ダミー
ダミー

←12月号へ                                      2月号へ→

 安倍外交に米政府が懸念、対中国・韓国政策が鍵

 「日本外交の再建のために日米同盟を再構築することが第1だ」──。9月の自民党総裁選で勝利して以来、安倍晋三氏が標榜する「日米同盟の再構築」方針について、実は、オバマ米政府が警戒感を抱いているという。尖閣問題で対中強硬策を指向する安倍政権下で日中関係が一層悪化した場合、「米側としては安保条約を締結する日本のため、多くの軍事的コストを掛けざるをえなくなる」(日本側外交当局)ためだ。
 たしかに2009年8月の前回衆院選で民主党政権が発足し、当時の鳩山由紀夫首相が、米軍普天間飛行場の移設をめぐる「日米合意」にはない「県外移設」を主張し、日米関係がぎくしゃくしたのは事実。そこで安倍首相としては、「日米同盟重視」の姿勢を強調して「米側に政権担当能力」をアピールしようとしているわけだ。しかし、自民党が先の政権公約で掲げたような「尖閣諸島の実効支配を強化し、島と海を断固守る」との立場では、中国との軍事的衝突にも発展しかねない。
 また米側は日韓関係について、安倍氏が選挙前に従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の見直しに意欲を示していることに神経を尖らせている。折しも北朝鮮は12月に人工衛星と称する「長距離弾道弾ミサイル」を発射し、北朝鮮に対する「日米韓」連携の重要性が増している。にもかかわらず、「慰安婦問題で日韓関係の亀裂がさらに深まれば米国の利益に反する」(同)というわけだ。
 そうした状況を想定して衆院選前、米外交当局者からは安倍政権のタカ派路線に自制を求めるメッセージが非公式に伝えられた。そのためか安倍氏は12月16日夜、衆院選での自民・公明両党の勝利で首相再登板を確実にした直後の記者会見で「日米同盟を強化し、中国との関係を改善したい」と表明。対中関係の改善にも言及したが、米側の「安倍不信」は意外と根深いとされる。

■安倍首相の最初の外遊先は?
 そこで、首相に就任した安倍氏が最初の外遊先をどの国にするのか。早々に外交・安全保障政策当局者の関心を集めた。
 日米関係は、沖縄普天間飛行場移転問題の頓挫で亀裂が生じている。日米同盟の再構築を最優先課題に掲げる安倍氏だが、歴代首相のように米国への「参勤交代」ではなく、インド、オーストラリア、インドネシア歴訪でないかとの見方が出た。安倍氏の外交アドバイザーで、安倍内閣が誕生すると官房副長官として官邸入りが噂されている谷内正太郎・元外務事務次官(現早稲田大学日米研究所教授)がそのことを安倍氏に助言しているからだ。
 同氏によると、インド、オーストラリア、インドネシアの三国はこれからの日本外交や経済を考えるうえで最重要国であり、日本にとって今難しい関係にある中国に気を使うより、人口17億人の国なるインド、3億人を超えたインドネシア、さらに日本が海洋国家として生きていくうえで重要なパートナーとなるオーストラリアに目を転じ、緊密な関係を築くことが肝要と主張する。
 安倍氏の祖父である故岸信介・元首相も実は首相就任後の最初の外遊先は東南アジア6カ国歴訪だった。その歴訪が済んでから1カ月後に訪米して、当時のアイゼンハワー大統領と会談している。
 米国一辺倒の批判をかわす意図もあったろうが、岸氏は「アジア重視」をアピールしてそれなりの成果を上げ、アイゼンハワー大統領との会談で日米新時代を謳った共同声明を発表、その後の日米安保条約改定への道筋をつけたのであった。安倍氏も尊敬する祖父の先例を知らないはずはないだろう。

■1月訪米、4月訪中か
 とはいえ、やはり訪米時期は早いほうが良い。安倍首相の外交日程は1月の訪米、4月の訪中を軸に調整されている。1月20日のオバマ大統領2期目の就任式を受けて、国務長官に指名されたケリー上院議員が承認される1月のうちに米国を訪問。前回の首相就任時は中国への訪問が先だったが、今回は習近平・総書記が国家主席に就任し外交問題を処理できるまで待つことにして、まずオバマ大統領との間で日米同盟のさらなる深化を再確認してから訪中という順番だ。
 日米関係の緊密化の障害になっているのは、沖縄の基地問題、特に普天間基地の辺野古地区への移転問題だ。この1月にも沖縄防衛施設局は辺野古沖の埋め立て申請を正式に行う構えで、それを受けて仲井真弘多・沖縄県知事も半年以内に判断を迫られることになる。
 米政府のこれまでの不満は、保守派とされた野田前首相でさえ沖縄県へ移転の説得をほとんど行わなかったことで、安倍首相がこの問題に正面から向き合うことを期待している。
 この膠着状態を打開するためには、安倍新政権による集団的自衛権の行使を可能とすることで日米安保条約を双務性に変える作業が必要だ。そうすれば、米国側もコインの裏表とされる日米地位協定の改定に応じることができよう。そうなれば、米軍駐留兵士による犯罪に日本側の法的手続きが反映され、沖縄の地域住民への説得が進む可能性がある。


 安倍政権下の中国大使は根回しのうまい自民シンパ

 野田政権下で中国大使を任ぜられた木寺昌人氏(六〇)は、実は大の自民党シンパ。同党の政権復帰とともに対中強硬論者の安倍晋三首相の下、最前線で対中外交に当たる。
 とかくプライドの高さが鼻に付く外務官僚にあって、木寺氏は腹芸が得意な稀有な存在。超肥満体の体形とは裏腹に、「腰が軽く、根回しもうまい」というのが省内の評価だ。そんな木寺氏に「芸」を仕込んだのは、氏が秘書官として仕えた故梶山静六・元官房長官。根回し下手の外務省の代表として連日雷を落とされた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題では、地元対策に汗をかかぬ同省に激怒した梶山氏に「外務省は、舞踏会に出ては蝶ネクタイでダンスを踊るのが仕事と思っているのだろう」と面罵されたことも。
 また、二〇〇八年五月に横浜市でアフリカ開発会議が開かれた際には、当時の福田康夫首相を補佐する議長代理に森喜朗・元首相を担ぎ出し、両氏の信頼を得た。塩崎恭久・元官房長官や、梶山氏が当選前から目をかけていた菅義偉氏とも親しい。〇九年九月の政権交代直後、多くの官僚が民主党になびいたが、木寺氏は自民シンパを半ば公言。迷走する鳩山内閣を「ナニモキメナイカク」と揶揄していたほどだ。
 木寺氏は天皇・皇后両陛下の欧州歴訪で通訳を務めた仏語のスペシャリストだが、中国については、中国課の首席事務官を務めただけで現地勤務の経験もない。安倍首相が四月の春季例大祭に合わせて靖国神社に参拝した時、腹芸が得意な「素人大使」の真価が早速問われる。


 “大物”勝前財務次官の狙いは日銀副総裁の座

 勝栄二郎・前財務事務次官が、インターネット・プロバイダーの「インターネット・イニシアティブ・ジャパン」に再就職した。民自公の3党合意による消費増税を実現した大物・勝氏の再就職先としてはやや小粒だが、この再就職は重要ポストへ移るまでの腰掛けとの見方が有力だ。そのポストとは「日銀副総裁だ」と財務省OBは指摘する。
 日銀の幹部ポストは3与野党の合意が前提となる。12月の衆院選で自民が単独過半数を確保したことで、国会同意人事も自民党の主導する人事案が提出されることになる。しかし、参議院は民主党が87議席、国民新党が3議席の計90議席を有しており、自民・公明の103議席と拮抗している。
 特に総選挙後の新政権にとって、経済の浮揚のためには早期の補正予算と来年度本予算の編成、追加の金融緩和は喫緊の課題。国会同意人事で角突き合わせる余裕はない。
 そうした状況を勘案し、与野党ともに関係が良好な勝氏が副総裁に推されるのではないかというのが永田町の見立てだ。安倍新首相による「アベノミクス」が注目され、政府と日銀がアコード(政策協定)を結んだ上で大胆な金融緩和が実行される可能性が高いが、この施策を強力に推し進めるのが勝氏というわけだ。勝氏は野田佳彦・前首相を財務副大臣時代から支え、総理に導いた陰の功労者。一方で自民党とも気脈を通じる。自民党が勝氏を副総裁に推せば、民主党も応じるしかない?


 自民党に全面降伏した経団連会長に財界内の不満

 総選挙中に繰り広げられた安倍晋三・自民党総裁と米倉弘昌・経団連会長の「舌戦」が、財界内に波紋を広げている。最終的には電話で詫びた米倉会長だが、これに経済界首脳らが本音では反発している。
 バトルの第1ラウンドが金融政策。大胆な金融緩和を求めた安倍総裁を米倉会長が「無鉄砲」と批判すると、安倍総裁は「米倉さんはもっと勉強してほしい」。で、米国の大学で経済士の学位を持つ米倉会長の怒りは頂点に。消費税に慎重な安倍総裁を「自民党総裁としてふさわしくない」と切り捨てたのが第2ラウンド。ただ、自民党の圧勝が伝わり、政権奪取が確実になった12月12日に米倉会長は態度を一変。安倍総裁に電話をかけ、「誤解された報道でご迷惑をかけて申し訳ない。安倍総裁の経済政策を全面的に支援する」と全面降伏。一応の収束を見た。
 しかし、「財界総理たる者が1度口にした発言を安易に覆すものではない」と、身内の経団連副会長から非難が上がっているほか、「全面支援を約束してしまえば、過度な金融緩和を容認することになる。別の経済政策に関しても、今後、経済界として政府に意見しにくくなる」と、ほかの経済団体幹部は危惧する。
 米倉会長の屈服の背景には経団連の地盤沈下がある。政権与党と事を構えれば、民主党政権時の「経団連外し」の二の舞との危機感が強く、プライドより自民党にすり寄ることを選んだ。ある財界長老は、「かつては財界総理が首相を叱ることはあったが、謝罪は聞いたことがない。土光(敏夫)会長時代にはあり得ない話。経団連会長も軽くなったものだ」と皮肉る。政治家だけでなく財界人の質的低下も進行中だ。


 北朝鮮の発射延期工作は米軍のレーザー攻撃警戒

 北朝鮮が12月12日、事実上の長距離弾道ミサイルの発射に際して偽装工作をしたことをめぐり、様々な観測が流れている。
「技術的欠陥」を理由に発射期間を「延長する」と発表したのは10日。日本の新聞各紙は一斉に「北、発射延期を示唆」と報じた。そして、韓国政府が11日に撮影した衛星写真からミサイルが発射台から取り外されたことが確認され、「1週間以内の発射はない」との情報が拡散した。
 だが、北朝鮮の朝鮮中央テレビは11日夜、通常は午後5時から始まる放送を12日は正午開始と報道していたことが確認されている。1日でミサイルの再配置や修理は不可能なため、期間延長発表や発射台からの撤去は明らかな偽装工作だった。その目的について、軍関係者は「米国のレーザー攻撃を警戒したものではないか」とみている。4月の打ち上げ失敗もレーザー攻撃の可能性があるという。
 今や陸海空、宇宙に加えて「サイバー空間」が第5の戦場となるため、米、中、露、イスラエル、イランなどが新兵器開発に躍起だ。鉄道、飛行機、通信などあらゆるインフラや軍事施設がコンピュータシステムで管理されているため、それを破壊すれば原爆以上の脅威となる。米国は2011年、「サイバー攻撃は宣戦布告と見なす」と表明したが、10月11日、パネッタ米国防長官はサイバー攻撃に関する講演を行い、攻撃に対して通常兵器と組み合わせた「最も破壊的なシナリオ」で応じると警告するとともに「先制攻撃」の可能性を示唆した。対象国は中国、ロシア、イラン、北朝鮮だとみられる。
 10年2月、米国防省は、飛行中の航空機から強力なレーザー光線を発射して弾道ミサイルを破壊するABL(Airborne Laser)実験に成功したと発表。この時は、ボーイング747を改造して機首に装着したレーザー砲から発射したが、その後の改造で小型化に成功したとみられている。一般にはミサイル迎撃は、イージス艦装備の「SM3ミサイル」と地上のパトリオット「PAC3」の2段構えといわれているが、最も撃墜確率が高いのが発射間際のレーザー攻撃だ。速度が遅い発射時に大量の赤外線を放射するため捕捉が容易、ブースターの分離前で標的が大きいなどの理由からだ。ただ、小型化に成功しても、高出力、ミサイルの正確な位置計算などのために多くの機材搭載が必要で、さらに大型機に搭載すれば、離着陸のための滑走路が必要になる。米国が事故多発のヘリ式の大型輸送機「オスプレイ」にこだわるのも、レーザー攻撃のためではないかともみられている。
 また、米国空軍研究所はボーイングやミサイルメーカーのレイセオンなどと「CHAMP」(マイクロ波ミサイル)の研究をしてきたが、10月16日、実験に成功したと発表している。このマイクロ波攻撃で敵の電子関連機器はダウンするため、敵の攻撃力を封じ、その後、部隊や戦闘機を派遣する。実験成功で、実戦使用の日は近いだろう。


 自民党返り咲きで動き出す石破元防衛相の防衛省改革

 衆院選挙で自民党が大勝し、政権に返り咲いたことで防衛省が戦々恐々としている。憲法改正が必要な「国防軍」創設の話ではない。石破茂・自民党幹事長が防衛相当時に打ち出した防衛省改革の実施を間違いなく迫られるからだ。
 防衛省改革は、イージス護衛艦の情報漏洩事件や守屋武昌・事務次官による汚職事件など不祥事が相次いだことを受け、自民党政権当時の2008年、首相官邸に置かれた防衛省改革会議が原案をまとめた。
 改革の柱は、予算編成のやり方を変えること。防衛費は陸海空自衛隊で「1.5対1対1」に配分され、それぞれが使い途を決めている。この予算編成権を背広組の内局に移し、内局が武器類の購入を決める。陸海空の配分比率は無視され、まとめ買いの一方で調達ゼロという武器も出てくる。防衛省幹部はこう言う。「メーカーへの予算配分も決まっているので天下り枠の確保になった。だから予算編成権を内局へ移すことには制服組の反対が強かったのです」
 改革のもう1つの柱は、背広組と制服組の融合だ。内局の運用企画局を廃止し、背広組を統合幕僚監部に取り込んで運用を一元化する。これには内局が「制服組と内局が混合したら、誰が自衛隊を管理するのか」と反発した。
 制服組、背広組とも反対だったため、民主党政権の誕生によって、これ幸いとばかり防衛省全体で棚上げした。怒ったのは、改革案の旗振り役だった石破氏だ。大臣官房の担当者に「誰が犯人だ」と問い詰めるなど、不快感を隠さなかった。追い風が吹いていた衆院解散前には「自民党政権になったら必ずやってもらう」と防衛省改革の実施を宣言した。
 前出の幹部は「シビリアンコントロールの建前から政治の決定には従わざるをえない。しかし、石破氏が防衛相当時に哨戒機の開発や自衛隊の海外派遣で制服組と対立したことが改革の原点。いわば防衛省への嫌がらせで決めたことを政治主導の大義名分で正当化されてはかなわない」とぼやいている。


 新日鉄住金の株価低迷招く後ろ向き広報戦略

 新日鉄住金の株価が低迷中だ。2011年秋に200円を割り、12年10月に新日鉄と住友金属が統合、新日鉄住金が誕生してもご祝儀相場もなく、100円台半ば〜後半という状態。
 旧新日鉄の広報戦略はとかく後ろ向きだ。会見で宗岡正二社長(現新日鉄住金会長兼CEO)の口が重いのも、株価低迷の一因だろう。
 日本最古の製鉄所、釜石製鉄所が東日本大震災で大きな被害を受けたが、この春には先頭に立って復興に取り組む所長の取材にOKが出て、多くのメディアにその姿が掲載された。ところが取材ツアーを募る際、必ず記事を掲載するなどの条件をつけたことなどで一部の記者が反発。夏には釜石取材ツアー第2弾を企画したが、同じネタでは記事は書けない。当然、不人気だった。
 そんな同社の態度が変わるのが韓国鉄鋼大手ポスコとの訴訟沙汰だ。ポスコ社員が中国の製鉄会社に特殊鋼板の技術を漏らしたとされる韓国の裁判で、ポスコの社員が中国に教えた技術は、ポスコではなく新日鉄の技術であり、韓国では犯罪にならないと証言したのが発端だ。
 新日鉄の内部調査の結果、ポスコに技術を洩らしたOBらが判明、11月から裁判が始まったが、新日鉄がそれまでの姿勢を180度変え、記事を書いてほしいとメディアに売り込む始末。普段取材に応じないのに、都合のいいことは書いてほしいというのは身勝手だという声もある。
 本来なら、業績が厳しくともトップが積極的に取材に応じ、中長期の展望を明確にするなど情報開示すべきだ。今もって「株価は経営者には無関係」「鉄は国家なり」では、株価の100円割れもありうる。08年3月期に1株11円だった配当が今や2.5円と8割も減らされた株主にとっては泣くに泣けない日々だろう。


 「政権復帰」自民が狙う霞が関への”報復人事”

 年末から年明けの霞が関は、本来なら補正予算・来年度本予算の編成の只中。中枢幹部クラスの担当替えや異動は考えにくい季節だ。だが、この冬は雰囲気がちょっと違う。
「われわれが留守にしていた3年間で、キャリア官僚の中に“民主シンパ”が増えたようだ。そういう役人には、ゆっくりと1度、その胸中を聞いて、どうすればお国の役に立つか、彼らの処遇も含めて考えたい」
 自民党幹部の1人が悠然とこう語る。野党時代、官僚が説明に訪れる回数が激減、説明役のポストも低下したことへの「報復」といっていい。
「本来なら官庁の幹部クラスは全員入れ替わってもいい。米国では、民主、共和の政権交代では幹部クラスが総入れ替えになる。『回転ドア』という言葉もある」(永田町筋)
 だが身分が保障されている霞が関官僚の解雇は簡単ではない。民主政権下の約3年間では、「閣僚や労組の示唆も含めた、自民シンパ官僚への左遷や担当替え、出向」(同)が頻発。同様の現象が今回も起きそうだ。
「自民党が問題視しているのは、外務、経産、防衛、国交、農水、文科あたりの民主シンパ官僚だ。特に外務は、次官や主要国の大使、局長クラスでも待機や左遷があり得る。安倍(晋三首相)は外務、防衛、経産を重視しているからね。民主寄りの脱原発で動いた経産官僚は出向組も含めて同様だよ。財務とはしばらくはTお見合いUだろう。補正予算の政府原案を見てだな」(事情通)
 首の周りが寒い日々だろう。


 上場延期で見えてきた西武HD社長の危うい立場

 後藤高志社長が2012年6月の株主総会でみずほ証券などを主幹事に選び、「早期上場を果たしたい」としていた西武鉄道や、プリンスホテルを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)。東京証券取引所に12年中の上場を目指していたが、とうとう上場申請を東証に提出できなかった。
 上場延期になったのは「筆頭株主のサーベラスとの思惑の違いからだ」(西武HD関係者)とされる。後藤氏は早期上場に意欲的だったが、高値で売り抜けたいサーベラス側との対立が先鋭化。サーベラスは「ここまで持ち続けているからには、それなりの儲けも確保したい」(サーベラス関係者)との思いがある。もう一段のリストラなどで「業績を引き上げ、株価の回復を待って上場したい」(同)というのだ。
 サーベラスとの見解の食い違いにしびれを切らした後藤社長は、10月にサーベラスに対し上場の際の障害になる「資本提携」の解除を一方的に通告。一方のサーベラスも「後藤氏の行動は不当」として、「場合によっては後藤氏の解任も検討しているようだ」(大手投資銀幹部)。
 しかし、後藤氏をめぐっては「所詮、銀行マンで最大の経営課題であるプリンスホテルの経営立て直しは、外資系ホテルや格安のビジネスホテルの台頭によって思うように伸びていない」(大手証券アナリスト)との指摘も多い。創業家の堤家も「経営権奪取に向けて、あの手この手で虎視眈々と策を練っている」(大手投資現幹部)とされ、またもや西武グループをめぐって、きな臭い動きが出てくる可能性もある。


 ドコモよ、お前もか! 製紙業界の恨み節

 NTTドコモは2月からクレジットカード払いの顧客を対象に月々の利用料金の郵送を原則廃止し、「eリビング」と呼ぶインターネットのウェブや電子メールでのサービスに移行する。要は「ご自宅のポストに請求書は送りません。支払い額や利用明細が知りたければ、お客様が各自でパソコンやスマートフォンで暗証番号の入力などのややこしい作業をして調べてください」ということ。
 今回、利用者に不便を強いてペーパーレスに踏み切る最大の理由は、コストの削減だ。競争相手のKDDIとソフトバンクはすでに何年も前から料金案内の郵送を希望者向けの有料サービスにしており、鷹揚なドコモが周回遅れでリストラを始めたともいえる。
 もちろん利用者には表立って経費節減とはいえないので、「環境負荷の低減の取り組みの一環」と説明する。年間約2,880トンもの紙資源の節減につながり、ひいてはCO2削減効果も期待できるとしている。
「また、われわれが悪者なのか」と嘆息するのは製紙業界だ。人口減や企業のコストカットの影響で、折り込みチラシやコピー用紙など洋紙の需要は縮小が続き、製紙各社の業績の低落に歯止めがかからない。
 あらゆる分野で進むペーパーレス化。米アップルのiPodのような一部の情報端末には最初から紙の説明書が付いていない。請求書関係ではクレジット会社もウェブ閲覧の動きを加速している。製紙会社にとって、電子書籍の普及の遅れと、戸別配送にこだわる新聞(とりわけ「読売新聞」)だけが目下の安心材料だが、これもいつまでもつのだろうか。


 金融ビジネス参入でヤフーがSBIに急接近

 ヤフーの動きが活発になってきた。同社はローソンとの宅配ビジネスのほか、TSUTAYAを展開するCCCとのポイント提携、グリーやDeNAなどソーシャルゲームを手掛ける企業との提携などを矢継ぎ早に展開してきたが、ここへきて、サーバーエージェントのFX事業を210億円で買収すると発表した。
 なぜ今、ヤフーが金融ビジネスなのか。インターネット専業銀行のジャパンネット銀行には、三井住友銀行らと資本参加しているが、ライバルネット銀行に比べて存在感は薄い。普通、金融事業への参入ならば、銀行か証券から入ってよさそうなものだが、ヤフーはFXという亜流分野から入った。
 しかし、業界関係者は今回の買収をまだ「入り口」だとみている。ほかの金融事業も揃えていかないと変則だからだ。そこで噂に上っているのがSBIホールディングスである。同社の前身はいわばソフトバンクファイナンスだが、そのソフトバンクはヤフーの大株主である。
 SBIホールディングスは現在、業績が低迷している。SBI債という1年物の短期社債を頻繁に発行しては資金の借り換えを繰り返している。もちろん、ネット証券ではトップだけに同業他社はいわずもがなだが、SBIホールディングスの台所事情も厳しいのは事実だ。FX事業のような買収でなく、資本参加という形でなら、ヤフーがSBIホールディングスとタッグを組むこともあり得ない話ではない。
 逆にいえば、ヤフーもポータルとオークションだけでは事業展開に限界があり、ほかの事業を早急に伸ばしていかないといけない事情があるといっていい。


 ビール成功でPB拡大宣言、セブン‐イレブンの思惑

 セブン&アイ・ホールディングスが、セブンプレミアムなどのプライベート・ブランド(以下PB)で大攻勢をかける。12月12日に行ったその発表会では、同社の村田紀敏社長ではなく、80歳になった鈴木敏文会長が出席した。これは相当な意志をもってPBの拡大に臨むとみるべきだろう。鈴木氏は3年後の2016年2月期にPBで売り上げ1兆円を目指すと述べたが、これは最低ラインのはずだ。
 この時期のPB拡大宣言は、ここ半年余りの間にビールメーカー大手4社すべてとPB商品を出せたことが大きい。特にサッポロビールと組んだ「100%MALT」は通年商品なうえ、麦芽100%という基幹ジャンルで、セブン&アイは自信を深めたのだろう。鈴木氏も会見で、「ほかのコンビニチェーンよりも平均日販が10数万円も多いのは、店舗の立地や販売技術のみならず、商品開発力に帰するところが大きい」と胸を張っていた。
 さらに、2段階で実施が予定されている消費税アップも、セブン&アイに追い風で強気にさせているという指摘は多い。消費税アップ分を吸収して価格据え置きというのは、個々のメーカーの対応では難しい。そこで、セブン&アイと共同開発したPBならば安く価格が設定できるし、セブン‐イレブンでの販売が中心となれば値崩れも起きにくい。
 前回の1997年の消費税アップの時は消費税5%の還元セールが主力だったが、今回はPBがメーカーブランドを駆逐していく形になっていく可能性が高いといっていい。


 日産のアキレス腱は意外にも欧州ルノー

 尖閣諸島の領有権をめぐる中国との対立で稼ぎ頭の中国事業が失速し、技術の日産の復活を象徴するために多額の投資を重ね開発を進めてきた電気自動車(EV)の販売不振など、内憂外患の様相を見せてきた日産自動車。その日産にさらに経営を揺さぶる案件が出てきた。
 それは欧州の財務危機による親会社、仏ルノーの不振だ。同じフランスに拠点を置くプジョーシトロエングループ(PSA)は経営不振から欧州に置く数カ所の工場などの閉鎖を検討しているが、仏政府から「雇用の確保を優先すべき」との“横槍”が入り、「拠点の整理など出血を止めないと、この苦境から抜け出せない」(大手証券会社幹部)状態だ。
「ルノーは日産と部品の共同購買や共通した部品を多数使っているため、PSAなどより傷は浅い」(日産幹部)とされるが、「ドイツ勢と違い技術的に優れたものを持っているわけでもなく、成長が続く中国やアジアなどに拠点がないため、収益的には厳しい」(大手証券関係者)。
 厄介なのが仏政府の経営への介入だ。「ルノーは筆頭株主が仏政府で15%の株式を所有している。PSAの支援を要請されるのではないか」(ルノー関係者)との不安が首をもたげる。自社の経営の立て直しだけでも精一杯の上にPSAの経営まで背負わされたら、日産を含めて共倒れになる恐れは大きい。
 しかし、弱者救済を掲げる左派のオランド大統領にとっても、破綻によって大量の雇用喪失につながるPSAの経営問題は政権を揺るがす大問題だ。今後、ルノー日産連合を率いるカルロス・ゴーン氏はどう対応するのか、注目される。


 漢検70億円資産の分捕りを狙う元理事

 京都・清水寺で12月12日に発表された「今年の漢字」は、「金」だった。主催は財団法人日本漢字能力検定協会(漢検)。2009年の年初から「儲け過ぎ批判」が起き、創業者の大久保昇・元理事長、浩・元副理事長父子が、私腹を肥やしたという背任容疑で逮捕起訴され、信用が失墜した財団である。盛況な「今年の漢字」に象徴されるように、事件はすでに過去のものとなり、激減した受験者数も戻りつつある。
 だが、平穏に見えて、漢検内部では今も激しい権力闘争が展開され、そこに大久保父子も参戦、「13年にはもう1度、ひと波乱がある」と漢検関係者は断言する。
「京都地裁の1審判決で大久保父子は懲役2年半の実刑判決を受け、13年2月に控訴審が始まる。1審では黙っていたのだが、裁判の過程で漢検の実務派が強制的に和解を持ちかけ、その際、恫喝めいた言葉を吐くとともに、リベートを要求したとか。恐喝未遂や背任疑惑があるということで、浩・元副理事長は刑事告訴の準備をしている。漢検事件が再燃しそうだ」
 たしかに漢検事件は不可解なことが多過ぎた。大久保昇→鬼追明夫・元日弁連会長→池坊保子・前代議士→高坂節三氏と、理事長は変遷する。中でも池坊氏はクーデターで解任されている。水面下で何が起きているのか。関係者は続けて言う。
「事務局長などの実務派が、理事の大物を味方につけて協会運営を好き勝手に行っており、高坂理事長は操られている。浩・元副理事長が握っているのはその証拠だ」
 蓄えられた資産は約70億円。どうやらその分捕り合戦が始まったようだ。


 反社勢力排除に動き出す証券界の懸念は「半グレ」

 日本証券業協会は、会員証券会社からの照会に対し、警察庁のデータベース(暴力団構成員3万2,700人、準構成員3万7,600人、2011年末現在)を活用して、証券口座開設を申し込んできた人物が暴力団関係者かどうかを回答するシステムの稼働を開始する。稼働前に暴力団関係者が駆け込みで口座を開設してくる可能性もあるため、稼働時期を公表していないが、この1月からスタートさせる予定だ。
 システムは日本証券業協会と警察庁の間を専用回線で結び、証券会社の照会者は生体認証登録がされた者に限定する対策も講じられている。
 一方、同時に警察庁と反社会的勢力排除のデータベースの活用が見込まれた銀行界は利用を当面、見送る。自主規制機関である日本証券業協会と違い、窓口となる全国銀行協会が親睦団体で、情報を不正利用した銀行に制裁が課せないことが理由となっているが、実際は、警察庁の予算面の制約から証券界と銀行界の照会を同時に受けるにはインフラ整備が追い付かないようだ。そのため、反社が介入しやすい証券界をまず優先して、銀行界はその運営の状況を見て判断するということのようだ。
 しかし、証券界の反社会的勢力排除が効力を発揮するかどうかは未知数だ。それというのも、現在、社会問題化しているのは暴力団だけでなく、振り込め詐欺の中心になっている「半グレ」と呼ばれる不良集団で、そのデータベースは警察庁でも整備されていない。特に金融界が欲しいのはこの部分の情報である。
「半グレ」は、「暴力団のような明確な組織を持たず、出入りも頻繁で構成員の把握は難しい」(警察庁関係者)のが特徴で、「グループのメンバーに金融関係者が加わっているケースもあり、金融犯罪の温床で、手口も巧妙」(同)と指摘される。
 現在、金融機関で普通預金や当座預金の口座開設や貸金庫を契約する時には、顧客は自身が反社会的勢力に該当しない旨を申込書等で表明・確約することが義務付けられている。かつ、その対象は「暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準じる者」へと広がっている。しかし、そこには「半グレ」の表記はない。「半グレ」に網をかける法整備と、データベースの整備が急務となっている。


 生活保護制度改正問題は基準の1割カットが眼目

 2012年にお笑い芸人の家族による生活保護受給問題で火がついた生活保護制度の改正論議が、新政権のもとで活発化しそうだ。
 現在、利用者が211万人を突破し、厳しい財政状況下で総額3兆4,000億円を突破した生活保護費について、その削減自体は理解されたとしても、生存権を否定しかねない削減が行われることに対し、強い懸念が広がっている。
 野田政権下で設けられた社会保障制度改革国民会議の審議対象だった「年金」「医療」「介護」「子育て」の4本柱だったが、財政再建を旗印にした削減案の標的は、社会保障審議会での論議に委ねられる生活保護制度の改正問題のみとなる可能性が高まってきたからだ。
 審議会では、「手当より仕事を」基本にする自民党が打ち出している「生活保護基準の1割カット」が間違いなく大きな眼目になるはずだ。このほかにも自民党は「医療費一部負担による医療扶助の制限」や「フードスタンプなどによる現物給付化」「稼働年齢層に対する有期制の導入」なども提起しており、反発を呼んでいる。
 生活保護基準の1割カットは、所得階層の「第1十分位」(最底辺の10%)に合わせる形で行われようとしている。だが、これでは、リーマン・ショック以降の格差拡大の中で零落した貧困家庭に基準を合わせることになる。本来、一刻も早く生活実態を引き上げなければならない階層だ。そもそも生活扶助に当てられる生活保護費は、第1類費(食費、被服費等)と第2類費(光熱水費、家具家事用品費)の合算であり、食費は、年齢別の栄養所要量を参考に計算されている。これを1割削減することの重大性は火を見るよりも明らかだろう。すでに、生活保護の受給を拒否されたり、打ち切られたりして餓死する例が生まれているのに加えて、1割削減が進められれば、生活保護を受給しながら栄養不足に陥る例が出かねない。これでは憲法が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」とはいえまい。
 また、「現物給付化」は利用者に対する差別を生み、国営の貧困ビジネスをはびこらせるという批判、あるいはアメリカで生じているようなフードスタンプの流通が詐欺などの犯罪の温床になるとの指摘もある。
 いずれにせよ、保護費総額から何をどこまで削減できるのか、慎重な上にも慎重な議論が望まれる。社会保障制度審議会生活保護基準部会は、年明け早々にも具体的な議論を始める模様だ。


 NHKがネットラジオ参戦、地方ラジオ番組を全国配信

 NHKが、地方局のラジオ番組を、ネットラジオで全国に配信する計画を練っている。ネットラジオは、民放局がひと足先にスタートさせ順調に視聴者を増やしているだけに、NHKの新方針は「民業圧迫」と反発を招くのは必至だ。
 NHKのネットラジオは、「らじる★らじる」の愛称で2011年9月に始まり、東京発のラジオ第1・ラジオ第2・FMの3放送を全国に向けて発信している。
 今回の新方針は、仙台・名古屋・大阪の3放送局が地域ごとに放送している番組を、新たにネットラジオに乗せて全国に提供しようというもので、13年春の実施を予定。12月初めに総務大臣に提出した認可申請が認められれば、近畿広域圏でしか流れていなかったNHK大阪のラジオ番組を、北海道でも九州でも楽しめるようになる。
 一方、民放各局が共同運用しているネットラジオ「radiko」は、10年春に東京・大阪地区で試験的にスタート。同年12月から本格運用を開始し、徐々にサービスエリアを広げ、全国の民放ラジオ100局のうち6割以上が参加する一大ラジオサイトに成長した。
 ただ、番組の配信エリアは、ラジオと同様に県域免許制度に基づく都道府県や東名阪ブロック内に限られ、別の放送エリアの民放局の番組を聞くことはできない。
 そこに、NHKが難視聴対策を名目に地方局の番組まで全国展開しようというのだから、民放ラジオ局はたまったものではない。NHKの「拡大主義」がまたも頭をもたげた格好だが、民放局にとっては死活問題だけに看過するわけにはいかず、一波乱起きそうな雲行きだ。


 角川がグーグルに交渉勝ち、「電子図書館」の対象外に

 グーグルが世界規模で進めている図書館の蔵書を電子化し、ネットで検索・閲覧できるようにする「電子図書館・グーグルブックス」。グーグルが著作権の許諾を得ずに事業を進めようとしたため、構想が明らかになった当初から、米国の出版社団体や作家団体から著作権侵害だとして反発を受けていた。
 日本でも強い反発が渦巻く中、角川グループホールディングスは12月中旬、自社刊行物約3万点を「検索対象外」とすることでグーグルと合意した。1出版社が世界のグーグルを譲歩させたわけで、暗い話題ばかりの出版界で久々の快挙となった。
 角川グループは、グーグルと個別交渉を重ね、最終的に「すでに電子化したデータは削除」「新刊は無断で電子化しない」など、自らの主張を全面的に飲ませる形で決着した。この結果に、角川グループは「日本の出版文化を守れた」と胸を張り、出版界も賛辞を送る。
 もっとも、その背景には、グーグルが今秋から日本国内で始めた「電子書店」との兼ね合いがある。
 実は、角川グループは、自社の作品をグーグルに提供している日本では数少ない大手出版社の1つ。どうやら、電子書籍の市場開拓を急ぐグーグルが、「電子書店」への大量の作品供給を角川側から受けるのと引き換えに、「グーグルブックス」で1歩退いたのが真相のようだ。
 角川グループの「ハチの一刺し」が他の出版社に波及するかどうかはまだ不透明だが、出版界は電子書籍時代を生き抜くための決断を迫られている。


 医師にも知られぬ難病ミトコンドリア病とは?

 ミトコンドリア病という病気をご存じだろうか。細胞内にあるミトコンドリアの遺伝子に異常が生じて起こる病気で、あらゆる臓器に関連するため症状は様々。医師の間でもあまり知られていないため、正しい診断がされない「隠れ患者」も多く、治療の機会を逃すことも多い。
 この病気が知られるようになったのは最近のことだ。以前は医学教育でも教えられず、中高年以上の医師は病気の存在さえ知らない者が多い。しかし、2009年には厚労省から「特定疾患」に指定され、医療費の1部が助成されている。現在、945人が患者として認定されている(11年度厚労省統計)が、実際の患者数はその何倍にものぼると推定されている。
 症状が特に現れやすいのは、脳や脊髄などの中枢神経、消化管、筋肉、内分泌器官など、エネルギーの消費が激しい器官や組織で、脳卒中、心筋症、腎糸球体硬化症など、重大な症状を引き起こすこともある。若年性脳卒中患者の80%程度は、ミトコンドリア病が原因とされる。そのほかにも、低身長、眼瞼(がんけん)下垂、精神症状、難聴、不整脈、筋力低下などでもこの病気の場合がある。
 専門医によると、筋肉や中枢神経、心臓など複数の臓器に同時に異常が現れた場合には、早めに専門医を受診する必要があるという。急激に症状が現れる場合もあれば、自然に治る場合もある。特に、身長が低くて複数の症状が出ている場合にはその確率が高くなるという。若くして脳卒中になった人も同様だ。
 なお、この病気に詳しい医師がいる医療機関は、国立精神・神経医療研究センター神経研究所など一部に限られている。今後、より多くの医師や医療機関にこの病気を認知させる取り組みが求められている。また、病気については「ミトコンドリア病ハンドブック」(難病医学研究財団の難病情報センターホームページ)に詳しい。


 次期米国駐日大使はマッカーサー級の大物

 1月20日の第2次オバマ政権発足とともに、ルース米国駐日大使が交代しそうだ。外交筋によれば、次期大使の本命は、ジョセフ・ナイ・ハーバード大ケネディスクール教授、対抗はアーミテージ元国務副長官という知日派の大物という。
 2人はともに、米国切っての知日派で日米同盟強化論者だ。過去3回、日米関係立て直しのための「ナイ・アーミテージ報告」を超党派で発表。今年夏に発行した3回目の報告書は、「日本は一流国であろうとする意欲はあるのか」と叱咤し、経済力、防衛力の再整備や、国際的プレゼンスの向上を求めた。
「米政府は民主党政権にうんざりしていて、現状では日本は二流国家に転落し、米国にとっても好ましくないと考えてきた。ナイ氏やアーミテージ氏を駐日大使に任命し、日本を一等国に踏みとどまらせるべく指示を飛ばしそうだ」(日米関係筋)
 次期駐日大使候補には、超大物のパウエル元国務長官の名も挙がっているが、「夫人が海外勤務を望んでおらず、難しいようです」(同)。
 3人以外の可能性もあるが、大物の起用は間違いなく、新大使は日本に要求を突きつける「第2のマッカーサー」になりかねない。


 ミサイル発射で崩れた金正恩氏への淡い期待

 北朝鮮が12月12日、4月に1度は失敗した長距離弾道ミサイルの発射に踏み切った。米国が「何らかの物体が軌道に投入された模様」との見解を示したように、今回は成功したとみるのが妥当だ。
 日米韓など各国は、北朝鮮のミサイル関連技術の進歩に加え、「核・ミサイル開発を通じて国際社会での存在感を向上させようという北朝鮮の本質は、金正恩体制でも変わらない」(朝鮮半島情勢専門家)事実を改めて確認した。日本をはじめ関係各国の政府筋からは、金正恩・第1書記への代替わりでよい方向への変化を期待したいとの淡い思いもあったが、脆くも崩れ去った。
 その中で特に期待を集めたのは、正恩氏の指示で結成された「牡丹峰楽団」の7月の公演の様子。ディズニーに似たキャラクターが登場し、映画「ロッキー」のテーマ曲が流れるなど、かつての北朝鮮では考えられない光景が世界を驚かせた。「欧米や日本に、北朝鮮も新しい時代を迎えて大胆に変わるという姿勢を示した」(米国の朝鮮半島ウオッチャー)との評価が一部で台頭した。
 対日関係でも、現在の北朝鮮で死んだ日本人の遺族が墓参で訪朝するなど、関係改善の足掛かりとなる動きが起き始めていたが、ミサイル発射で前向きな空気は霧散した。
 韓国の北朝鮮研究者は、「ディズニーもどき」まで駆り出すような正恩氏のスタイルに長老層や軍が批判的で、「第1書記は路線修正を余儀なくされた」と分析する。今回の成功を受けて、正恩氏は「今後もミサイル発射を続けなければならない」と指示し、韓国政府は北朝鮮が新たな核実験を行う可能性があると指摘する。北朝鮮が「危険な本質」をむき出しにするのか、あるいは踏みとどまるのか、当面は目が離せない。


 ロンドン市長の挑発で英仏関係さらに悪化

 英保守党で次期党首の最有力候補と目されているロンドンのボリス・ジョンソン市長が、フランス政府と世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルとの係争に口先介入、ただでさえぎくしゃくしている両国の関係がさらに悪化している。
 きっかけは、モントブール仏産業再生相が「フランスには、もはやミタルはいらない」と発言、さらに閉鎖が検討されている仏北部、フロランジュの高炉の国有化を示唆したことだ。同相は、インドのミタルが仏鉄鋼大手アルセロールを買収した際の雇用維持の約束を守らず、600人以上の解雇を計画していることへの報復と主張した。
 これに対し、ミタルグループのトップ、インド出身のラクシュミー・ミタル氏の一族も「ひどいショックを受けた」とコメント。さらに、これに呼応する形で、ニューデリーを訪れていたジョンソン・ロンドン市長はスピーチの席で、「フランスは労働階級の革命家のように振る舞っている」とした上で、「パリで迫害され、オランド大統領の政権で死刑囚の護送車に乗せられるようなことにならないように」と述べた。
 2012年5月成立の仏社会党のオランド政権は、企業の税制優遇措置の廃止、最低賃金の引き上げなどの政策を実施しており、産業界との軋轢は高まっている。今回のミタルと同様、人員削減を打ち出している自動車大手、プジョー・シトロエングループへの対応にも追われている。また、富裕層への課税強化(最高税率75%)で仏映画俳優、ジェラール・デュパルデュー氏がベルギーへ住所を移すなど、著名人、企業家の国外脱出も続いている。


 「FTドイチェランド」廃刊、ドイツで新聞の破綻、続出

 2012年12月7日、ドイツで第1面が全面黒塗りの新聞が発行された。「フィナンシャル・タイムズ・ドイチェランド」紙(FTD)。英国の高級経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)の姉妹紙だ。2000年に創刊。欧州が債務危機に見舞われる中、鋭い切り口で読者に経済情報を提供してきたが、財政難でこの日をもって廃刊となった。
 ドイツはかつて「プリントメディアの王国」といわれた。インターネットが世界を席巻し、「ニュースは無料」との意識が各国で高まっても、ドイツでは今も約330の新聞が発行を続けている。
 ところが、そのドイツでも近年は新聞経営が苦しくなりつつある。総発行部数は、01年の2,370万部から12年には1,840万部に激減。広告市場に占める新聞の割合は、2000年の29%から11年は20%にまで落ち込み、12年1〜10月のドイツの新聞の広告収入は前年同期比6%減となった。
 こうした事態を受け、12年後半から大手メディアの破綻が相次ぎ、米AP通信のドイツ部門が2年前に設立したばかりの通信社DAPDが10月に破綻。11月には「ドイツの10大新聞」の1つ、「フランクフルター・ルントシャウ」紙も破綻した。
 FTDはクオリティー紙として高い評価を得ながら、創刊後は1度も黒字を計上できなかった。そして12月7日付の真っ黒な第1面の中ほどには、白抜きで「ついに黒」のひと言が躍った。赤字体質から抜け出せなかった同紙で、編集担当者が知恵を絞った最高の「ブラック・ジョーク」だった。


 世界中でささやかれる「金本位制度」復活

 世界一の投機家=ジョージ・ソロスが大量の金買いの動きを始めたのが昨春。合わせるように金本位復帰論が世界の経済論壇、投資サークル、通貨ヘッジ・ファンドの世界で語られている。欧米のみならず中東からインド、中国にかけて、目端の利く投資アドバイザーは「10年以内に世界通貨体制の基軸から米ドルとユーロが降りて、金、プラチナ通貨が主流となり、金本位制度が復活する」と説いている。当初はささやき程度の語られ方だったが、今や金ショップは長い列。欧米通貨が、中国やインド、ブラジルなど新興工業国の外貨準備から徐々に外されている。
 ところが日本では、金本位制復帰論など「荒唐無稽」「時代錯誤」「バカも休み休み言え」と受け取られている。尖閣諸島を中国軍が攻撃しても米国が守ってくれると考えるのは一種、信仰に近い平和ボケであるように、ペーパーマネーによる国際通貨体制の崩壊というシナリオに日本は何の備えもしていない。
 世界経済論壇でも、かのロバート・ゼーリック前世銀総裁が「金本位復帰は選択肢の1つ」と明言している。となると、列強は密かに金本位制度への復帰を画策しているのではないのか。市場では金とリンクする新ドル紙幣ならび新国債を発行し、旧来のドル札、米国債は「徳政令」でチャラとするシナリオが秘かに検討されているとまでささやかれる。さて、誰が賢者になれるのか。


 福建省水門に完成していた、“尖閣攻撃向け”空軍基地

 カナダの雑誌「漢和防務評論」(軍事専門誌)は最新号で、福建省水門に中国空軍の新しい基地が完成していると伝える。すでに滑走路と給油基地が稼働し、格納庫、弾薬庫、掩体、リフトなどが整備され、ミサイルを装備した「殲=10型」ジェット戦闘機10機が配備されたと報じた。
 福建省水門は台湾海峡に面しており、台湾へ246キロメートル、尖閣へ380キロメートル、東シナ海のガス田(春暁リグなど)へ200キロメートルの距離。尖閣有事の際は、この空軍基地から戦闘機が飛び立てる。12月13日には尖閣上空を中国機が初めて領空侵犯したが、常態化する恐れがある。
 水門に空軍基地の建設が始まったのは2009年。12年に「殲=10型」ジェット戦闘機が出現した。これらは広東仙頭基地から部隊ごと移動してきた。「台湾とは緊張緩和状態にあるが、これら短距離ジェット戦闘機の移動は明らかに尖閣有事に備えるものだ」(「中文導報」、12年12月1日号)との見方もある。
 そんな状況下で、さらに日本向け軍事作戦の本丸である「南京軍区司令員」に、総参謀部副部長の蔡英挺中将が任命された。対日戦略の中枢に総参謀部からの新任だ。関係者はこれも「尖閣シフト」とみている。
 蔡中将は多くの集団軍長を経て大軍区の参謀長を歴任。軍中枢の総参謀部副部長をわずか1年余で、しかも中将のままで南京軍区司令員に転出するのは異例である。
 南京軍区が所管する地域は、上海、江蘇省、浙江省、安徽省、福建省、江西省など、中国経済の心臓部である沿岸地域。これらに配備されたミサイルや装備などが、日本、台湾、朝鮮半島向けである。


 団派幹部が次々と汚職摘発で失脚

 太子党の政治家で金融に明るく、次期首相が適任とされた政治局常務委員、序列第6位の王岐山氏に注目だ。紀律担当となり、今後、汚職摘発の頂点に立つ。太子党の汚職をかばい、団派エリートを失脚させる権力闘争の切り札を太子党が保持したという意味は大きい。しかも、王氏は反日政治家であり、改革を掲げる団派を嫌う保守派である。何が起きたか。
 12月8日から12日まで5日間、習近平・国家主席は広東省各地を歩き、軍事基地も3つの部隊を訪問。戦車にも上って見せ、ミサイル駆逐艦「海口」にも試乗して「中国軍を仕切っている」と誇示した。
 実は広東省は、習主席ら太子党のライバル、団派の金城湯池である。しかも、団派の有力者として知られ、次期副首相への昇格が日程にのぼっている汪洋氏(党書記)を各地の視察先に伴った。団派との露骨な妥協の演出だ。
 王氏の就任以後、腐敗摘発で失脚した政治家は、雷政冨・重慶市区書記、梁道行・深?市副市長、猿占亮・甘粛省蘭州市長、劉鉄男・国家エネルギー局長、汪建設・安徽省黄山市常務委員等だが、この中には雷書記のようにネットに女性との不倫場面が生々しく画像に流失して、世論に追われるような失脚も含まれる。
 しかし、汪氏を伴った広東省視察の直前に、団派幹部でもある広東省のローカルな市の書記、副市長クラスが数名も失脚するなど、王氏の狙いが団派勢力封殺にあることは明瞭。団派不利な情勢がしばし続きそうだ。


←12月号へ                 Top                 2月号へ→

ダミー
ダミー
ダミー
(C)2013 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館 TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp