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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2012年6月 4日

ワイングラスの持ち方 新訂版

[2012年6月11日更新]

昨日、たまたま町会のバス旅行で河口湖に行って来たのですが、道中、甲府にさしかかるや、ワインの産地とあってガイドさんも力を入れてワイングラスの正しい持ち方を説明してくれたりもします。いわく、「みなさん、ワイングラスの正しい持ち方を知っていますか?ステムの部分を持つのが正しいんですよ。なぜだかわかりますか?ワインの入っている部分を持つと体温が伝わりおいしくなくなってしまうからです。わかりましたね、ステムですよ」と蘊蓄を傾けてくれます。

でもなあ、ソムリエのテイスティングは別として、ワイングラスは普通、ボウルの部分を持って飲むものなんだけどなあ。それに手の温度が伝わるのどうのという話も、自分の場合、赤であれ、白であれ、体温が問題になるほどグズグズと飲むことがないので、よくわからない理屈です。

[注記:安ワインはいくら待っても、温度が変わろうと味は変わりません。高級ワインの場合は、ソムリエ殿の指示にしたがって、もうちょっとすると香りが開くと言われたら、その時を待って、ぐいっと飲み干します。というのも、その時点を境にまた味が変わってしまうからです。もちろん、これは自分の流儀であり、人それぞれではあります]

しかし、これだけ多くの人がステムを持つと信じている以上、本当はそうじゃないと言ったところで蟷螂の斧。でも、百聞は一見に如かずとも言いますから、ともかく以下の「証拠写真」をご覧ください。

まずわが国の野田総理はどうでしょうか。ヒラリー・クリントン米国務長官ががっちりボウル部分を握っているのに対して、ステムの部分を握っています。典型的な日本流です。写真の出所はこちら。

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亡くなってしまいましたが、北方の偉大な指導者殿は完全な「ステム持ち」です。対照的に右側のオルブルイト米国務長官(当時)は普通にグラスを持っています。この方はチェコの外交官のお嬢様にして、ヒラリー・クリントンも卒業生に名を連ねる、あの名門女子大ウェルズリーの出身。そういうバックグラウンドを重ねあわせると、グラスを持つ時も育ちが出るんだろうなと余計なことを考えてしまいます。出所はこちら。

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次はオバマ大統領。出所はこちら。

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こちらもオバマ大統領。バン・キムン国連事務総長といっしょですが、対照的ですね。出所はこちら。

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先代のブッシュ米大統領も日本的なマナーから言えば異端の「ボウル持ち」です。イタリーのベルルスコーニ首相と並んでブラックタイで正装するような場でしっかりグラスの本体部分をつかんでいます。(ついでに言えば、わが国では真っ昼間からブラックタイを着ていたりしますが、本来、ブラックタイは夜の正装です) 出所はこちら。

Bush_and_Berlusconi_share_toast_%282008-10-13%29.jpg

下の写真はブッシュ大統領、中国の胡錦濤国家主席、そして禁酒国として知られるサウジアラビアのアブドラ国王。写真の出所はこちら。

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下の写真は、ちょっと古いものですが、当時のレーガン米大統領とエリザベス女王。お二人ともステムを持たず、普通に本体部分を持っていることを見て取れます。出所はこちら。

reagan%26elizabeth.jpg


これは同じくエリザベス女王がフランスのサルコジ大統領(当時)とグラスを片手に歓談している図。後ろ姿ではありますが、ワインの国の代表者であるサルコジ氏もこのとおり普通に、いや、全体が隠れてしまうぐらい、がっしりと本体部分に手を回しています。写真の出所はこちら。

sarkozy.jpg

別に晩餐会だからボウルを持っているというものでもなく、下の写真のとおり、普段のパーティーという場でも普通にボウルを持っているものです。(左がヘンリー・オブ・ウェールズ王子、右がケンブリッジ公ウィリアム王子とキャサリン妃)出所はこちら。

Kate+Middleton+Queen+Elizabeth+II+Accompanied+wnDl-X7l75Il.jpg


こちらは Christian Masset 駐日フランス大使。大使の右隣の方はステムを持っていますが、屋内なのに帽子を脱いでいないことにも表れているとおり、ま、民度の違いということでしょう。(以前寄せられたコメントに「仏大使館員に聞いたら」というのがありましたが、ひとくちに「仏大使館」と言っても、ENA出身のMasset 大使のような方から現業官庁の出向職員までと様々で、仏大使館員だからエチケットとプロトコールに通じているというものでもありません)出所はこちら。

FrenchAmbassador.jpg

上の写真はいずれも立って飲んでいる姿ばかりなので、中には、座って飲むときは違うんだとおっしゃる方もいるようです。そこで、内輪の会合のようではありますが、ホワイトハウスでのディナーの様子を一枚。(クリックすると大きく表示されますが、もっと拡大したい場合は、ソースのサイトに行き、写真をクリックするとさらに大きい画像を見て細部を確認することが出来ます)出所はこちら。

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おまけの1 

ジョージ・クリーニーが赤ワインの入ったグラスをしっかり握っています。出所はこちら。 

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おまけの2

あの、LADY GAGA も、ボウルの部分を持ちながら豪快に飲んでいます。ま、ステム持ちながらじゃ、不安定で、楽しめないでしょう。出所はこちら

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おまけの3

1980年代のビートルズのアルバム・ジャケットです。出所はこちら

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★ まとめに代えて

どの写真を見ても、みなさん、ステムの部分ではなく、ボウル状の本体部分をごく自然に持っています。わが国ではバスガイドから「ワインの専門家」まで、ワイングラスの正しい持ち方はステムの所を持つことだと説きますが、実は、カップ状の本体部分を自然に持つのが「普通」と言った方がよさそうです。おそらくはワインブームの折り、ソムリエたちのテイスティングを見て、見よう見まねでワイングラスはこう持つものと刷り込まれてしまい、さらに、にわかワイン通たちのせいで「ワイングラスは正しくはステムの所で持つ」という思い込みがますます広まり、とうとう定着してしまったのでしょう。


(この種の話はどういうものか思い込みの強い方からのコメントが多く、そうですかとしか答えようのないことが多いので、恐縮ですが、今回に限りコメント欄は閉じてあります。悪しからずご了承ください。)