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2006-09-03 Sun 00:54
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『あ、のね…、ちょっと聞いて良いかな?』
私の緊張が通じたのか、拓海は読みかけの雑誌を閉じるとこちらを向いた。 私は拓海の真っすぐな瞳と、これから話すべき内容に緊張してしまい、次の一声を発するまでかなりかかったけど、拓海は根気よく待ってくれた。 『あ、あのね…、私…上手く…出来ないの』 拓海はコクリと頷くだけだった。 『あの…、狭すぎて、無理みたいなんだけど』 これだけ聞いても普通は理解出来ないだろう。 しかし拓海は、話の文脈から推測して『ふむふむ』と頷いている。 私は恥ずかしさで、さぞや真っ赤な顔をしているだろう。 喉もカラカラだ。 『あ?、つまり痛くて駄目なんだよね?』 私はコクコクと頷いた。 よくあれだけで通じたものだと感心する。 しかし、もう後には引けない恥ずかしさに、更に頬が熱くなった。 拓海は少し考えてから口を開いた。 『方法は二つ』 二つ?! 『一つは、愛情で結ばれた二人が時間をかけて馴らしていく方法』 これは知ってる。 ネットで得た情報と同じだ。 でも、もう一つって…。 『もう一つは…内緒』 『ええ?どうしてよ!?』 恥ずかしい思いして言った答えが、これでは納得いかない。 『もう一つは、愛があっても、素質…っていうのかな、がないと無理だから』 『拓海は、そういう人と…したこと、ある…の?』 『…あるよ』 凄いこと、さらっと言ってのける。 『で…、どうなったの?』 『姉さんとどこまで同じなのか分からないけど、その子は入口がかなり狭くてね、二つ目の選択肢で…。本人の望むトコロからは少し違った結果になっちゃったけど、喜んでたし…、良かったんじゃない?』 『一つ目の選択肢は駄目だったの?』 『愛してない女になんて、やってられないよ』 『拓海…、あなた知らない間に、凄く悪い子になったわね』 私はじと目で睨んでやった。 『まあ、そうだよね』 予想に反して、一瞬だけど、物凄く寂しそうな、悲しそうな目をした。 何だろう、大したこと言ってないはずなのに…。 『ま、気長にしてれば良いよ。姉ーちゃんのルックスと、このおっきなパイの実があれば、すぐ彼氏出来るって』 拓海の視線が私の胸に注がれてるのに気付く。 『このオヤジ!』 私は胸を隠して睨めつけてやった。 拓海は冗談だというように手をヒラヒラさせて笑った。 『協力出来ることがあったら言ってよね』 拓海は少し真面目な顔に戻ると、二階の自室に上がって行った。 拓海が出て行った後のリビングは広く、観たいテレビもないので、私も二階の自室に戻ることにした。 私たちの両親は会社を経営しているので、忙しくあまり家にいない。 規模が小さい時はよく構ってもらったけど、ここ数年は事業の成功で、家族の時間はあまりない。 裕福になったけど、私たち姉弟は少し寂しい思いをしている。 それでも友達はいるし、弟もいるし、困ることはあまりないのだど…。 私は自室のベットに横たわると、ぼ?っと白い天井を見つめた。 (愛情をもってじっくりか?) 結局、今までの彼氏は私に愛情なんかなかったってコトだ。 そういえばさっき、拓海は私が話を切り出す少しの間といえど、待っていてくれてたっけ。 いつもは意地悪だけど、さりげなくホッとすることも言ってくれるし…。 何か、昔から皆に人気あるの分かる気がするな…。 (気長に待ってくれる人、誰かいないかな…) 私は大きな溜め息をつくと当分男の人の事は考えまいと思った。 そういえば、拓海が言ってたもう一つの方法ってなんだろ。 素質がどうとか…。 それにしても、拓海は変わった。 いや、小さい頃から根っこの部分は変わってないと思うんだけど。 女性に対して、どこか投げやりというか、期待してないというか…。 やはり拓海の好きな人に関係があるのかな…? 今度聞いてみよう…。 私はそう考えながら、うとうとと眠りに落ちていった。 スポンサーサイト
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