詩織と一哉SP 


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【4】

『ごちそうさま・・・』

姉さんはそう言うと、満足そうに手を合わせた。

あれからキッチンで夕飯の準備をしていたら、目を覚ました姉さんが二階から一人で降りて来た。

『ちょ、無茶しないでよ!』って真剣に焦ったけど、長年住み慣れた家なので、ゆっくりなら大丈夫らしい。

でも、次からはちゃんと内線で呼ぶよう注意は怠らない。

勿論、転んだりしないか心配してのコトだけど、オフィシャルに姉さんに触れる機会を失うとは勿体無い・・・とか思ってしまったのは内緒だ。

夕飯は軽くが良いとのことなので、ざるそばと冷奴にしてみた。

『食欲ない?大丈夫?』

『ん、大丈夫。運動してないからお腹空かないのよ』

『ならいいけど・・・』

俺は食器を流しに移動させると、すぐに洗い始めた。

いつもは大雑把な俺だけど、何故かキッチンの洗い場が片付いてないと落ち着かないのは、最近どっぷりと主婦(主夫?)業に染まったからだろうか・・・。

『明日は朝一番で診察だったよね?何時起き?』

『え・・・っと、九時からだから・・・・・・』

『なら移動に1時間みて、7時には起きないとね。タクシー呼ぼうか』

『えっと・・・』

『ん?』

『一哉さえ良ければ、バスで・・・』

『え?いや、良いけど・・・、大丈夫?』

『ん、最近運動不足だから・・・』

『ん、わかった』

『後ね、一哉・・・』

『なぁに?』

『・・・』

『どうしたの?』

洗いモノの手を休めて振り返ると、姉さんはうっすらと顔に朱をさして俯いている。

『あ、うん・・・、後・・・、お、お風呂入るの・・、手伝って・・・欲しいんだけど』

どっきーん!

最後は消え入りそうだったが、内容はしっかりと聞き取れた。

『あ、うん・・・、わかった。片付け終わったらね?』

ここは動揺してはいけない。

動揺すれば、余計に姉さんは恥ずかしい思いをするから。

だからこういう時は、少し違う話題を振ってみるのが良い。

『そういえば母さん、今回パリだっけ?』

『え?うん、確か・・・』

『仕事だから仕方無いんだろうけど、たまには家族で旅行とか・・・したいね?』

『旅行かぁ、久しく行ってないよね』

『今度計画立てて行こうか!姉さんの快復祝いも兼ねて』

『良いわね!でも母さん、休み取れないよね〜』

国内外問わず年中飛び回ってる母さんには、中々安定した休みは取りにくいだろう。

『仕方ない、母さんはお留守番決定だな』

『ひど〜い。でも仕方が無いか』

『でしょ?』

『ね、行くならどこが良い?』

『ん〜、行くなら・・・、景色が綺麗で・・・食べ物が美味しくて・・・』

『私は・・・、京都とか行きたいな』

『今の京都は暑いらしいよ?行くなら紅葉の季節とか?』

『じゃ、約束!』

『オッケー、約束ね』

そういって姉さんの差し出した小指に俺は小指を絡めた。

結局、なんだかんだ姉さんと話しているうちに、10時になってしまった。

『そろそろ・・・、お風呂入る?』

俺はさりげなく言った。

姉さんもさっきからソワソワしてるところを見ると、いつ切り出そうか迷っていたのかもしれない。

『う、うん』

少し・・・、いやだいぶ緊張している?

『着替え・・・、要るよね?ついでだから取ってこようか?』

言ってとんでもないことを口にしていると気付いた。

当然下着も換えるのだから、タンスの中を物色することになるんだ。

『・・・うん、お願い。あ、ブラはいらないから』

『わ、わかった』

何か姉さんの緊張が伝わって、俺まで緊張してしまう。

俺は早足で階段を駆け上がると、姉さんの部屋に入った。

勿論下着がどこに入ってるかなんて知る由もないので、タンスの上から順に開けていく。

下着類はすぐに見つかった。

小綺麗に小さくまとめた固まりがいくつもある。

とりあえず淡いブルー系を選んだ。

かなりの種類があるのは年頃の女性だからか、それとも母さんの仕事の影響か・・・。

後はシャツとパジャマを持って階段を降りた。

『姉さん、持ってきたよ』

『うん、ごめんね迷惑かけて・・・』

『良いって』

俺はいつも通り、腕と肩に手を添えて、浴室へ向かった。

平静を装おっても、胸の鼓動が姉さんに伝わりそうで、少し身を離してしまった。

脱衣所に辿り着いたところで、俺は訪ねた。

『姉さん、手伝うって何すれば良いのかな?』

『あ、うん。ある程度は自分で出来るんだけど、転ぶといけないから支えててくれると助かるかな』

『ん、了解。じゃ後ろ向いてるから・・・』

『い、いいよ後ろ向かなくても』

『え?』

(それって、どういう意味―?!)

『き、姉弟なんだから』

(えー?!)

確かに、色々手助けするなら姉さんの裸を見てしまうのは必然で、後ろを向くなんて唯の気休めにしかならない。

『あ、うんごめん』

『私こそ、ごめんね』

もう何かドキドキが治まらなくって、思わず謝ってしまう俺に対して、姉さんは俺に手間を掛ける事を申し訳なさそうに謝る。

この場合、ハッキリ言って姉さんの方が恥ずかしい思いをするんだから、姉さんが謝る必要はないんだ。

しかしー

『一哉?』

『え?!なに?』

『何?じゃなくて、一哉も脱ぐんだよ』

自らのボタンに手を掛け始めた姉さんは、トンデモナイ事を言う。

『えぇ?このままで良いよ!』

『服着たままお風呂に入るのは、浴槽洗う時だけでしょ?私は風呂桶ですか?』

少し頬を膨らませて、見えない視線をこちらに向ける。

『いや、そんなことないけど・・・』

『それに、おもいっきり濡れちゃうよ?母さんも最初びしょ濡れになったんだから』

思い出したように、くすくすと笑う。

『わ、わかったよ』

俺は観念し、勢い良くシャツを脱いだ。

しかし、姉さんが見たら・・・いや、この事を知ったらどう思うか。

事実、俺のムスコ君はジーンズの上からでもはっきりと分かるほど、固く盛り上がってしまっている。

それは、これから俺が目にするであろう姉さんのやわ肌を想像すると仕方無い事だと思うけど、姉さんはそんな俺の妄想なんて知る由もなく、着ているワンピースの前ボタンを外すと、腕をするりと抜いて、そのまま下に落とした。

現れたのは、白く透き通る様な肌とピンクの可愛い下着。

俺のゴクリと唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。

『恥ずかしいから、あまり見ないでね

『う、うん』

そう答えた俺だけど、目を離す事は出来なかった。

それほど、下着姿の姉さんは綺麗だった。

勿論、シャワーを浴びるのだから下着だけじゃ済まない。

『一哉、ホックお願い・・・』

姉さんがクルリと背を向けた。

『ホ、ホック?!』

思わず声が裏返る。

『金具引っ掛かってるの、外すだけだから』

『あ、うん・・・』

なるべく肌に触れないように心掛け、何とか外す事が出来た。

姉さんは背を向けたまま、ブラを外し床に落とす。

そして最後の一枚に手を掛けた。

反射的に、俺は背を向ける。

俺はソレを見てはいけない気がした。

汚してはいけない大切なモノを包み込む肌着・・・。

耳につく下着を脱ぐ音が、妙に悩ましい。

『一哉、脱いだ?』

『え?あ、うん。すぐ脱ぐよ』

カチャカチャとうるさく鳴るベルト。

焦ってジーンズを脱ぐのに手間取った。

『ん、脱いだよ』

『うん、じゃお願いね』

俺はこれ以上無いくらい緊張しながら、姉さんの手を取って浴室に入った。

 

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