詩織と一哉SP 


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【3】

『姉さんごめん・・・、気を使わせて』

三人を見送ると、俺は姉さんの手を取って二階に上がった。

『良いのよ、私一人で一哉を独占するわけにはいかないわ』

悪戯っぽく姉さんは笑った。

『でも少し、妬けたかも

『え?!』

心臓が跳ね上がった!

『これは私のカンなんだけど、柿崎さんだっけ、あの子あなたのコト好きみたいね』

『・・・まさか』

『私ね、手術してから人の心が良くみえるようになったの』

『?』

『心って言うのは大袈裟ね。ん〜、言葉に含まれる感情っていうのかな?それがよく分かるのよ』

確かに何かの本かテレビで、五感の内一つでも欠けると残った器官が発達するって読んだ気がする。

それが本当だとしても、あんな短い会話で判断出来るだろうか?

『婦長さんが言ってたわ、昔自分も知らない妊娠を患者さんに当てられたコトがあるって』

『どうして判ったの?』

『心臓の鼓動が二つ聞こえるって言われたんだって』

『へー!』

この話が実話かどうか別として、人の言動に敏感になるのは分かる気がする。

『ま、でも柿崎が俺のコトどう思っていても付き合うとかないね』

『どうして?』

『・・・内緒!』

『えー!』

姉さんが好きだから・・・、なんて言えないけど、嘘もつきたくなかった。

こんな時は濁しておくのが一番だ。

『とりあえず、さっきもらった補習のプリントやっちゃいますんで、何かあったら呼んでくださいまし』

『ぶ〜〜〜』

俺は不満に顔を膨らませ、足をパタパタさせる姉さんを横目部屋を出た。

(可愛いよなぁ・・・)

たまに年上だなんて思えない時があって可笑しい。

そして、自室に戻った後は真面目に机に向かった。

ただ、姉さんに何かあるといけないので、声や物音が聞こえるように扉は少し開けておく事は忘れない。

本当は姉さんとダラダラと過ごしたいけど、四六時中弟といても楽しくないだろうし、成績も落とす訳にはいかない。

姉さんの中では出来の良い自慢の弟らしいから。

今の自分を形成している根本は・・・

『姉さんに良く思われたい!』

というコトなのだと改めて感じる。

いつからこんなふうに想うようになったのか忘れてしまったけど、両親に褒められるよりも、俺は姉さんに褒められるのが一番嬉しい事だった。

学校の成績も、それにスポーツも人一倍頑張ってきた。

それは全て、姉さんに褒めてもらいたかったから・・・。

だからもし・・・、柿崎が俺のコトを気に入ってくれて付き合うことになっても、決して上手くはいかないだろう。

姉さんの為だけに作られた俺という『個体』が、柿崎に満足するはずがないんだ。

(もう少し大人になれば、違った考えが出来るだろうか・・・)

俺は、小さく溜め息をつくと、目の前のプリントに集中していった。

     ・

     ・

     ・

ふと時計を見ると4時半だった。

集中していたのか思ったより時間が過ぎてしまっていた。

しかし、隣の姉さんの部屋から何も聞こえなかったのが気になった。

(大丈夫かな、姉さん・・・)

俺は気になって、姉さんの部屋の扉をノックした。

コンコン・・・

・・・・・・反応なし。

もう一度繰り返しても同じだった。

『姉さん、入るよ?』

少し遠慮がちに扉を開けた俺は、中の様子にホッと溜め息をついた。

姉さんは床に倒れている訳ではなく、ちゃんとベッドで横になっていた。

規則正しい呼吸が睡眠中だと教えてくれる。

暇を持て余して、うとうとしてしまったのだろう。

室内温度が少し寒い気がしたので冷房のメモリを少し上げ、タオルケットをかけてあげる。

間近で見る姉さんは、包帯が痛々しくあってもその美しさは変わらない。

いつもは牛乳瓶の底のような眼鏡と無造作に束ねた髪形で異性の目を引くことはあまりない。

しかし・・・

これで順調に回復すれば、眼鏡なし、とはいかないまでも、お洒落な眼鏡を掛ければ人の目を引くのは間違いない。

当たり前に男と付き合って、いつかは結婚する・・・。

勿論、姉さんには幸せになってもらいたい。

でも、それを考えると姉さんの全てを奪いたい衝動に駆られる。

姉さんの髪に触れると柔らかな黒髪がサラサラと心地良い。

少しだけ開かれた桜色の唇からは、規則正しい呼吸が漏れる。

すぐ奪える距離に、俺を惹き寄せる艶やかな唇がある。

欲しい!

奪いたい!

俺だけのモノにしてしまいたい!

そんな強い衝動が、身体の奥底から沸き上がる。

あと10センチ・・・。

あと10センチ踏み込めばそれは手に入る。

(ねえ・・・さん)

ゴツッ!

俺は寸前で身を離すと、自分の脳天にゲンコツを喰らわせた。

『痛ぅ〜・・・』

何やってんだか、俺は・・・。

姉さんと俺は、姉弟なんだ。

信用だけは失っちゃいけないのに。

姉さんと二人っきりになって初日にこれじゃ、先が思いやられるよ・・・。

俺は特大の溜め息をつくと、夕飯の仕度をしにキッチンへ向かった。

 

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