2012年11月26日付米Heritage財団のサイトで、Dean Cheng同財団主任研究員は、中国の「世論戦」に対抗して、米国としては中国側の主張を論駁するだけではなく、世界の人々に米国の立場を知らせるための世論工作を行うべきである、と述べています。
すなわち、中国は最近、米国に対し、戦わずして勝つ方策を研究してきた。中国共産党解放軍の「政治工作規定」(2003年策定、2010年改定)によれば、そのために、世論戦、心理戦、法律戦の3分野の戦い(「3戦」)があると記述されている。これら「3戦」は実際の軍事的対決から独立した別個の戦いと位置付けられており、三者は密接に関連しあっている。
「世論戦」は「世論・メディア戦争」と呼んでよいが、主たる手段はニュース・メディアである。報道に限ることなく、映画、テレビ番組、書籍などが対象である。「心理戦」は疑問を引き起こし、相手の指導者に対する反感を呼び起こし、相手の決定能力を破壊することである。「法律戦」はみずからの行動を法に照らして合法的であると説明し、相手の行動を違法であると思わせることである。心理戦も法律戦もその効果を高めようとすれば、いずれも世論を利用する必要がある。
世論戦の特徴は1)トップダウン方式による指令によって行われる。その内容、タイミングはともに党上層部からの指令で行われる。2)メッセージの先取りの形をとる。敵の意思を削ぐために、自分たちの傳えるべきメッセージを先取りして提示する。3)利用できる手段をすべて使う。放送局施設、インターネット・ユーザーたちを影響下に置くのもその一つである。4)世論戦は実際の敵対行動よりはるか先を行く。「兵馬の動く前に世論はすでに動いている」という形をとるのが狙いである。
このような中国からの世論工作に対し、米国は如何に対抗すべきか。それは、平時と有事の両者の場合があるが、いずれの場合にも米国は中国側の攻勢に受け身で論駁するだけではなく、世界の人たちに、米国の立場を知らしめるために攻勢に出る必要がある。それは世論外交の努力と言えよう。それは、単に相手方の人々、政策決定者へのメッセージとしてだけではなく、同盟国や友邦国に対するメッセージとしても必要なことである。
米国の世論外交の努力は、第2期オバマ政権下で拡大されなければならない。米国が取るべき具体的措置として、いくつかの点を以下に挙げる。