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元プロが座学研修で高校野球監督に…高野連が条件緩和提案

 日本高野連(奥島孝康会長)は17日、プロ経験者が高校の監督など指導者になるための規定「中学、高校で2年の教諭歴」を撤廃し、座学による研修を受ければ資格を認めるという条件緩和案をプロ側に示した。既に指導者の受け入れを進めている社会人や大学と足並みをそろえる形になり、半世紀に及んだプロとアマのこじれた関係が大幅に改善される。

 プロ経験者が指導者になるための規定を話し合う「学生野球資格に関する協議会」がこの日、東京都内で開かれ、日本高野連が日本野球機構(NPB)に提示した。プロ、学生側の双方が今後、細部を検討していく。

 日本高野連によると、学生野球の指導資格回復を希望する元プロ選手は、NPBと日本学生野球協会の研修を終えた上で、学生側の審査を経て高校、大学双方の指導ができる資格を得る。

 日本球界は1961年にプロ側による社会人選手の強引な引き抜きが問題となった「柳川事件」をきっかけにプロ、アマの交流が断絶した。高校野球は社会人、大学に比べてプロとの関係改善のペースが遅かったが、指導者の条件となる教諭経験の必要年数を徐々に減らすなど、緩和してきた。2012年2月から、プロ側との協議会を設けて指導者資格についての話し合いを続けた。

 田名部和裕・日本高野連理事「いつまでもぐずぐずと放っておいてはいけない問題だった。この研修制度は高校の監督になるということだけが目的ではない。(修了することによって臨時コーチなど)一時指導ができるようになる」

 竹中雅彦・日本高野連参事「僕らの年代ではプロとは絶対かかわっては駄目だというのがあった。でも、いつかは解決しなければならない問題。アマ側に教える場が奪われると危惧する声もあるが、すべての学校の指導者がプロ出身者になるわけではなく、現場を説得していく」

 西岡宏堂・日本高野連プロアマ健全化委員会副委員長「元高校球児の『恩返ししたい』という思いを聞いてきた。ここでこれがつぶれたら2度目はない。(プロ側には)真剣に取り組んでほしい」

 内藤雅之・日本学生野球協会事務局長「大学は高校の方針に反対する気はない。分かりやすくていい。実現したら(東大の特別コーチになる)桑田君も(研修を)受けないといけないんじゃないか」

 下田邦夫・日本野球機構事務局長「思った以上の回答。高野連、学生野球協会が議論してわれわれの主張、特に選手の思いをすごく理解していただいた。今年のオフには実現できるようなスピード感を持ってやりたい」

 松原徹・日本プロ野球選手会事務局長「正直言ってここまで回答してくれるとは思っていなかった。話し合いが初めてかみ合った。(プロ側の研修は)プロ側の精神、10年かけてやってきたものをきちっと理解してもらうことが大事でそれが主になる」

 王貞治・ソフトバンク球団会長「お互いにとって、垣根が低くなるのはいいこと。子どもたちも教えてもらいたいということもあっただろうし、教えたくても教えられないという人もいただろうし。(プロの)ノウハウもあるわけだからね。今、指導されている方もまた勉強するだろうし、これからなりたいという人も勉強を進めていくだろう」

 佐藤良平・中日球団代表「かなりの前進でしょう。研修で、背負ってきた歴史や、教育現場の理解をしてくれということ。それをしっかり理解した上で取り組む。球団の推薦も必要だということなので、われわれも義務としてやっていく」

 仲井宗基・光星学院高(青森)監督「レベルの高いプロから指導を受けるのはいいこと。だが、それがあるチームに偏ったり、指導者の獲得合戦で多額のお金が絡んだりしないよう、プロアマ双方で規定をつくっていかないといけない。技術指導とチームが強くなるのは別のこと」

 高嶋仁・智弁和歌山高監督「技術のトップはプロ。プロの技術を高校生に伝えていくのはいいこと。特に投手は下手にやるとつぶれてしまうので歓迎する」

 馬淵史郎・明徳義塾高(高知)監督「雪解けになるのは喜ばしいこと。お互いのためになる。前から(プロ経験者の監督就任に)賛成だった。人間性も技術もある人に教えてもらうのは、子どもたちにとってもいいこと。プロだ、アマだと言っていたら日本は取り残される」

 小倉全由・日大三高(東京)監督「高度な野球を入れられるが、高校生を教える難しさは絶対ある。ただ野球を教えればいいのではなく、人間を育てていかないと。情熱と指導力があって、高校生をかわいいと思える人にやってほしい」

 ◆プロアマ交流の歴史◆

 (学生)1932年
  ◆野球統制令施行 それまで行われていた来日米プロチーム(3Aサンフランシスコ・シールズなど)との対戦が禁止される。46年12月の日本学生野球協会結成による学生野球基準要綱の制定に伴い、47年廃止。

 (学生)50年
  ◆日本学生野球憲章制定 学生野球基準要綱を改正。プロ関係者の指導は認めず。退団者は一定期間を経て適性審査をパスすればアマ復帰が可能に。

 (アマ)61年
  ◆柳川事件 プロ側がそれまで毎年結んできた「選手の転出加入に関する協約」締結を拒否した直後、中日が日本生命・柳川福三外野手と契約。これを受け、社会人側はプロ退団者の受け入れ拒否を決定。学生野球協会もこれに同調し、プロアマが断絶状態に。

 (学生)62年
  ◆プロ退団者のアマ復帰拒否 64年の東京五輪エキシビションマッチ出場に際して、プロアマ資格の明確化を求められ、59年以降の退団者のアマ復帰を拒否。

 (社会人)69年
  ◆プロ側との協議再開

 (大学)73年
  ◆OBの元プロ選手からの指導許可 届け出れば出身校に限り許可。97年からは母校以外でもOKに。

 (社会人)78年
  ◆元プロ選手の監督、コーチ就任を許可

 (アマ)94年
  ◆全日本野球会議発足 プロアマが一堂に会した歴史的な会合がスタートし、プロとの協力態勢が完成。

 (大学)95年
  ◆東京六大学でOBプロ選抜対現役選抜 東京六大学野球連盟結成70周年記念試合として行われる。その後は東都大学野球連盟、首都大学野球連盟でも同様の記念試合を開催。

 (大学)2005年
  ◆アマ資格が大幅緩和 元プロ関係者が教員免許取得、2年以上教壇に立つという条件をクリアしなくても、同一の大学で専任教員(教授、准教授、講師、助手)を2年以上務め、適性検査に合格すれば取得可能に。また、アマ資格がなくても人格、技術の優秀な者でプロ球団退団後2年以上が経過していれば、特別審査でのアマ資格認定を経て大学の監督、コーチ就任が可能に。

 (大学)06年
  ◆11月にヤクルト対東京六大学選抜 明治神宮外苑創建80年記念試合として行われる。プロの単独チームが大学生と試合をするのは史上初。

 (大学)09年
  ◆11月にU―26NPB選抜対大学日本代表 プロ野球セ・パ両リーグ誕生60周年記念イベントとして開催。

 (学生)10年
  ◆2月に学生野球憲章が全面改正 禁止されていた練習や試合などのプロアマ交流を大幅緩和へ。

(2013年1月17日20時13分  スポーツ報知)

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