詩織と一哉SP サイドストーリー〜柿崎〜 


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【1】

『真奈美ちゃん、黒崎君このまま補習来ないのかな?』

補習の休み時間に親友の沢村智香(さわむらともか)が話し掛けてきた。

『そうだね、仕方がないんじゃないかな。目の不自由なお姉さん独りにしては来れないでしょ?』

私は努めて冷静に答えた。

『それはそうなんだけどね・・・』

『あれれ〜?香月君が嫉妬に狂っちゃうわよ?』

『そんなんじゃないよ。休み明けの実力テストはクラス編制に大きな影響があるでしょ?』

『あぁ・・・黒崎君、いつも結構ギリギリだものね』

一年の頃から特進クラスだった黒崎君だけど、クラスでの成績は下位で、実際二年に準特に落ちると言われていたらしい。

とはいっても我が校の特進クラスは県内でもトップクラスで、中でも国立難関大学合格を目的に編制された特進クラスは毎年多くの東大合格者を輩出している。

まあ、準特クラスだって他校の特進クラス以上はあると思うのだけど。

『三年も四人一緒が良いのにぃ』

智香は頬を膨らますと、つまらなそうにそう呟いた。

まあ・・・、その気持ちはわからないでもない。

智香も私と同じで、交友関係は狭い。

だから仲良くなった友達は離れるのが辛いのだろう。

『ねぇ真奈美ちゃん』

智香は少し声を抑えて私に顔を近づけた。

『黒崎君ってさ、ゲイ・・・なのかな?!』

『はぁ!?』

突拍子もない智香の質問に、私は思わず机についていた肘をカックンさせてしまった。

『え?だって、また撃墜されたらしいよ?』

『今度は誰?』

『一組の上谷さん。ほら、髪の長い・・・』

『あぁ、テニス部の・・・、結構男子に人気ある子だよね』

『そうそう!私の知ってる限りだけど一年の頃から56人は撃墜されてるのよね。絶対あれはゲイね』

『智香ぁ・・・楽しんでるでしょ』

『・・・わかっちゃう?』

それだけニヤけた顔してれば、誰だって分かる。

大方、今流行りのボーイズラブ的妄想に耽っているに違いない。

『知らない人の事じゃないんだから、変なこと言わないの!』

『は〜い』

ちょうど次の授業のチャイムが鳴り、智香は自分の席に戻って行った。

まったく智香も変なことを言う。

黒崎君がホモとかゲイとか・・・。

そんなの・・・、そんなの困るよ。




一日の補習が終わり、私は通学の電車に揺られながら、一人のクラスメートのことを考えていた。

黒崎一哉・・・。

身長177センチ体重67キロ。

血液O型。

三年前に父親を亡くし、母子家庭。

兄弟は姉が一人。

成績上の下、スポーツは上々。

現在、付き合ってる彼女・・・無し。

ゲイの疑い・・・多少あり。

どうやら・・・、私はこの男の子の事が気になるらしい。

『らしい』とはおかしな事なのだけれども、何分こういった経験が皆無なので何とも言えない。

実際・・・、男の子を異性として意識したのは、これが初めてだと思う。

何しろ同性であっても、人付き合いの苦手な私だ。

それが『恋』だなんて・・・、私の過去を知る人が聞いたらどんな顔をするか。

黒崎君と初めて出会ったのは、高校受験の日だった。

受験当日、よりによって筆記用具一式忘れた私は、よほど青い顔をしてたんだろう。

『大丈夫?気分悪いの?』って声を掛けてくれたのが、たまたま隣に座っていた黒崎君だった。

『とりあえず、シャーペンと消しゴムで良いよね・・・ってあれ?』

見れば、彼のペンケースには消しゴムが一つしか入っていなかったのだ。

『あの・・・、シャーペンだけで良いから』

そう言った時には、もう彼の消しゴムは真っ二つにちぎられていた。

『形は悪いけど、簡便な』

不格好な消しゴムを私に手渡しながら、彼は二カッと無邪気な笑顔をみせた。

『あ、ありがとう・・・』

思えばこれが。私にとって久々の『ありがとう』だった。

一時期といえ、酷いイジメを経験した私は、人に頼らないようにして生きてた。

クラスでも少し浮いてたし、ガリ勉とか根暗とか・・・、酷い時には『人の彼氏に色目使った』とか言われた。

人間関係なんて、煩わしい

そう、ひねくれて生きて来た私が、心から人に礼を言ったのは、いつ以来だろうか。

おかげで、テストも無事終了。

何とか乗り切る事が出来た。

ただ、試験終了後、ペンと消しゴムを返そうとしたら、彼の回りは友人らしき男女数名が集まって来て、返却の機会を失ってしまった。

それ以来、あのシャーペンと消しゴムは、私と彼を繋ぐ証になった。

二人が合格すれば、必ず会えるハズだ。

それまで大事に預かっておこう。



そして新しい高校での新学期・・・

私はクラスの男子を初め、新入生の中に彼の姿をこっそり探して回った。

さすがに聞いて回る訳にはいかないので、効率良く探すことは中々出来なかった。

半年経って半ば諦めていた時、思いも因らない巡り会わせがあった。

特進クラスに小学時代の幼なじみだった『沢村智香』がいた。

私は小学校を卒業後、父の仕事で他県に引っ越したので中学時代は殆ど接点がなかったけど、昔はよく一緒に遊んだ記憶がある。

クラスは違ったけど、私達はすぐに打ち解け一緒に通学するようになった。

別々に育った3年間を取り戻す様に、私達はいっぱい色んな話をした。

学校の事、クラスの事、それに男の子のコト・・・。

智香には彼氏がいた。

見た目は少しヤンチャだけど、根は真面目な男の子のようだ。

そして、その彼と仲が良い男の子が『黒崎一哉』だった。

私は入試でのお礼と、借りていたペンを返そうと思った。

けど、一年経った今・・・、私は言えないでいる。

最初は私の事を思い出して欲しかったから、彼の前で借りていたシャープペンをチラつかせたりしたけど、全く効果がなかった。

それはそうだろう・・・

一年も前の、それも彼にとっては当たり前の親切であろう行為を、覚えていなくても不思議ではない。

それでも私は良かった。

彼に思い出させる事が無理なら、それを良い事に私は彼の物を所持している事が出来るのだから。

そんなこんなで私達は再会を果たし、今は揃って四人が特進クラスの為に4人一緒に行動するコトが多い。

しかし、前途は多難だ。

密かに黒崎君は女の子に人気があって、クラス以外にも狙ってる女の子はかなり多い。

一緒にいる事が多い分、他の女の子よりも有利だとはいえ、そんなリードは微々たるものだ。

黒崎君は、何故だろう・・・みんなに人気がある。

やたらと顔が広い。

自然と彼の回りには、人が集まって来るみたいだ。

これを『カリスマ』というのだろうか。

今の特進クラスは、勉強ばかりのイメージを払拭するほど、連帯感がある。

その中心は、やはり黒崎君だったりする。

そんな黒崎君の近くにいる私は、他の女子からすると、やはり目障りな存在なんだろうか。

時より氷の視線を背中に感じる事がある。

まあ上品な学校故か、直接的な嫌がらせを受ける事はないのだけど。

何とかこの夏、友達という関係から一歩踏み出したいと思っていたけど、黒崎君が補習に来ない為に話も出来ない。

だから、わざわざ補習のプリントを渡す口実を作ってまで黒崎君の自宅まで行ったのに、本当にプリントを渡すだけになってしまった。

介護が必要なご家族がいるから、仕方がないんだけど。

(でも、少し妬けたなぁ・・・)

私は、黒崎君の家へ行った時の事を思い出した。

黒崎君のお姉さん、・・・詩織さんだったか。

黒崎君が優しく腰に腕をまわし、手を取る様はまるで・・・恋人に接するような印象を受けた。

無意識に自らの腰に腕を回す・・・。

イメージの中で詩織さんと私を入れ換える。

(あぁ・・・)

それだけで、たったそれだけで身体の芯が熱く震えてくる。

(
いやだ、こんなところで)

身体がブルッと震え、もぞもぞと内股を擦り合わせてしまう。

高校二年にもなるとセックスを経験する女子も増えてくるらしいのに情けない話、私はやっと半年くらい前から自慰・・・つまり一人エッチを行うようになった。

中学時代の『イジメ』から人に感心の持てなかった私は、自分にも興味が持てなかった。

心が痛みを少しでも感じない為には、自らの心を氷の様にしておく必要があったんだ。

だから普通は思春期の入口で経験するようなコトを、今更経験してしまう。

引き金になったのは、やはり黒崎君だった。

彼は簡単に私の心に踏み込み、凍った私の心を簡単に溶かしていった。

そして、彼の事を好きだと認識するのに大して時間はかからなかった。

智香以外のクラスメートともそれなりに話すようになった。

母親にも明るくなったと言われた。

凍った心が動きだし、同時に身体の『女』の部分も目覚め始めた。

初めての一人エッチは、私が特進クラスに編入出来たお祝いに4人で遊園地に行った日の夜だった。

智香は彼氏の香月君とベッタリなので、必然と私は黒崎君と一緒の乗り物に乗ったり、並んで歩く事が多かった。

最初は凄く緊張した。

何しろ1年の頃は、クラスが違ったから殆ど会話らしい会話をしたことがない。

お互いの親友の友達ということで軽く挨拶くらいはしたけれど、異性との会話の乏しい私に、これはかなりのプレッシャーだった。

そんな私の緊張を察したのか・・・、黒崎君は豊富な話題を提供し、自分の事も面白可笑しく語ってくれた。

最初は相槌を打つだけだったが、時間が経つにつれて笑って会話すことが出来るようになった。

自前のデジカメでみんなの写真を撮りつつ、こっそりと黒崎君だけの写真も撮ったりした。

こんなに一日が早く、あっという間に過ぎていったと感じたのは初めてかもしれない。

私は家に帰ると、さっそくデジカメの画像をパソコンに移し、整理しながらプリントアウトしていった。

三人の要望があれば、焼き増ししても良い。

私は、出来上がりをベッドの上でゴロゴロしながら確認していった。

案の定・・・、黒崎君の写っている写真が多い。

何枚か抜き取ると残りを簡易のアルバムに直し鞄に入れる。

勿論、抜き取ったのは黒崎君の写真だ。

そのまま見せれば、この想いを誰かに感づかれてしまうかもしれない。

それは、まだ避けたい。

(
こんな気持ち初めて・・・)

今日の余韻で、軽い興奮がまだ治まらない。

その原因が黒崎君だということを、私は認識している。

そっと手の平を胸の上に置き、自らの鼓動を感じる。

いつもより、鼓動が早い・・・。

身体が微熱時のように火照っている。

それは不快なコトではなく、今まで感じた事の無い気持ち良い感覚。

何故か恥ずかしくなった私は、胸の鼓動を押さえようと指に力を込めた。

その時・・・

ぴりりと身体に甘い刺激が走った。

(
な、に・・・いまの?!)

一瞬胸から手を放したが、その甘い欲求に絡めとられた私は、再び胸に手をやった。

柔らかな弾力と沸き上がる快感。

(
き、気持ち良い・・・)

触れれば触れただけ快楽となって返ってくる行為に、私は徐々に陶酔していった。


初めての行為なのに・・・

どうして快楽を得る方法を人は知っているのだろうか。

誰にも教えてもらわなくても、指は踊り、気持ちの良い場所を見つけ学習していく。

左手で固くなった胸の蕾を擦り、弾き、摘んでみる。

『あ、はあっ・・・んっ・・・』

胸だけでこれだけの刺激が得られるのに、さっきからムズムズと焦れるように疼く恥ずかしい場所・・・。

(
ここ触ったら、どうなっちゃうんだろ・・・)

そう思いながらも、右手はゆっくりと腹部から下半身へ・・・

今日の為に選んだ少し短めのスカートに到達する。

今まで以上に打ち鳴らす鼓動を黙殺して、スカートの上から軽く触れてみる。

『んあっ・・・』

じわりと広がる刺激に、甘い吐息が漏れる。

一瞬、心の警鐘が鳴った。

この快楽の虜になる予感・・・

一瞬指が止まる。

でもそれは、自分を誤魔化そうとしてるだけ。

本当はその快楽に身を任せたかった。

私はスカートを捲ると、パンティに指を忍び込ませる。

普段はただ、身体の余分な水分を排出するだけという認識しかしていなかったこの場所が、全く違った目的の為に使われようとしている。

淫らな行為の予感に全身が熱く震わせながら、私は秘唇の割れ目に沿って指を這わせる。

『ふあぁ・・・』

あぁ、恥ずかしい。

すごく・・・、濡れてるのが分かる、分かってしまう。

秘唇に触れた人差し指は、すぐに自らの淫液によって汚された。

そして潤滑油を得た指は、スムーズに指の往復を助ける。

『あっ、ああ・・・、いっ、嫌っ、駄目っ、止まらないっ!』

指は、まるで触覚のように気持ち良いポイントを探していく。

ただ、純潔の証を傷付ける恐れがあったので、膣口には意識的に触れないようにした。

しかし、クリトリスというのか・・・。

この小豆のような突起部分は、加速度的に私を快楽の虜にしていった。

身体を駆け抜ける快感に、私の身体はベッドの上で小刻みに奮え悶える。

ふと枕元に散らばった彼の写真が視界に入る。

あぁ・・・

自らを貪るこの指が、彼の・・・黒崎君のモノならどんなに良いか。

私は自分の指を、黒崎くんの指であるように想像する。

あのしなやかな指先で、触れて欲しい。

『く、黒崎くん、もっと・・・、あんっ、あぁ、もっとぉ』

抑えようとしても、身体が言う事を効かない。

この沸き上がる初めてね快楽に、抑制する意識は蕩けてしまいそうになる。

家には家族もいるのだから、なるべく声を出さないように我慢してるけど、だんだん堪え切れなくなる。

私はなるべく声が漏れないように、布団に顔を埋めた。

『はんっ、ああっ・・・、ん、んんっ』

快楽の源がクリトリスなのだと感じ取った私は、そこを集中的に責め立てる。

どんどん快楽を示すゲージが加速度的に昇っていく。

胸の鼓動が頂点に達し、全身を今まで感じた事のない激しい絶頂感が私を包み込む!

『あっ、いい・・・、黒崎くん、あっ、ああっ、はあああああっ!』

頭の中で、白い稲妻が弾けて消えた。

これが『イク』という事だろうか・・・。

一瞬、身体が宙に浮いた様な錯覚。

そして意識が飛んでしまうような快感が、ビリビリと全身を走り抜ける。

最後の瞬間には黒崎君すら消え去るくらい、頭の中が白く焼き付いた。

少しの間、私は肩で息をするくらい呼吸を乱し、身動きするのも億劫なほど脱力していた。

その時だ。

ドンドンと部屋の扉を叩く音と、弟の剛志の声がした。

『姉ちゃん!母さんが、風呂入れってさ!寝てるの?』

心臓が飛び出すかと思った!

『お、起きてるわよ!すぐ行くから!』

私はパンティにまだ入ったままの指を引き抜くと、身なりを急いで整えた。

『俺も入りたいから、早くしてよね』

いつも部屋には勝手に入るなと言い聞かせておいて良かった。

さすがに、弟も中三ともなれば、私の姿を見て、何か感じ取るかもしれない。

私はホッと溜息をつくと、起き上がって少しシワの跡が付いてしまった黒崎君の写真を机にしまった。

(あ・・・)

起き上がって気付く。

濡れた下着がヒンヤリと肌に纏わりつく。

私は少し迷ったが、勢い良く濡れたパンティを脱ぐと、着替えを持って部屋を出た。


私は少しだけ大人になった気がして、心が浮き立っていた。

あの日以来、私は毎日のように、自分を一人で慰めている。

本物の黒崎君にもらいたい・・・。

でも、今の関係を壊すのが怖い・・・。

黒崎君は、誰か好きな人がいるのか。

香月君にそれとなく聞いても、知らないらしい。

智香ではないけど、黒崎君がゲイじゃない限り(そんなことは無いと思うが)、私にもチャンスがあると思いたい。

今は一番彼の近くにいるチャンスを最大限利用しよう。

恋愛経験のない私には、東大受験よりも難関に思えるけど・・・

私はこの気持ちを本物にしたいんだ。

 

                                         終

 


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