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姉さんとにゃも?
2006-11-06 Mon 22:03
俺は、何も言えなかった。
今の俺に、何が言える?
出来る事といったら、謝るくらいだ。
だからといって、許されるとわ思わないけど…。

『あの…、ご、ごめ…』
『私は好きだな…あの小説』

唐突な、姉さんの一言。

『え…』

姉さんは、ニッコリ笑っている。
それは作った感じではなく、本当に普通に…。

『え?と、「詩織と一哉」だっけ?弟君の気持ちが、すっごく伝わってきて…好きだよ?』
『あ、ありがと…』

頭の中パニクってて、棒読みたいな『ありがとう』だったけど、小説を誉められた事は、すごく嬉しかった。

『でもー、ちょっとリアリティに欠けるかな…』
『そ、そりゃ、仕方ないよ…』

俺の…いや、『にゃも』の妄想の産物なんだから。

『リアルにしてみる?』
『へ?』
『やっぱり、私…、魅力ない?』
『何言って…、冗談が過ぎるって!』

俺は、がばっと上体を起こすと、こちらに少し身を寄せる姉さんと、気持ち距離を取る。
さすがに馬鹿にされたんだと思ってムッとしたんだ。

『冗談じゃ、ないんだけど…』

姉さんは、人差し指を、自らの胸の合わせに差し込むと、スッと数センチ押し下げた。
そこには風呂上がりで高揚した肌が、しっとりと汗に濡れていて、僅かに望む、胸の谷間に一瞬目を奪われた。
俺は、姉さんの視線にハッと気付き、慌てて目を逸らすが、網膜に焼き付いた映像は、中々頭から離れない。
俺はぎゅっと目をつむって振り払おうとした。
その時、俺の右手を温かいモノが包む。
びっくりして瞼を開くと、姉さん柔らかな両手が、俺の右手を包み込み、そしてそのまま自らの胸の膨らみに押し当てた。
ローブの上からでも分かるほど、温かく、ふにふにして柔らかい。

『ほら、ドキドキしてるけど、冗談じゃ、ないよ…』

確かに姉さんの心臓は、俺に負けないくらい激しく鼓動を繰り返している。
しかし、その鼓動は、次第に俺の鼓動とシンクロしていく。
さっきまで痛いくらいだった心臓の鼓動が、じんわりと、とても温かいモノに思えてきた。
この瞬間、同じ場所から別々の時間にに生まれた心臓は、全く同じタイミングで、鼓動を繰り返した。

『凄いね…』
『うん』

何が?って言われると困るんだけど、色々な事が、『凄い』と感じる。
変な緊張が急激に薄れ、体を熱い何かが巡り始める。

『智也…』
『姉さん…』

お互いの視線が絡み合い、惹かれ合うようにお互いの距離がゆっくりと縮まる。
もうこの瞬間、俺は何も考えられなかった。
倫理、道徳、常識…、もっと端的に言ったら、『血の交わり』だ。
それが、頭の片隅にすら浮かばないほど、姉さんが欲しかった…。
姉さんは、俺の瞳に自らの姿が映るのを確認出来るくらい近づくと、恥ずかしそうに瞳を閉じた。

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