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森信茂樹の目覚めよ!納税者
【第42回】 2013年1月17日
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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

安倍政権が女性の社会進出を支援するなら
配偶者控除を廃止すべきではないか

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 その最大の理由は、家事や育児を一手に引き受けることによる「内助の功」への評価である。「夫のみが所得を稼得した場合でも、妻は家庭内の勤めを果たすことにより夫の所得の稼得に大きく貢献しており、これに配慮すべきである」というわが国の伝統的な考え方である。

 加えて最近では、家庭で一生懸命子育てすることには大きな社会的な意義がある、専業主婦の優遇は少子化対策につながる、という論点も加わり、存続論を補強してきた。

多くの先進国では女性の
労働力率が高いほど出生率も高い

 図表は、女性の労働力率(女性がどのくらい働いているかを示す指標)と出生率との関係をグラフにしたものである。縦軸にOECD諸国の合計特殊出生率(TFR)を、横軸に女性の労働力率をとって、双方の関係を図にしたのだが、極めて興味深いことが分かる。

 1980年には、双方は「負の相関関係」にある、つまり、女性の労働力率が高いほど出生率は低くなっている。女性が働く比率が高い国は出生率が低い、これは常識的で受け入れやすい。

 しかし、20年後の2000年を見ると、女性の労働力率と出生率は「正の相関関係」になる。つまり、OECD諸国は、20年間で、「女性の労働力率が高いほど出生率も高い」、あるいは「女性の労働力率が高く出生率も高い」ということになったのである。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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