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  NEVER MIND 作者:コーキ
第1章 エピソード 0−2
「アナウンスもなしか?それにしてもヘタッピな操縦だこと。」
 操縦の優劣なんて知らない俺にでさえわかる程のひどい振動だった。
 俺は慌てて手を伸ばし、ウットリと喘いで涎を垂らしている女の腰ににベルトを締めてやり、自分もベルトを締めた。
 ふざけたことに女は自分の指を突っ込んで自慰に耽り始めた。
 ふざけたことにババアのスチュアーデスは大変良い姿勢で瞑想を続けていた。
 ふざけたことに乗客共は、まったくお構いなしの乱痴気騒ぎを続けていた。
 この世はまったくふざけた人間で溢れかえっている。現代。
 機体は凄まじい加速を見せ、突然傾いてゴガッゴンゴンというイヤな音と共に急上昇した。俺は唸り声を上げてGに耐えた。
 「アア、ア、ア、アーン!」
 気圧の変化と共に絶頂に達してしまったのか、女は大声をあげた。女の頭がガックリと墜ち、力無く俺の肩に預けられた。俺は嘔吐しそうだった。

 飛びあがっちまえば、なあんだ、地上と変わらない。雲の上のいい景色。俺は「カイチョー!」と叫んでいた。
 ンじゃ、早速ってんで女の髪を鷲掴んで引き寄せ、唇を貪った。女はゴロゴロと喉を鳴らして俺の唾液を吸った。
 「ほれ、便所行くぞ、便所。」
 女の手を引いて立ち上がろうとした時、相変わらず無の境地にいるスチュワーデスを挟んで四人のアラブ人が立った。
 見覚えのあるデブ、デカ、チビの髭面トリオの他に、頭に白い布を巻き、全身白装束で白い眉毛と白い山羊髭をどちらも長く垂らしたアラブのジジイが立っていた。ジジイの浅黒い顔には深い皺が無数に刻まれ、白い鼻毛が飛び出していた。
 突然デブが、ひん曲がったような変な形の鉈を振り上げたかと思うと、最前列に座っていい調子で唄っていた邦人オヤジの禿頭をカチ割った。
 飛び散る血潮は天井にまで届き、デブが鉈を引き抜くと、ドロドロの脳漿がマグマのように噴き出してきた。
 「あわわわわ!」
 と、腰が抜けて座席に倒れ込み、手足をじたばたさせているのは俺だけで、スチュワーデスのババアは無表情、乗客共は我関せずの馬鹿騒ぎ、頭を割られた男の隣では金髪を血飛沫でまだらに染められた白人女が唾を飛ばしながら連れの男になにやら罵声を浴びせていて、男の方は目を閉じて口元にへらへら笑いを浮かべながら小刻みに頷いているだけ。俺の女に目をやると、暫くの間、呆けっと割れた禿頭を眺めていたのだが、なぜかクスリと陰気な色気で微笑し、俺の肩にもたれかかってきて、掌で俺の胸を撫で回し始めた。
 アラブの髭トリオは、最前列の乗客共を片っ端から刺し、割り、刻み、剔っていった。喚き散らしていた白人女の髪は一瞬にして金髪から赤毛に変わり、相方の男はへらへら笑いを浮かべたままの口元を残して、頭の上半分を失っていた。飛び散る血潮、弾き飛ぶ被害者の一部、零れ出る内臓やら脳漿やらとそれが放つ悪臭。白いアラブジジイは血飛沫を全身に浴びながら、乗客が屍となる度、その前に跪き、妙チキリンな言語で詠うような祈りを捧げていた。人数が減って幾分静かになったものの、変わらぬ笑い声や歌声が楽しげに響く機内で、ババアは仏のような表情で蝋人形のように動かず、女は呆けている俺のモノを引きずり出してしゃぶりはじめた。不思議とこのような状況でも俺は勃起していた。
 俺はひとり呟いた。
 「ハイジャック、或いはテロルの勃発?」
 グチョグチョと唾液をまぶしながら吸い続ける女の頭を押さえつけて弄びながら、俺はもうイキそうで、クラッシュ寸前の脳はこれまでの人生で最も活発な活動を始めた。これが走馬燈のようにってやつかな?

 やだやだ、人生の終わりかもしれないと言う時でさえ走馬燈は淫乱で馬は巨大な牡根を剥き出しにしている。馬の背には全裸で巨大な逸物を扱きながら真っ赤な鬼が跨っている。記憶、それも猥褻な記憶ばかりが鮮明にフラッシュバック!



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