アホウドリ 卵を保護・動物園で飼育へ1月15日 16時2分
絶滅が心配されている国の特別天然記念物「アホウドリ」の新たな繁殖地を作る取り組みで、去年、初めて産卵が確認されましたが、その後、雌の親鳥の姿が見られず、ひなが誕生しても育たない可能性が高いことが分かり、環境省などは卵を保護し、ひなが誕生した場合には東京の動物園で育てる方針を決めました。
「アホウドリ」の新たな繁殖地作りは、環境省と山階鳥類研究所などが5年前に始め、伊豆諸島の鳥島から350キロ南に離れた小笠原諸島の聟島にひなを移す形で行われ、これまでに島を巣立ったうちの12羽が戻ってきています。
そのうちの1羽の雄と別の野生の雌がつがいになって初めて産卵したことが去年11月、NHKが島に設置したカメラで確認され、今月中にひなが誕生する期待が高まりました。
ところが、卵を温める様子を観察し続けたところ、通常、産卵したあと数週間で戻って雄と温めを交代するはずの雌が確認されない状態が続いていることが分かりました。
山階鳥類研究所などによりますと、現地にいる研究者が15日午前に状況を確認したところ、今も雄が温める状態が続いていて、このまま雌がいない状態でひながかえっても、確実に死に至るということです。
このため環境省などでは、卵を保護し、ひなが生まれた場合には飼育する方針を決めました。
卵は、現地にいる研究者が早ければ17日にも保護して東京の動物園に持ち帰るということです。
ただ、ひなが育っても野生に返すことは難しいということで、山階鳥類研究所は、今回は新たな繁殖地作りにはつながらないとしています。
山階鳥類研究所の尾崎清明副所長は、「もし、うまくひなが育っても野生に返すことはできず、残念ながら今回は新たな繁殖地作りにはつながらないが、みすみすひなを死なせるわけにもいかず、保護することはやむをえないと判断した。島を巣立ったアホウドリが数多く帰ってきており、次の産卵に期待したい」と話しています。
新たな繁殖地作りの経緯
日本有数の活火山、伊豆諸島の鳥島におよそ80%が繁殖する「アホウドリ」。
噴火で生息地が破壊されるおそれがあるとして、国は5年前、南に350キロ離れた小笠原諸島の聟島に新たな繁殖地を作る、世界でも例を見ない移住作戦を始めました。
アホウドリは巣立ったあと、数年間を海上で過ごし、成熟すると育った島に戻って繁殖するため、その習性を利用したのです。
移住作戦から3年がたった、おととし2月。
最初の年に島を巣立った「Y01」の足輪を着けたアホウドリが初めて島に戻ってきたのが確認されました。
その後も12羽が続々と島に戻り、新たな繁殖地作りは最終段階を迎えました。
そして、去年11月、2年続けて島に戻ってきた「Y01」と別の雌がつがいになり、初めての産卵が確認され、ひなの誕生が期待されました。
しかし、通常であれば産卵のあとしばらくして戻ってきて卵の温めを交代するはずの雌の姿が見られず、「Y01」がおよそ2か月間、ほぼ飲まず食わずで温める状態が続いていたため、卵がふ化するかどうか心配されていました。
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