詩織と一哉SP 


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【2】

『うわ、良い匂い!』

俺は、姉さんを席に座らせると、目の前に作り立てのパスタを置く。

『え〜、本日はシーチキンと新玉葱の和風パスタにしてみました』

『へ〜、料理作れるようになったんだ』

『まぁね

実際姉さんが入院するまで、俺の分担は掃除洗濯がメインで、料理は姉さんに任せっきりだった。

作れても目玉焼きと味噌汁(味は保証出来ない)程度。

そんな俺に、母さんは料理を作るように言った。

『料理が出来る男はカッコイイものなのよ?』

これは母の口癖なんだけど、確かに死んだ父さんの料理が美味しかったし、台所に立つ姿は印象に残ってる。

お陰でこの一ヶ月、かなりレパートリーを増やすことが出来た。

火傷や切りキズは絶えなかったけど、姉さんが喜んでくれるなら頑張った甲斐もあるってもんだ。

『はい、あ〜んして』

かなり照れるし頬に激しい『熱』を感じる。

でも俺は、それがバレない様に気を付けながら、麺を小さめに巻き取ったホークを姉さんの口元に近づけた。

『あ〜ん・・・』

小さく開いた薄桜色の唇に一瞬見惚れながら、俺は姉さんの口の中にパスタを運んだ。

『ん〜、美味しい!』

『そう?良かった』

『スープが美味しいね!』

俺も合間にパスタを口に運ぶ。

実際我ながら美味しいと思う。

姉さんは手の込んだ料理なのだと勘違いしてるかもしれないけど、実は『天つゆ』をベースにした簡単料理だ。

邪道かもしれないけど、こういった裏技はネットにも数多く流れてるので非常に助かる。

料理の知識が無い俺には、必要なテクなのだ。

後は味に飽きないように、サラダをバランス良く食べさせる。

『あ〜、美味しかった!病院の料理は味気なくって。これだけでも帰って来た甲斐があったなー』

『そう?』

『夕食も期待出来そう』

『ううっ、プレッシャー』

『んふふ』

姉さんは楽しそうに笑った。

『さてと、片付けちゃうかな』

俺は姉さんに新しくお茶を入れ直すと洗いモノを手早く済ませた。

食後にしばらく姉さんと他愛無い話をする。

俺の学校の話、姉さんの病院での話、大学の話・・・。

目以外は健康体の姉さんだけど、病院での生活は中々人と話す事も少なく、退屈な日々を過ごしていたみたいだ。

だから、見舞いに行くと姉さんは沢山話すし、今もいつも以上に饒舌だ。

気兼ねなく話せる弟という立場だけど、人見知りな姉さんが気を許す存在というのは余りいないみたいだから。

しかし、その楽しい時間を玄関のチャイムが邪魔をする。

『珍しいな

キッチンに据え付けてあるモニターを見ると、見慣れた顔がいくつか並んでいた。

(香月達か・・・)

『誰?』

『あ〜うん、高校のクラスメート。どうしたんだろ、ちょっと待ってて?』

とりあえず玄関に向かい、扉を開けた。

『どうしたの、みんな』

玄関に居たのは、香月、柿崎、沢村のクラスメートだ。

香月は一年からの親友で、沢村と柿崎は二年のクラス替えで同じになった女の子だ。

ちなみに、香月と沢村は一年の頃から付き合っていて、この二人を中心に俺と柿崎が集まった形になっている。

俗に言う仲良しグループのようなモノかな?

『ん〜、まぁ様子を見にな

頭をポリポリかきながら香月が言った。

担任は勿論、今回の事は香月に話してあったのに、おかしなヤツだ。

『黒崎君、残りの補習は出られないの?』

気の強そうな顔立ちが少し損だが、それを除けば可愛い部類に入るであろう柿崎真奈美が、補習用のプリントの束を差し出しながら言った。

『ん〜、まあね』

『休み明けの実力テストは重要だから、気をつけないと来年の『特進』危ないよ?』

『特進』とうのは、各学年に設けられている難関国立大を目指すクラスの事だ。

偶然なのか、テストの点がたまたま良かったおかげで『特進』というクラスにいるが、部活が免除されるという点を除いてはメリットもないので、俺自身あまり執着がない。

しかし、柿崎が他人の心配とは珍しい。

『あれ?心配してくれてんの?』

『別に心配なんてしてないわよ』

『そうですか・・・』

まあでも、一度気を許した者にはそうでもないのを俺は知っている。

一見冷たそうに見える彼女はクラスでも少し浮いた存在だが、実は結構思いやりのある女の子なんだ。

親友の沢村智香の事は勿論、俺や香月にも一応気を許してくれてるみたいだし、ちょっとムッとしながらも心配してくれてるのが伺える。

『まぁ、俺が体調悪い訳じゃないらね』

『身内の方の看病だっけ?でも、身内っていうと

『そう、姉さん』

『お姉さん・・・』

『目の手術をしたからね。母さんは海外だし、今日から専業主夫だよ』

『そう・・・、大変、そうね?』

『楽じゃないだろうけど、まっ、何とかなるでしょ・・・』

結構、楽天家な俺。

この状況を、楽しもうとしてるからかもしれない。

『料理とか、どうしてるの?』

『一哉は、料理出来るもんな』

『うそ

『今度食べにくる?』

今なら、巷の女の子には負けない自信はある。

その時・・・

『一哉、上がってもらったら?』

不意に姉さんの声がした。

『姉さん!?』

わざわざ気を使ってくれたのだろう・・・、壁伝いに玄関までやって来たようだ。

『ごめん!大丈夫?!』

ある程度家の中を歩き回る事は出来るが、神経を使うに決まっている。

それに他人に、今の姿も見せたくないはずだ。

俺は慌てて姉さんの手と肩をとった。

『ゴメン!ちょっと待ってて、すぐ戻るから

一先ず姉さんを部屋に送っていかなくては・・・。

『いえ!私達プリント渡しに来ただけですから。黒崎君ごめんね、お邪魔しちゃって』

柿崎が、俺達姉弟の様子を見て察したのだろう。

『いや、こっちこそゴメンな、せっかく来てくれたのに・・・』

香月はご近所さんだが柿崎と沢村は決して近いとは言えない。

わざわざ心配してくれて立ち寄ってくれたのに、申し訳ない。

『じゃ〜、今日のところは帰りますか!あ、詩織さん大事にしてくださいね』

以前から姉さんに面識がある香月が声をかける。

『香月君、ごめんなさいね。もうすぐ包帯が取れるから、また遊びに来てね?』

『マジっすか!じゃあ、今度来たときは詩織さんの手作りケーキが食べたいな〜』

『分かったわ、約束ね?』

『ラッキー!』

『普通、逆だと思うけど

香月に柿崎が絶妙なツッコミを入れる。

『仕方ねえだろ!詩織さんのケーキはバリウマなんだからよ!』

そんなツッコミも気にしない香月の頭からは、アルファー波がたれ流れている。

こいつは、甘いモノに目がないんだ。

しかし・・・

『香月、それくらいにしとかないと、沢村がかなりムッとしてるぞ!』

一瞬、皆の視線が沢村智香に向けられる。

香月の彼女である沢村は、かなり嫉妬深い。

鼻の下を伸ばす香月に明らかに頬を膨らましている。

香月が甘いモノに目がないのを皆知っているコトなんだけど、沢村には関係ないのだろう。

(まあ、そんなところが可愛いトコロなんだろうけど・・・)

『あ〜、そういうコトで、またにゃ〜一哉』

香月は沢村にほっぺを引っ張られながら、挨拶もそこそこに、玄関を出て行った。

『相変わらず、仲が良いよな』

『そうね・・・』

『プリントさんきゅーな?』

『あ、うん・・・』

一瞬、何か言いたそうな柿崎。

『ん?どうかしたか?』

『ううん、なんでもない。じゃ新学期にね?』

『ああ、ありがとう。気を付けて』

俺は、3人を見送ると玄関の鍵をかけた。

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