月18日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

最初から「引き下げありき」だった? 
生活保護見直しを巡る厚労省と当事者・支援者の攻防
――政策ウォッチ編・第10回

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誰も賛成していない意見を「両論併記」?
なぜ問題山積の報告書作成を急ぐのか

 この報告書案の最大の問題は、部会の議論の中で、誰も明確に賛成あるいは反対の意思表示をしていなかった意見も、「両論併記」の形で掲載されていたことである。この問題に関しては、委員の1人・花井圭子氏(日本労働組合総連合会)が、鋭く異議を表明した。

 例えば報告書案44ページ~45ページには、生活保護の医療扶助について「適正化」を目指した取り組み案が掲載されている。その最後に、「なお、医療扶助の適正化に関し、医療費の一部負担を導入することについて、額が小さくとも一部負担を検討すべきという意見がある一方で、一部負担は行うべきではないとの意見もあった」とある。

 花井氏は、

 「誰も賛成していなかったはずですから、削除してください」

 と述べた。また花井氏は、介護による失職者が無視される可能性・支援の対象となる「生活保護一歩手前」の層の範囲が狭められる可能性・就職準備支援が利用者の人権を尊重しない可能性・「中間的就労」が実質的な強制労働となる可能性などについても指摘した。さらに、貧困ビジネス規制・家計支援について、「国が何を担うかを明確にしてください」と述べた。

特別部会の報告書案に対する、筆者のイメージ。上半身はSMの「女王様」。片手でバラマキ、片手でムチ。下半身は獣性そのもの。イラスト:柴田栄子

 ケースワーカー経験のある櫛部武俊氏(釧路社会的企業創造協議会)は、困窮者がいかに見つけづらいものであるかについて述べた。生活保護の要否は、他者からはなかなか分かりにくいものであり、ケースワーカーが調査してはじめて判断できるようなものであるという。櫛部氏は「役所の矜持、プライドとして、憲法第25条(生存権)の実現を」と語り、公共として「何をしようとするか」を明確にすることを求めた。

 櫛部氏は、特別部会で検討している新しい困窮者支援体制について「ケンタウルス」と語ったことがある。上半身は人の姿をしているが、下半身は馬。それも暴れ馬であると。現在の報告書案に対する筆者のイメージをイラスト化したものを、右に示す。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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