日馬富士(左)が上手出し投げで豊響を下す=両国国技館で(川上智世撮影)
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◇初場所<5日目>
(17日・両国国技館)
横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は豊響を上手出し投げで退けて5連勝とし、平幕北太樹とともに全勝。横綱白鵬(27)=宮城野=は小結栃煌山を寄り切って4勝目を挙げた。大関復帰が懸かる関脇把瑠都(28)=尾上=は小結松鳳山を下し、3勝2敗。関脇豪栄道(26)=境川=は大関琴欧洲をすくい投げで破り、4勝1敗とした。
横綱本来の速攻が出てくれば、もう万全だ。3日目の豊ノ島戦には32秒1も要した日馬富士だったが、4日目の旭天鵬戦が5秒8、そしてこの日の豊響はわずか1秒2。鋭い踏み込みで主導権を奪い左上手をつかむと体を開いて出し投げを打ち、あっさり料理した。
「まわしを取ったら相手が落ちた。何もしないで、ね。早く終わっちゃった」。日馬富士はちょっぴり拍子抜けした表情も浮かべたが、それだけ立ち合いの威力が強烈だった証明になる。
新横綱として迎えた昨年11月の九州場所は9勝6敗という惨たんたる成績。千秋楽で新横綱ワーストの同一場所5連敗を喫した翌26日、傷心のまま母国モンゴルに帰国した。すぐに日馬富士が向かったのは2006年に交通事故で亡くなった尊敬する父ダワーニャムさんの墓前だった。
「一人の人間として、父に感謝の思いを報告した。胸を張って(墓前に)立てたことは幸せなこと。その時の気持ちが、また力になった」
そして今場所はもう一人、勇気を与えてくれる存在がいる。同じ伊勢ケ浜部屋の兄弟子、安美錦だ。2日目から琴欧洲、鶴竜、琴奨菊と大関に3連勝する快進撃に「すごいね。先輩が頑張るからこっちも頑張れる。励みになるし、勇気をもらえます」
年末に風邪を引いて、初日の3日前には再び発熱して朝稽古を休んだ。さらに横審から厳しい意見も聞こえてくる。しかし心の支えがあるからこそピンチも何とか乗り越えられた。
上位陣では唯一の全勝。しかし「星数とか考えない。いつも通り一日一番、集中してやるだけです」。静かな口調の中に場所を引っ張っていく綱の責任感が伝わってきた。(竹尾和久)
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