誰も賛成していない意見を「両論併記」?
なぜ問題山積の報告書作成を急ぐのか
この報告書案の最大の問題は、部会の議論の中で、誰も明確に賛成あるいは反対の意思表示をしていなかった意見も、「両論併記」の形で掲載されていたことである。この問題に関しては、委員の1人・花井圭子氏(日本労働組合総連合会)が、鋭く異議を表明した。
例えば報告書案44ページ~45ページには、生活保護の医療扶助について「適正化」を目指した取り組み案が掲載されている。その最後に、「なお、医療扶助の適正化に関し、医療費の一部負担を導入することについて、額が小さくとも一部負担を検討すべきという意見がある一方で、一部負担は行うべきではないとの意見もあった」とある。
花井氏は、
「誰も賛成していなかったはずですから、削除してください」
と述べた。また花井氏は、介護による失職者が無視される可能性・支援の対象となる「生活保護一歩手前」の層の範囲が狭められる可能性・就職準備支援が利用者の人権を尊重しない可能性・「中間的就労」が実質的な強制労働となる可能性などについても指摘した。さらに、貧困ビジネス規制・家計支援について、「国が何を担うかを明確にしてください」と述べた。
ケースワーカー経験のある櫛部武俊氏(釧路社会的企業創造協議会)は、困窮者がいかに見つけづらいものであるかについて述べた。生活保護の要否は、他者からはなかなか分かりにくいものであり、ケースワーカーが調査してはじめて判断できるようなものであるという。櫛部氏は「役所の矜持、プライドとして、憲法第25条(生存権)の実現を」と語り、公共として「何をしようとするか」を明確にすることを求めた。
櫛部氏は、特別部会で検討している新しい困窮者支援体制について「ケンタウルス」と語ったことがある。上半身は人の姿をしているが、下半身は馬。それも暴れ馬であると。現在の報告書案に対する筆者のイメージをイラスト化したものを、右に示す。