『アホ姉inトイレット』
「えーん! 出ないよぉー!」
 裕二がリビングでテレビを見ていると、そんな叫びと共に、どたどたという足音が近づいてきた。慌てたような、たどたどしいような、足音。
 顔を上げなくても誰のものかは分かるので、裕二は画面に目を向けたまま、口だけで言った。
「何が?」
「便が……」
 その声にかなりげんなりした表情で見ると、そこには、予想通り泣き顔の姉が立っていた。
「えーと、何日それ言ってる? 姉さん」
「一週間か、多分、それ以上……。お腹苦しいよー!」
「あ、そう……」
 大声を上げる姉に対し、極限まで興味薄な相づちを打ってみせる裕二だった。
 本当に泣きそうになっている姉の顔を、改めて見てみる。姉の間宮鈴(すず)。近所の女子校に通っており、現在三学年で、裕二より二つ年上。たしかにその年齢らしく、体は出るところは出て、引き締まっているところは締まっている。
 背も高く、今着ているゆるいジャージの上からでも分かる豊満なバストに、ウェーブのかかった豊かなロングヘアは相応の色香を放っているわけで、ぱっと見だけならば弟の裕二からしてみてもどきっとしてしまう部分はある。実際、魅力的なルックスを持っている姉だった。
 が、どうしても裕二は、鈴と会話をするたびに残念な気持ちにならざるを得ないのだ。
 それは、今みたいにいらんことを大声で言ったりするのを聞くと、より実感されてくる。
 何というか、見た目はいいが、中身がやたら幼いというか、いろいろアレなのだ。あうーと嗚咽のような声を漏らす鈴を見て、どうしたものか、反応しかねる。黙るしかなかった。
 やりとりをすぐ横のキッチンで見ていた母が、のぞき込んでくる。
「鈴ちゃん、まだ出ないの?」
「そうだよぉー。トイレでがんばってきたんだけど、駄目……」
「そういえば鈴ちゃん、しょっちゅう便秘症になるわね。やっぱり私に似たのかしらねえ。私もしょっちゅうだもの」
「えーん! そんなところ似たくなかったよぉー! うわーん!」
 おっとりした母の言葉に声を張り上げる鈴だった。何ともバカらしい会話である。
 裕二はこの二人が会話をしても問題が解決しないことは知っていた。似たもの同士が話し合ってもブレイクスルーは生まれないのかもしれない。それに、なぜだか二人のやりとりを聞いていると頭が悪くなってきそうな気がしたので、手っ取り早く横やりを入れることにした。
「姉さん。一週間も出ないなら、そろそろ便通がくるんじゃない? おとなしく待ってれば……」
「でも、全然そんな気配ないんだもん」
「じゃあ、運動するとかさ、野菜食べるとか、いろいろやってみたら」
「全部やってるよお! それでもこないんだもん……」
「……。じゃあ、まあ、そのうち出るでしょ」
 付き合うのもめんどくさくなってきたので、いいところで切り上げて、自分の部屋に戻ろうとした。背後から鈴がしがみついてきた。
「あー! 見捨てないでぇー!」
「ちょ、ちょっと離れろよ!」
 耳元に鈴の唇が迫ってくるのに多少動揺しつつ、ふりほどいた。
「僕に何をしろと言うんだよ」
「お腹、何とかして……明日学校でお腹痛くなったりしたら困るよぉ」
 そういって、うううーと床に突っ伏した姉を見て思う。この女は常々、こういう問題、というかどうでもいいようなことを一人で解決できないのだ。はあとため息をつき、何とかしてやるか、と裕二はちょっと思った。
 何だかいつも姉に振り回されてばかりのような気がしたが……それもこのような姉を持って生まれた自分の使命かもしれない。
 だが、鈴が言うには今日中に何とかしたいらしいが、そんなことができるだろうか。ちょっと思いつかない。それで何となく言う。
「ネットで調べてみようか……」

 裕二は鈴をつれて自分の部屋に入った。そのままデスクにつき、PCで調べ始める。
 とは言っても別に真剣ではない。まあどうせただの便秘だし、民間療法だのを試しているうちにふっと便通が来るかもしれない、駄目だったらそれはそれで困ることはないんだし、というその程度の気分だった。
「裕二ぃ、どう?」
「一応解消法みたいなの、画面に出てるでしょ。姉さん、ちゃんと見てる?」
「えー。パソコンは字がちっちゃくて見づらいよお」
 裕二はため息をついた。鈴は画面を見ているようではあったが、本当に見ているだけのようだ。その大きな瞳をくりくりと動かしているものの、情報は頭脳に到達してはいないらしい。
 そりゃあ、こっちは手伝うつもりはあるが、鈴の方が真剣になってもらわなくては困る。これでは部屋に連れてきた意味があまりない。
 何となく反抗心のようなものが芽生えてきた裕二は、ちょっと何かを考え、その後画面をスクロールした。
 ある記述を探していたのだった。そしてすぐにそれを画面内に発見すると、鈴の方を見て、いたずらっぽく言った。
「姉さん、これ見てよ。いい解決法かもしれない」
「なあに?」
「浣腸だって」
 字を拡大して記述を示してみせる。それは、排便を促すための薬としての浣腸の記述だった。
当然、浣腸なので、肛門から注入して云々という文章が載っている。まじめな情報なのだろうが、ある種の生々しい場面が頭に浮かぶであろうことは間違いないものだった。
「これいいんじゃない? 薬局に行けば買えるし、今日中に解決するかもよ」
 裕二はおちょくるような口調で付け加えた。
 もちろん、からかっているのである。
 鈴も年頃の女の子であるからして、さぞかし恥ずかしがるだろう。「もう! やめてよ~」と言って顔を赤らめるくらいの反応をしてくれれば、こちらも溜飲が下がる。
 裕二にとっては仕返しのつもりだったし、それ以上の何ものでもなかったから、これくらいの反応しか期待していなかったのだった。
 しかし、鈴は大発見をしたというように目を輝かせ、両手をぱん、とあわせた。
「それだぁ!」
「え?」
「たしかに今日中に何とかなりそう! 裕二、ありがとぉ~。チャレンジしてみるね!」
 裕二は少し反応に困ってから言った。
「ああ……。え? マジで?」
「うん!」
 そう言うと鈴は喜々とした顔になって、部屋から出て行った。薬局にでも行くのかもしれない。
 一人残された裕二は、しばしぽかんとしてからつぶやく。
「……まあ、それでいいなら、いいけどさ……」

 その夜、裕二は部屋でぐっすりと眠っていた。
 昼の一件から鈴が便秘のことを言ってくることがなかったので、そのことは完全に忘れていた。鈴が部屋を出て行ったあのときから、どうにかなるだろうと思ったきりだった。
 そうして夢も見ず深い眠りに落ちているところに、急に電灯がついて叫び声が闖入してきたのだった。
「裕二い! ゆうじ~!」
 突然掛け布団にかかる重みに、裕二は不機嫌になりつつ目覚めた。
「……もう、何だよ……何?」
「起きてよー!」
「今起きたよ……っ!?」
 上半身をあげて明るくなった部屋を見回して、最後に姉の姿を見てから、裕二は平時以上に目を見開いていた。
 しばし言葉を失ってから、落ち着こうとするように息を吐いて言う。
「姉さん、何でパンツしかはいてないんだよ。ズボンはどうした?」
「ズボン? あぁ、トイレに置いてきちゃった……。それより裕二、助けてよぉ!」
「それよりって、そんな簡単に流していいことなのか……」
 裕二は布団をのけて、目をこすった。何となく姉を見つめてみる。
 鈴は薄いTシャツに、下は下着のみの格好だった。相変わらずのバストに、細くくびれた腰のあたりからは素肌が見える。すらりと伸びた陶器のような脚部は、明かりを反射してまばゆいほどだ。
「人を夜中に起こして、何なのさ」
 思わず目をそらしてしまってから言うと、鈴の方は裕二のそういった視線にはまったく無頓着にベッドの上で立ち上がった。泣きそうな声で言う。
「だからぁ、助けてよう」
「何をだよ。そもそもこんな時間に非常識じゃ……」
「だから、浣腸手伝って欲しいのぉー!」
「……は?」
 裕二はその言葉を吟味してから、もしかしてこれはまだ夢の中なのではないかとちょっと思ったりした。だが、自分がこんな夢を見ているのだとしたら、それはそれでいや過ぎる。
 結局現実と認めざるを得ないと決心してから、遠慮がちに聞くしかなかった。
「えっと、姉さん。浣腸手伝うって、俺が?」
「そう」
「っていうかなぜ?」
「だって。浣腸買ってきて準備したところまではよかったけど……いざやろうとしたら怖くてできないんだもん! 誰かにやってもらわないと無理だよお!」
「いや自分でやれよ! 子供じゃないんだからさ」
「やぁー! 怖いし、上手くできないし……」
 大分くだらない用件で起こされたのだと理解してくると、裕二はまた枕の位置をセットして横になろうとした。
「自分でできないなら、父さんか母さんにやってもらえばいいでしょ……僕もう寝るからさ」
「やだあ! 恥ずかしいもん」
「僕相手なら恥ずかしくないのかよ」
「裕二は、裕二だもん」
 意味不明だった。
 だが、姉が自分を頼ろうとしていることだけは分かる。眠ろうとするとしがみついてヘッドロックしてくるし、ぎゃあぎゃあわめいて騒がしいことこの上ないのだった。
 そして裕二は段々、自分がやらないといつまでも寝られないのだということに気づいてきた。明日はこっちだって学校がある。これ以上押し問答で時間を使っては、結局互いに不幸になるだけかもしれない。
 逡巡するだけした後、結局起き上がって鈴に言った。
「はあー……。わかったよ……手伝うよ……」
「ほんと! やったぁー! 裕二ありがと~」
 喜びをあらわにする鈴とは真逆の態度で、裕二は亡霊のような足取りでトイレに向かうことにしたのだった。

 部屋を出、二人でトイレに入ると、たしかに鈴の言ったとおりズボンが放置されていた。かなりぐしゃぐしゃになっており、しばらくトイレの中で浣腸相手に攻防していたことが想像できる。
 トイレに人二人という狭苦しい状態の中、鈴は窓枠に置いてあった浣腸に手を伸ばした。
「これ。やろうと思ったけど、怖くって」
 手のひらサイズの球体に、注入口のついた、ごくありきたりな浣腸だった。それを、ほとんどからだが密着している状態の裕二に手渡す。
 受け取った裕二は浣腸をまじまじと眺め、こんなもの相手に姉が小一時間戦いを繰り広げていたのかと想像して無性に悲しくなってくるのだった。
 そして自分の境遇である。何が悲しくて、深夜帯に姉に浣腸をしなければならないのか。こんなことするより絶対に有効な時間の使い方があるはず……などと思ってしまう。
 そうすると何となく、厭世観と共に腹の中に静かな怒りのようなものが現れてくるような気がした。
 ともかく、やるからには素早くしたほうがいい。姉の背を押して便器に向かわせた。
「ええーと……じゃあ、便座の上に四つん這いになる? それが多分、やりやすいから」
 どうにも言いにくかったが、しかし鈴はうんとうなずくと、便座を降ろし従順にそのうえに上った。パンツ姿のまま、裕二に尻を見せるような格好になった。
 裕二はそれを見て、まるで動物みたいだな、と思う。さすがにあまり普通の状況じゃないかもしれない、とも。
「うぅ~、裕二、お願い」
 鈴が首をひねって懇願の視線を送ってくる。それを見るとまた、嗜虐的な心が裕二の中に、点滅するように生まれては消えるのだった。
 女性経験のない裕二である。姉のものとはいえ、肢体をこうまざまざと見せつけられてしまうと、もはや興奮に似た感情がわき上がるのも、仕方がないと言えば仕方がなかった。
 裕二は鈴のパンツ、その白い薄布に手を伸ばした。
 つまんで、ゆっくりと降ろす。すると膜のようなパンツの下から、果物のような臀部が姿を現した。
「うぅ」
 鈴が少し声を漏らした。肌に触れた裕二の指が冷たかったからだろう、が……それもまた裕二を刺激した。
 ほどなくして、鈴の陰部もあらわになる。よくよく考えれば全部脱がす必要はないのだが、そんな思考は裕二にはなかったわけだった。鈴の髪色に似た陰毛やら、それが覆うひだも見えた。肛門ももちろん、とっくに見えている。
「うぅ~」
 鈴が耐えるような声を出す。口ではああいっていたが、ある程度は恥ずかしいようだ。でもそれは、裕二には逆効果だ。
「浣腸を……しないと……」
 そう口には出るが、手に持った浣腸を注入してはい終わり、という気分になどなれなかった。嗜虐的な心や静かな復讐心、性的感情などが混ざり合い、そんな選択肢はとっくに排除されてしまっていた。
 裕二はごくりとつばを飲んだ。そしてその手は本来関係のない部分――姉の秘部へとのび、そこで明確な摩擦が生まれた。
「はうっ!」
 鈴が飛び上がるようにして驚いた。当然である。思っても見なかった刺激が急に下腹部から伝わってきたのだ。しばらく固まったままぷるぷると震え、緊張したような吐息をして、裕二の方を見てきた。
「ゆ、ゆうじぃっ、何……」
 鈴はびっくりしたせいか頬を上気させていた。それが目に入ると、裕二はどくん、と脈打つような興奮を覚え、さらに手を動かしてしまうのだった。すりゅ、と手を鈴の股に差し込むと、ほどなくして指に陰核に触れた感覚が伝わった。
「ひゃや、や!」
 また大きな声をあげ、鈴は背を反らした。今度は先ほどとは比べものにならない刺激が脳髄を襲ってきたらしい。しばらく、あ、あ、と息が止まったような途切れた声を漏らし、便器の上で突っ伏すような格好をとった。
 裕二はそれを見ながら……じわ、と手が温かい何かで湿るのを感じた。
 それは、鈴の陰部から分泌されてくる、粘性を帯びた体液である。鈴の体が、刺激を感じ取り快感を得ている証拠だと言えた。裕二はそれをじっと見つめる。
 鈴が恥ずかしそうにこもった声を出した。
「あ、あの……ゆうじぃ? 浣腸、は……」
「姉さん」
「は、な、何……」
「浣腸よりいい方法があるんだ、試してみない?」
「浣腸より……?」
 股間を湿らせながら多少息を浅くしている姉を見て取って、裕二はさらに手を動かした。そのぬめりを陰部に塗り込むように動かして……同時に穴のある箇所を手探りし、見つけるとそこに指を添え始める。
「う、う、うっ」
「お通じがこないのは下半身に力が入ってるからじゃないかな……。そういう部分の力を抜いて、限界までリラックスするようにすれば、以外とお腹は働くかも」
「り、りらっくすぅ……?」
「そう、こんなふうに」
 言いながら、もはやしたたるほどに潤いを帯びている、その子宮に通じる開口部に指を滑り込ませた。
 ずちゅ、というこもった音がトイレの中に響いた。
「んあああぅ!」
「姉さん……リラックスできるでしょう」
「うぅわぅ、わぅ」
 裕二が指を動かし続けると、連動して鈴が言葉にならないうめきを吐き出す。それを聞くと、裕二の頭から遠慮する心も、理性も消えてなくなる。
 勢いや変化をつけて、膣内をひたすらにかき混ぜた。鈴が荒い息になりながらよだれを垂らす。裕二はそれを見ながら、姉の中の高まってくる何かを感じ取って、指を踊らせる。
 ぴちゃぴちゃ、と便器の水面に水分が落ちた。それはすぐ後の絶頂の予兆だった。
 んぐっ、と鈴がかすれた声を出すと同時に、裕二は勢いよく指を引き抜いた。するとまるで水道管が破裂したみたいに、鈴の股間は激しく潮を吹いた。
「い! く! い、あ、あい、いっちゃ、うぅうう!」
 どぼぼぼぼ、と便器に流れ込んでいく鈴の水分。客観的に見ても長い時間、彼女はそうして自身の中の頂の近くをふらふらしていた。
「あ、あいく、う、う、うぅ……っ、ふ、う」
 そうやって一度水分を出し尽くすと、力尽きたように便器にしなだれかかり、息を整えるのに必死になるのだった。
 その様子を、裕二も息を荒げてじっと見守っていた。同じく自分の中にたぎるものを感じながら。
「姉さん……いったのか」
 鈴はその言葉に顔を真っ赤にした。これ以上ないというほど恥ずかしそうに身じろぎし、くぐもった声を出す。
「う、うう。ううぅー。わ、わたし、裕二に。裕二にこんな、恥ずかしいところ……う、う」
「いったんだね。……気持ちよかったんだろ」
「そ、それは……その、うぅう。わ、わたし……だ、だって、こんなこと……」
 これは一段落と言えば一段落と言えた。
 裕二も精神的に多少落ち着いてきて、自分のやったことを自覚し始めて、やばいことをしたという気持ちも生まれていた。
 ここで鈴に怒られればちゃんと萎縮していたかもしれない。鈴が泣き出せば反省するような気持ちになったかもしれない。
 何せ、姉弟だ。これ以上、のちの禍根になるようなことはしたくないのは当然だ。
 しかし……そういう反応を予見して出した、裕二のなじるような声に対し、彼女はどっちの選択肢も選ばなかった。
 選べなかった、という方が正しいかもしれない。鈴は顔を桃のような色に染め上げていた。そして裕二の責めるみたいな声音を聞くたびに、ぞくぞくという背筋にはしる快感が聞こえてきそうな程に、体をよじって息を漏らした。
 ほとんど思考が停止しているかのような……絶頂の興奮がいまだ冷めやらないような様子だった。そして、尻も陰部をもこちらに突き出したままの格好は、さらなる快感を求めているようにも。
「姉さん」
「は、あ……な、何……」
「もっとリラックスしたそうだ」
「へ、え……?」
 裕二は姉の後ろ手を引いて、自分の下腹部をズボンの上から触らせた。
 鈴は気づくと、びく、と一度震えた。しかし……それ以上の抵抗は何も見せなかった。弟のなすがままになって、導かれた手で布の上から熱いものを感じ取り始める。手のひら、指先、手の甲。あらゆる箇所で、形を確かめるように、隆起した硬いそれを触るのだった。
 裕二は鈴の手を自由にできた。いや、むしろ……この姉は、時折自分から手を動かして触っているのではないだろうか、と思うときがあった。
 鈴ははあはあと息を継ぎ、そしてまたううーとうなっては、破裂しそうなほどに顔を真っ赤にしてゆく。そしてその陰部から、再度体液がしたたり始めていた。
 それを見ると、裕二は辛抱たまらないという気分になった。
「一番、リラックスできることしようか」
「え……」
 そのままズボンも下着も脱ぐと、姉の手を解放し、今度は目の前の臀部を両手で引き寄せた。間髪を入れず、裕二は裸になった陰茎を、湿った膣口に触れさせる。
「あう……あ、ゆ、ゆうじぃ」
「姉さんも、したいんじゃないかい」
「そ……そこは……。それだけは、だめ、なのお……」
 ぽたっ。とろみのある液体が、膣から出て陰茎を伝い、便器の水面に落ちた。
「姉さん。あまり説得力ないよ」
 裕二はそれだけ言うと構わずに、鈴の腰を掴む手に力を込めた。陰茎の先を膣口に少しだけ入り込ませると、ワンテンポおいてから思いきり互いの下腹部の距離をゼロにした。
 ずりゅっという鈍い音と共に、陰茎全体が鈴の内部に入り込んだ。
「あぎゅうぅっ」
 鈴の口から何かの感情が強烈にこもったあえぎが飛び出す。先ほどまでの言葉はどこかに消えて行き、今はこの感情が頭を支配したようだった。
 裕二は激しく腰を動かした。鈴に落ち着かせる暇を与えなかった。
「姉さん、気持ちいいかい? これ……すごいよ」
「あ、あ、あ、く、ぐ」
「リラックス……、できてるかな」
「あ、はあ……、で、きて、よお」
「何?」
「で……できてる、からあ……も、もう……」
 鈴は少し体を動かそうとする。放そうというのかもしれないが、しかし裕二はそれを抑えた。
 ずちゅ、ずちゅ、ずちゅと継続して接合を続けた。
「まだリラックスできて、ないでしょ? 姉さん、いってないじゃないか」
「はあっ、はあっ、はあぅ、だ、だめ……いった、ら、もう、おかしく、なる……」
「だいじょうぶだよ、ほら、……力、抜いて」
「やあ、や、あめ、も、い、いく……」
 腰を動かす感覚を徐々に狭めていくと、それに従って鈴はのけぞり、声はだらしなくなっていく。もうすぐそこまできている、と直感した裕二は、いっそう深くに陰茎をねじ込み、かき回した。
 鈴はびくびくとけいれんのような動きを見せた。
「ぐ、ふ、う、だめだって、い……いっくから、う……うっ!」
 大きい声が出たそのとき、裕二は姉の膣の圧力が一気に高まるのを感じた。姉さん駆け上ってるな、と思った直後、自分の陰茎からも白濁液が勢いよく出るのを自覚。
 そしてその瞬間、裕二の射精したものの何倍もの分量の液体を、鈴の股間がとめどなく垂れ流した。
「あ! あ! ああぅ! いく、い、うあああぁぅ!」
 だらだらと体液を流しながら、コントロールを失った下半身をけいれんさせ、鈴は果てた。膝が力をなくし、両足がだらしなく開かれる。裕二の姉は座り込み、便器を抱きかかえるような格好になっていた。
「あ、ふ、ふぅ、う……あぁ……」
「姉さん……」
 静寂が戻ってくる中で、こぽ、という音が鈴の下半身から聞こえた。裕二の注ぎ込んだ精液が、陰部から漏れ出てくる音だった。
「……」
 ここでようやっと裕二は冷静になってきた。正気を取り戻してきたと表現してもいい。
 姉の痴態と自分がやったことについて、客観的な認識を取り戻してきたのだ。
 ……要するに、姉に中出し決め込んでしまったという重大な事実に、遅まきながら理解が及んできたのだった。
 裕二は思った。
 これもしかして、やばい?
 いやもしかしなくてもやばいのだが、とにかく危機感が今になって出現してきた。
「あ、あの、姉さん……」
 もしかすれば、このことが大問題になって、親に勘当されるところまで行くんじゃないかと恐怖しつつ、姉に手を伸ばす。
 するとそこで、裕二としては予期しなかった音が、トイレを満たした。
 ぐぎゅるるる~という、誰かのお腹から鳴ってくる、地の底から響くような音である。空腹の時のもの……というよりは、便が出るときのような、腸が動いている感じの音のように思える。
 見ると、鈴がお腹を押さえていた。
「ああっ! ゆ、裕二!」
「姉さん? どうしたの……」
「お、お腹が動いてる! 便が出そう!」
「え? ……マジで?」
 目をうたがうように姉の腹を見るが、どうやらそこが本当にぎゅるぎゅる言っている。
「ああ、凄い、きてるのが分かるよお。も、もう出るかも!」
「嘘だろ……?」
「ほんとだよ! ほら、もう出るから、一回トイレから出てよお!」
 言葉の直後に鈴に押し出され、裕二は廊下に一人になる。いまだ信じがたい気持ちでトイレのドアを眺めていると、中から「で、出た!」とか「まだ出る!」とか言う歓喜の声が響いてきた。
 裕二は何とも言えない気分に襲われながら、まさか本当にさっきのが効果があったのか、と思い、またすぐに首を振った。
 そして、トイレの方はしばらく時間がかかりそうだと見て取ると、いったん自分の部屋に戻った。で、そのまま、様々な思考に捕らわれているうちに、再来してきた眠気に襲われ、朝までぐっすりと睡眠してしまったのだった。

 しかし翌日の朝。
 布団に重みを感じた裕二は、苦しげに目をさます。
「う~ん……なんだよ、重……って、わ、姉さん」
「……」
 起きようとすると、掛け布団の上で、鈴が自分にまたがるようにして座っていた。起きがけのような寝間着姿で、裕二の顔を、じぃ~っと見つめている。
 裕二はちょっと考えてから、やっぱり昨日のこと怒ってるんだ、と思い当たった。そういえば、姉の視線は、にらんでいるように見えなくもない。
 となると……謝るしかない。
 裕二の頭は瞬時に答えをはじき出した。あんなことをしてしまったわけだ。過ぎたものは取り戻せないし、とにかく謝罪しか今できる方法はない。
「あのう、姉さん、その。き、昨日のことは……」
 ぴく、と鈴が身じろぎした。裕二はやばい! 殴られるか? と身を固くした。
「裕二」
「はい」
「昨日はありがとぉ」
「……はあ?」
 思わず間抜けな声が出る。
「裕二のおかげで便秘が治ったから! 昨日の夜、凄い快便だったんだよぉ~」
「い、いや、別に……」
 裕二は、怒ってないのかよ、と一種の驚愕に似た気持ちで姉の言葉を聞いていた。この女は予想以上の大物かもしれない、などと思った。
 そうしていると、鈴は喜々とした表情になって言ったのだった。
「だから、裕二ぃ」
「何?」
「今日も、お腹の調子よくしてね!」
 裕二は黙り込んだ。かなり考え込んでから言った。
「それって、昨日の夜と同じことしろってこと?」
「そうだけど?」
「……。そうだけどじゃないだろ! あんなことまたできるかよ! だ、だいたい便秘が治ったんならもうだいじょうぶだろ」
「えーっ、駄目だよう。また便秘になるかもしれないし、お腹の調整は毎日必要だもん」
 それは有無を言わさぬ口調だった。というか、この姉の中では既に弟の行動は決定済みであるみたいだった。
 鈴は笑顔のままに、ほんの一瞬だけ迷ってから、その手でがっしと掴んできた。裕二の股間を。
「だから、これから毎日、よろしくね!」
 裕二は、股ぐらを握りしめてくる姉を見ながら、早めにこの家を出た方がいいかもしれない、とか思った。
(終)