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2006-10-15 Sun 14:53
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気がつくと、私は拓海のベッドに寝かされていた。
前と同じようにタオルケットを掛けられた状態で。 少し違うのは、前回と違って拓海が一緒のベッドで寝ているということ。 それも私を胸の中で抱き寄せるようにして、寝息を立てている。 だから、私のすぐ目の前には拓海の陽に焼けた、逞しい胸板がある。 私は無性に拓海の肌の温もりを感じたくて、頬をスリスリと擦りつけた。 肌は少し汗ばんでいたが、それでも心地良い。 しかし、今更ながら大変な事をしてしまったと思う。 だからといって後悔はない。 倫理的に許されない事ばかりだけど、心も身体も満たされているのは確かだ。 ただ、拓海が私のモノ…、いや、私だけが、拓海のモノでない事だけが寂しいと思う。 三人の男性に『私自身』を受け入れてもらえなかった私は、どこか心のバランスを崩していた。 誰かの特別な何かになりたいと、心から想う。 言ってしまえば『所有』でも構わない。 そうすれば、この不安定な私の心と身体のバランスを取る事が出来る。 そう思うと、その男性が拓海では有り得ないのは、私に取って、とても残念な事だ。 家族…、血の繋がった実の姉弟、弟には想い人、私ノーマルなセックス不能者。 全ての関係が、私にとって不適切…。 まったく、溜め息しか出てこない。 こんなに悩む私をよそに、気持ち良さそうに眠る拓海が、少し憎らしかった。 こんな安らかな寝顔をしていても、昨夜、私にしているような事を、他の女性にしているかと思うと、私は酷く嫉妬した。 『拓海の、バカっ』 小さく呟いた…つもりだった。 『誰が、バカだって?』 『ひやぁ!?…お、起きてたの?!』 『誰かさんが、俺の胸に顔擦り付けてきた辺りから』 『なっ?!』 顔が一気に朱くなるのが分かる。 『で、どうしたの?やっぱり昨日のコト…、後悔してるとか…』 『べ、別に後悔してないよ』 『そう?なら良いけど…、騙し討ちみたいなコトしたから、怒ってるのかと思った』 確かに、アレは予想外だった。確かに、お尻が目的だとは…。 だけど、私が気にしているのは、そんなことではない。 『た、たくみ…』 『何、姉さん』 『わ、私以外にも…、やっぱりこういうコト、するの?』 『え?』 拓海は少しだけ困った表情になる。 『あ、ごめん…、変なこと、聞いちゃって…ははっ』 衝動的に聞いてしまった事を後悔した。 私がそんなこと聞いて良いはずがない。 『姉さんは…、嫌なの?俺がそういうコトしてるの』 拓海が真っ直ぐ私を見つめる。 いや?それとも、いい? そんなの、どちらかだなんて決まってる。 でも…。 『い…っ』 言えない…。 ホントの事も言えないけど、嘘もつきたくない。 私は俯いて、何も言えなくなった。 『どうしたの?言えないの?』 『そ、それは…』 拓海は私をギュッと自らの胸に抱き寄せると耳元で囁いた。 『もし、姉さんが、そう望むのなら…、俺は姉さん以外の女性に触れたりしない…』 『…へ?』 『だから…、姉さん専属ってコト』 せんぞく…、専属? っていうことは…?! 『拓海、それって…んっ!』 拓海は私の唇に人差し指を当てて、言葉を遮った。 『その先は、言っちゃダメ』 『え?』 それって、どういう…。 『あっ』 私は拓海の表情を見て、理解した。 笑っていても、ふと見せる悲しげな瞳。 気持ちが通じ合っても、越せない『血』な壁…。 私なんかより、よっぽど拓海は理解している。 『うん…、そうだね』 姉弟だから越えてはいけない壁。 でも、抑え切れ無い、この衝動…。 白でも黒でもない、灰色の領域で…。 『ね、拓海…』 『ん?』 『拓海には、好きな人がいるんでしょ?』 『…あぁ』 『その人は、拓海の近くに居る人?』 『うん、すぐ傍に…』 『結ばれちゃ、イケナイ存在?』 『うん』 『いつから、好きだったの?』 『…もう、ずっと前…かな?』 『その人の事…、愛してる?』 『あぁ、愛してる!』 拓海は真っすぐな瞳で、私を見つめながら言った。 ジワリと胸が熱くなった。 私もう一度拓海の胸に顔を埋めると、こっそりと涙を流した。 拓海と心が通じ合った喜びと、いつか別れがくる哀しみ…。 でも、今は…、今だけは、拓海を一人占めさせて欲しい。 喜びの涙だけ、流させて欲しい。 意地悪な神様…、どうか…どうか…。 真紀と拓海・終 スポンサーサイト
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