その中でわが国の20年間の推移を見ると、女性労働力率は上昇したが、出生率は低下している。
図だけでは双方の因果関係は、はっきりしないが、常識的に考えて、女性の労働力率が上がるにつれて出生率を上げていくためには、公的な制度、企業の支援、家庭における夫の役割の見直しなど、さまざまな政策・努力が必要であり、それを多くの先進諸国は成し遂げたということであろう。
この20年間世界の先進諸国は、女性労働と子育てを両立させるための政策を行ってきた。それに反してわが国はそのような政策をとってこなかった、ということだ。
少子化の進展は、年金等の社会保障政策の根幹に触れる問題で、何としても食い止めていく必要がある。そこで、今後わが国に必要な政策は、女性パワーの活用だけでなく、出生率を引き上げていくこともあわせ目標にする必要がある。
配偶者控除を廃止し
得た財源を子育てに向ける
このような先進諸国の事実を見る限り、「専業主婦を優遇する配偶者控除という制度が少子化対策にも役に立っている」というわが国の議論は、今後のわが国の目指すべき方向として、いびつなものであるといえよう。
安倍政権が、本気で男女共同参画社会を目指し、女性パワーの活用でわが国の経済成長を底上げするとともに、少子化に少しでも歯止めをかけようとするなら、この税制の縮小・廃止に向けて議論を開始すべきだ。
筆者はこの制度を、「歳入側にもあるばらまき政策」の代表としてとりあげて問題視してきた(第34回参照)。
表向きの理由はともかく、配偶者控除存続の最大の理由は、「多くの国民の税負担の増加につながるような税制改革は避けたい」ということであろう。民主党政権が10年度改正で議論しながらも見送ったのも、「その直後に行われる統一地方選挙に悪影響がある」というようなものであった。