美琴SP
【2】
『ごめんなさい、手が放せなくって』
私は言って内心恥ずかしくなりました。
『鍵持ってるんだから、出迎えなんていいのに』
そう言いながら、父は嬉しそうに鞄を私に手渡します。
『え〜、娘にお出迎えなんて普通の父親なら泣いて喜ぶんだから!』
『はは、確かに。お父さんは感激で胸がイッパイだよ』
わざとらしく胸に手を当て、うんうんと頷きます。
『もう!嘘っぽい!!』
父はひとしきり笑うと私の顔をまじまじ覗き込みました。
『風邪か?顔が赤いぞ。』
自慰の途中で汗ばみ前髪が少し張りついているのでしょう。
父は私の髪を優しく整えてくれます。
『うん、ちょっと風邪気味かも・・・、でも大丈夫!』
取り立てて体調が悪い訳ではありませんが、言い訳としては悪くありません。
『風邪かも…』と言えば、いつも以上に父は私に気を使ってくれます。
私はこれ以上追求されても困るので、父にはお風呂を勧め、その間に夕食をテーブルに並べ父を待ちます。
15分も経つと、父はブルージーンズと洗いざらしの白のYシャツを着て、お風呂から上がってきました。
濡れた髪をバスタオルで拭きながら現われた父の前ボタンははだけられ、引き締まった身体が垣間見えます。
一般に三十を越すと、お腹が出る男性も多いと聞きます。
その中で父は異質なのでしょうか。
服を着ている状態だと細身で少し頼りなく見えるかもしれませんが、その隠された肉体を目の当たりにした女性の大半は抱かれたいと思うかもしれません・・・。
今も向か合って食事をしてるので、嫌でも目に入ってドキドキしてしまいます。
それならボタンをはめてもらえばいいのですが、タイミングを完全に逸していますし、汗が収まる間の短い時間なので、わざわざ言うまでもありません。
それに・・・、こっそり見たいという欲求も・・・あります。
(ああ・・・)
どうやら自室に戻ったら、この疼いた身体をなんとかしないと、ゆっくり眠ることも出来そうもありません。