「２５人脱出」と「３５人死亡」アルジェリア拘束人質の情報錯綜

　アルジェリア南東部イナメナスでプラント建設大手の日揮（本社・横浜市）の日本人駐在員らが国際テロ組織アルカイダ系武装勢力に拘束された事件で、アルジェリア政府は１７日、武装勢力への攻撃を開始した。モーリタニアの通信社は、この攻撃で人質３５人と武装勢力１５人が死亡したと報道。一方、ロイター通信は人質２５人が脱出したと報じるなど、情報が錯綜（さくそう）し、日本政府は事態の把握に追われた。

　人質の国籍が約１０か国に及び、日本人も巻き込まれた「近年では最大規模の人質事件」（英紙タイムズ）。テロ組織との妥協を拒否してきたアルジェリア政府は、ついに強襲作戦に乗り出した。

　１７日夜、菅義偉官房長官は緊急記者会見し、アルジェリア軍が人質解放のため攻撃を開始したと、同国駐在の英国大使から情報提供があったことを明らかにした。

　会見と前後して、さまざまな報道が錯綜した。モーリタニアの通信社は、アルジェリア軍の空爆で人質３５人と武装勢力１５人が死亡したと報じた。ただ、アルジェリア政府の確認は得られておらず、現場の状況は不透明なままだ。

　一方、ロイター通信はアルジェリア治安筋の話として、日本人２人を含む外国人２５人が脱出したと報じた。また犯人側の主張として、日本人１人が米国人２人、英国人１人、ベルギー人１人とともに人質になっているとも伝えた。菅官房長官は日本人の安否について「確認中だ」と述べた。

　アルジェリア軍の攻撃に先立ち、「サトシ・キヤマ」と名乗る人質男性が中東の衛星テレビ・アルジャジーラの電話取材に応じていた。男性は「昨日、アルジェリア軍による攻撃と銃撃があった際に負傷した。だが、けがは深刻な状況にない」と説明。「ほかの人たちと一緒にミニバスに乗っていたところを拉致された。ノルウェーから来ている同僚も人質になった。銃撃の際に彼も負傷した」と話した。

　事件は１６日未明に発生。空港に向かう途中のガス田関係者のバスを約２０人のイスラム系武装勢力が急襲した。警備隊の反撃を受けると、プラント施設と居住区に反転し、外国人を拉致した。交戦で英国人ら３人が死亡したとされる。

　武装勢力は人質解放の条件として、仲間の釈放や隣国マリでのフランス軍の軍事作戦停止を要求した。

　犯行グループは米国人７人を含む９～１０か国の外国人計４１人を人質に取ったと主張。これに対し、アルジェリア政府は、人質のうち外国人は約２０人としている。

（2013年1月18日06時03分スポーツ報知）