国交省キャリア官僚“天下り社長”解任の内部事情
【政治・経済】
広島電鉄で異例のクーデター
越智氏は1980年に東大法学部を卒業して運輸省(当時)に入省。大臣官房参事官などを務めたあと、07年に退官。09年6月、路面電車の広島電鉄に入社し、10年6月から社長を務めていた。ところが今月8日に解任されたのだ。地元の経済界関係者が言う。
「今月4日に越智氏が役員を集めて新年のあいさつをしたあと、専務の椋田昌夫氏(66)が越智氏の経営方法に不満を訴え、臨時取締役会の開催を要求したのです。だが当日、越智氏は出席せず、2時間待ったあと役員10人で採決。全員一致で解任が決まり、椋田氏が社長に就任しました」
越智氏は中国運輸局にいたころ、当時の大田哲哉社長(故人)と知り合い、その後、ヘッドハンティングされて入社した。それをあっさりとクビにしてしまった背景には、いくつかの事情が絡んでいる。
広島電鉄は広島駅前の再開発に合わせて線路の一部を直線化する官民のプロジェクトを進めている。その工事で越智氏は線路を地下に通すプランを主張。一方、JRと市は高架を希望している。広島電鉄社内では「地下案はカネがかかる。チンチン電車は急勾配を上れない」と役員は全員、越智氏に反対していた。
<強引なやり方に役員の不満爆発>
もうひとつある。
「越智氏は元日のテレビ番組に出演して、運賃を値上げする方針をしゃべってしまったのです。これに役員連中がキレた。役員会の承認なしで独断で公表したからです」(前出の関係者)
しかし、2つの事件はキッカケにすぎない。もともと役員たちは、越智氏の強引なやり方に不満を募らせていたという。
「越智さんは典型的なワンマン社長でした。キャリア官僚という意識が強かったのでしょう。それでも先代の大田さんが生きている間は、みな我慢していた。後ろ盾だった大田さんが亡くなったことで遠慮なく解任できたようです」(業界関係者)
越智氏は官僚時代からアクの強い人物だったらしく、同僚は役所を辞めることも直前まで知らなかったという。
世にも珍しい天下り追い落とし劇で、元キャリア官僚は非常勤の取締役に降格。天国から地獄である。