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作品解題:「甦る友情」

【物語の構成】

・着想:本作の核にある萌えイメージは「洗脳を免れた、または洗脳を解かれた女性改造人間が、何らかの止むに止まれぬ事情により、葛藤し、強い抵抗を覚えつつも、自らの意志で再び洗脳を受ける」というシーンです。これをどうやってSSにするのかと考えていたら、以前から気にしていたBeeF様の「設定一式おゆずりします(笑)」がひらめきました。ソルジャードールは死ぬ直前脳改造が解けるらしい。ならばそのまま死なせずにいったん紗希と行動を共にさせて、その後で「止むに止まれぬ事情」が生じればまさに上記のシチュになるだろうと思ったのです。2ちゃんに書き込んだのは多分このくらいの段階だったと思います。その後色々と肉付けするのですが、思わぬところで悩み、また思わぬ展開がいくつか生まれました。

・洗脳解除:まず、「脳改造が解けるが死なずに済む」をどう実現するかというところで、実はかなり悩みました。そんな便利な方法があれば、紗希ちゃんがその方法を使わないわけはないからです(むしろ使えるのに使わないとなると紗希ちゃんはひどいやつだということになります〔後記:ダイレン様の作品ではソルジャードールになった由美ちゃん(!)が「殺さずに(脳)改造を解く」という「RHR」という技を繰り出すのですが、紗希はそれを認めずにソルジャードールたちを殺すのにこだわるため、まさにその「ひどいやつ」ぶりを発揮する展開になりました〕)。さんざん悩んだ結果はご覧の通りで、サキが自分と相手を串刺しにするという「痛そうな」好シーンができあがりました。その他に、ソルジャードールたちの「糸が外れる」という設定も、このとき悩んだ結果が一部反映しています。つまり、碧以降「洗脳解除」という事態そのものが生じる余地がなくなる、という設定にしておけば、以降正義側が味をしめて、どんどん仲間の洗脳を解いていくような展開(つまり、その選択をしないと不自然になるような展開)になるのを防げるかな、と思ってのことです。

・「糸が切れる」,etc作中、「糸がつながる」「糸が切れる」「糸が外れる」「糸がもつれる」など、洗脳によるソルジャードールたちの支配を表現する比喩表現が「糸」によって表されます。言うまでもなくこれは、「ヘルマリオン」が「マリオネット」にちなんだ悪の組織で、BeeF様自身がソルジャー「ドール」や「プペ」ロイド〔プペはフランス語で「人形」とのこと〕など、「人形」にちなんだ比喩を駆使しているのに倣ったものです。なお、最後に碧たちは「糸が外れる」という状態になりますが、HP公開後、SS作家のEnne様から感想を頂いた際、「糸が切れたらマリオンではないのでは」と指摘され、2ちゃん投下時にはその部分の説明(…というか言い訳)を補足しました。

・姉妹愛:5章「改造装置」末尾で碧ちゃんに言わせているとおり、本作後半の展開は「紗耶と紗希の姉妹愛の物語を碧と茜が再演する」という構造になっています。実はこれは最初から意図したものではなくて、上記のシチュを肉付けする中で自然にそこに収斂していったものです――要するに、脳改造を受けて人間の心を失おうというのですから、よほどの「止むに止まれぬ事情」でもないと成り立たないでしょう。まあ「肉親の命を救うための自己犠牲」が定番です。しかも「守るべき、か弱き存在」となると、母親ならば、PRIME様の母親改造とか、アンチショッカー同盟話の外伝3のように、「息子か娘」でしょうが、女子高生ならば「弟か妹」になるでしょう。そして、弟と妹のいずれかと言われれば、ビジュアル的には妹(母親ならば娘)の方かなあ、というところに落ち着きます。そうやって書き進める中で、ありゃ、これは設定だけじゃなくてあらすじも似てしまうではないか、と気づき、それならば開き直って自覚的に「再演」させよう、ということで「神様が書いたシナリオをつたない手でリライト…」というあの叙述が出てきたのでした。…なお、野暮を承知で(ここはそういう場なので)この「神様」の一節を解説しておくと、言うまでもなくここは、「海底地震」に匹敵するアクシデントを人工的に起こそうとして恐れおののいている碧と、「神職人」であるBeeF様の仕事を自分なんかがもらっちゃっていいいのかなあ、という著者maledictの恐れとおののきとを、暗に重ね合わせているわけです。

・自発的脳改造:ただし「自発的肉体改造」と「自発的脳改造」はちょっと違います。つまり、「自己犠牲として自らを異形の姿に改造させる」というBeeF様のオリジナルにはなかった特有の困難が、「自己犠牲として自らに悪の心を植え付けさせる」という本編の展開には生じてきます。たしか、『ジョジョ』の第一部、ディオによって人々が吸血鬼化させられつつある街で、母親だか祖母だかが「私は吸血鬼になってもいいからこの子だけは助けて下さい」みたいなことを言って、その願いは聞き届けられるものの、吸血鬼化したとたんゲヒヒヒヒヒとかいって(笑い声は忘れましたが)息子だか孫だかを襲い始めてしまう、というシーンがありました。まあ、普通にいけば「自発的脳改造」なるものはそういうマッチポンプを引き起こすわけで、そうならないためにはどうしたらいいだろう、とあれこれ考えざるを得なくなりました。後半のむやみに複雑な展開は、その辻褄を合わせるための大がかりな仕掛けです。(仕掛けの詳細については下記でも触れます)

 

【小道具諸々】

・基本方針:BeeF様というと「エロくて、鬼畜だけど、品があって知的」というイメージが自分にはあります。なので、少なくともあまり品を落とさないように頑張ろう、というのが基本方針でした。

・ラリックの「蜻蛉の精」:主人公を何の怪人にするのがいいか。設定資料によれば、ミツバチ、クモ、コウモリ、サソリ、バラ、モルフォ蝶、クラゲ、寄生バチ、がすでに既出です。新キャラを出すならばこのモチーフは使えません。(自分としては「そのほかにも多数登場予定」の中にいるであろう改造人間をオリジナルで出すというのはほとんど既定事項だったのですが、既出怪人で話を作ると思っていた人が多かったようです。そちらが順当な選択だったでしょうか?)空を飛ぶシーンが入るし、やはりモチーフは昆虫がいいだろうということになりました。例えば仮面ライダーをイメージしてバッタとか、タックルのイメージでテントウムシとか、色々悩む中、以前来たアールヌーヴォー展で話題になっていた「蜻蛉の精」がいいんじゃないかとふと思いつきました。まさに女怪人というデザインで、この怪人が活躍する場面を一度見てみたいななどと以前から思っていたのですが、今回検討してみると、顔が未改造で、頭の両脇に複眼、というのが、ヘルマリオン怪人の基本設定によくマッチしており、これだ、と決めました。ちなみに、2ちゃんにも貼りましたが、画像は例えば下記のリンク先です。

http://lartnouveau.com/artistes/lalique/photos/lalib.htm

http://www.cnn.com/interactive/style/0007/art.nouveau/content11.html

http://picasaweb.google.com/lh/photo/Xc_RAx4_cFyEzXVpCDsXdQ

このブローチの怪人に手足をはやしたのが碧ちゃんということです。(ひょっとして、すでに「蜻蛉の精」の怪人化というアイデアを形にしている方はいるかもしれません。もしいたら教えて頂けると純粋にうれしいです。見てみたいので)

・脳改造装置:クレイブレインというのは、薄型の、並列分散処理型コンピュータ、「ニューラルネット」とか「コネクショニストマシン」とか言われているものを想定しています。ただ、脳はもともと天然の「ニューラルネット」なので、「ニューラルネット」という言葉を使うとかえって紛らわしいかと思い「超並列コンピュータ」という言い方をさせました。自分も厳密な知識があるわけではないのですが、従来のコンピュータとはかなり違うやり方、何やら動物に芸でも仕込むようなやり方で、大量の情報を処理し学習させることができるマシン、というイメージで理解しています(元ネタは、チャーチランド『認知哲学』、信原幸弘『心の現代哲学』あたりです)。これを脳に組み込んだ上で、身体に無数の糸をつなぎ神経の興奮パターンを学習させる、という設定にすると、おお、操り人形の糸みたいな装置になるではないか!…と、デザインが固まりました。ちなみに最近の改造ものの定番アイテムは「ナノマシン」で、細胞レベルの変質とか、魔法のような肉体改造をこれにやらせるわけですが、このくらいの仕組みならば「ナノ」よりももっと上のスケールでも作れるのではないか、と勝手に想像し、あえて「マイクロマシン」にしました。

・「邪念実体化システム」:設定資料には、紗希が重度のミステリマニアで、それを利用して事件を解決する、というくだりがありました。せっかくの設定を素通りしたくないが、ミステリとかあんまり知らないし、どうしよう、と悩みました。悩みながら思ったのは、多分このエピソードまで話が進む頃には、脚本家も「ミステリマニア」の設定を話に絡めるのに疲れて、とってつけたような設定を盛り込んでいるに違いない、ということでした。ならば、と開き直り、「邪念実体化システム」という設定を…「とってつけた」という次第です。〔後記:この後、作品のこの部分は、それぞれ守備範囲の違うミステリマニアの女性を改造した「邪念四怪女」という設定でさらに補強されることになります。まあ、設定立てるだけ立てて、一度も活躍させてはいないんですが(2008/6/4現在)〕

・『ドグラ・マグラ』:邪念のもとになる作品を具体的に何にするかについては、当初から「今回ばかりは途方に暮れている紗希を、現代芸術に詳しい碧が、映画の知識で助ける」という設定だけはできていました。あとは、自分が小説版と映画版を両方知っていて、双方で色々と違っている作品というと、とりあえず『ドグラ・マグラ』くらいしか思いつかなかった、という、消去法的理由で決定しました。でも結局、作品の雰囲気がBeeF様のダークで倒錯的な世界観と合っている気がしたし、キイワードの「人形」をアイテムにもってこられたので、よかったと思います。実は、それに加えて、《脳改造が解けるシーンから始まり、再び脳改造を受ける》という本作全体の流れが、《狂人が正気に戻り、再び狂気に帰っていく》、という『ドグラ・マグラ』の筋立てと近いかもしれない、と気づき、冒頭と結末に、「ブゥゥーーーーーン」というサキの羽音をもってこようか、というアイデアも浮かんだのです。ただ、碧は単に「元に戻る」のではないわけですし、またあの末尾の一言を書き終えてしまっていたので、それに何かを付け足すのは興ざめだなと思い、そのアイデアは放棄した次第です。

・アップデート:「アップデート」のシーンは、要するに、百合シーンを入れようという目的なのですが、ライダーや戦隊で言うと、「クリスマス商戦を目指した新フォーム登場」に当たる、パワーアップ・エピソードのつもりでもあります(おもちゃも売るんでしょうかね…それって何のオモチャ屋かと(w )。それだけでなく、紗希の紗耶へ意識とか、紗希がなぜ強いのかについての考証を言わせるという大事な役割もあります。このシーンはとても楽しく書けました。例によってあんまりエロくないのは勘弁して下さい。ちなみに、友人が「ビスタを導入したはいいが、起動するたびにアップデートに30分くらいかかり、全然使えない」と困っていた話を聞き、どさくさ紛れに某マイクロソフトへの悪口も書いておきました。

・天道くん語法:先ほど言った、「自ら脳改造を受けながらも、愛する者を悪の魔手から救う」、というアクロバットをもっともらしく見せるための決め手となる小道具が「天道くん語法」です。着想は、ダニエル・デネット『志向姿勢の哲学』(The Intentional Stance)のベルベットモンキーについての議論あたりです(ちなみに、この本はとてもいい本なのですが、訳文にかなり問題があります。英語があまり得意でなくとも(僕もそうです)、原書を横に置いて読み、意味がよく分からなかったら原書の該当箇所を見る、という読み方をおすすめします)。もちろん、この程度の小細工で本当に思考が暗号化されるのかどうかは正直怪しいですが、無改造の(w)人間でも、志向的態度が複雑になりすぎると何を言っているのかわからなくなりかける、という実例は、デネットの次の文章を読むと分かるかと思います(訳文に文句を言いましたが、邦訳のこの訳文は一応正確だと思います。ただ、訳語の統一でちょっと直しました)――「私たち人間はどのレベルまで上りつめることができるのだろうか。理論的には無限ということは疑いがないのだが、しかし実際には、どんな理想的な環境でも、せいぜい5階か6階までしかついていけないということを私に説明してほしいとあなたが願っていることを私が信じることができるとあなたが認識できるということを私が言っているつもりかどうかあなたが理解していると確信するのはあなたにとってどれほど難しいか私が気づいているのかどうかあなたが心配しているのではないかと私は疑っている」――ね?また、「…とおばあちゃんは思っていると、天道くんは思っていると思う」というフォーマットも最初からあったわけではないのですが、読者や著者の頭も混乱してしまうのもどうかと思い、あれこれ考えているうちにこれに収まりました。オリジナルが発表された2004年はまだカブトなんかやってなかったよなあ(剣でしたか?)と突っ込まれたら痛いですが、見逃して下さい。なお、発表する板が板なので、あえて『仮面ライダーカブト』の詳しい解説は入れませんでした。

・ヘルマリオン基地:「無改造の妹が(計画通りに行けば)、高い確率でうまく逃げおおせるはず」、という筋書きは、正直かなり無理があり、最後まで苦心しました。脳改造前の姉の策略で、脳改造後の姉が、妹の脱出に有利な「失策」を立て続けに犯す、という部分をうまく書けているかどうかが一番肝心なのですが、それだけでもまだ無理があるので、「システムダウンが起きることをまるで想定していないので、いざ停電が起きるともろい(さらに言うと、設計者に変な美学的趣味と驕りがある)」とか「強力で簡便な武器が手に入る」とか、「前回は紗耶がいたから」とか「動力炉も爆破」とか、色々と補足説明を入れて足りない説得力を補おうとしました。スレにも書きましたが、結果的にBeeF様のもとの設定を歪めてしまった可能性もあります。実を言えば、これに加えて「予備調整を受けた人間は細胞内にハイパーグリコゲンと呼ばれる物質が蓄積し、一時的に超人的な力が得られる」…といったような設定もつけようかどうか迷ったのですが、「茜は未改造に」という碧の願いにやや曇りが出てしまうし、そもそも改造手術の過程で、素体がそんな危なっかしい状態になる装置だったら、さすがにヘルマリオンもその状態で脱出しないようにもっと警戒するのではないか、と思い、そのアイデアはやめにしました。

・掃除:掃除用具入れ云々のくだりが出てきますが、基地の掃除はプペロイドあたりにやらせるのが自然な流れとはいえ、もとが女子高生なので、掃除当番を決めて交替で掃除しているのも楽しそうだと思い、「掃除当番のソルジャードール」という一句を入れました。

・洗脳と愚かさ:別の作品でも試みている思考実験的な隠れテーマが本作でもちょっとだけ姿を見せています。つまり「理性と感情」あるいは「合理性と感情」というテツガク的な問題です。本作の場合、洗脳前の碧が洗脳後の未来の自分を、そして洗脳後の彼女がやはり洗脳前のかつての自分を、互いに「愚か」と呼んで軽蔑させている部分に、この問題の複雑さが垣間見えるように書いてみました。…この話は「課長シリーズ」等の解題でもう少し詳しく話せたらと思っていますが、そもそも自分でもまだうまくまとめられているわけではありません。ただ一応、そういう関心が著者にあるのだということだけ書いておきます。

・結末:何度かスレで書いたことですが、自分は「自分自身の心が強制的に異形化されてしまう」ことに対する強い恐怖と、それと裏腹の憧れ(萌え)があり(「去勢恐怖/去勢願望」に近いんだろうと思います)、それゆえ「肉体改造」よりは「精神改造」にウェイトがかかった作品が多いです(「肉体の不可逆的変容」も不可欠のファクターではあるのですが、そっちの細部はけっこうどうでもよかったりする方です)。また、そういう事情なので自分的には「異形化されてしまった心」というのは全くの未知の異世界、容易に想像や感情移入を許さない領域であって欲しいという気持ちがあります。なので、脳改造後の心理描写というのは、特に初期の「課長シリーズ」などでは極力避けていました。脳改造後の一人称もNG、脳改造されたおにゃの子たちが改造前と大差ない日常生活を繰り広げるなんていうのももちろんNGです(あ、でも上記の「掃除当番」はそれっぽいかな?)。ただ、その後、「書かない」だけでは物足りない気持ちもあり、自分なりに「脳改造後の心理生活」を形にしてみようという冒険も試みてきました。本作では、「糸がつながった」状態にある碧の内面と、「糸が外れた」と呼ばれる状態にある碧、二つの「異質な思考」の一人称描写にチャレンジしています。前者は「極度に視野狭窄なのに本人はそれに気付かず、やたら傲慢」という感じで、それをもっともらしく読ませるために書き方をあれこれ工夫する作業自体は面白かったのですが、状態としてあんまりそそられる心理ではありません。従順なだけの「操り」では、自分は少し物足りないみたいです。後者の心理は、「人間の善悪」も「ヘルマリオンの操り」も共に乗り越えた「善悪の彼岸」に行っちゃった状態、というイメージです。前者の「操られている」状態が、心を「狭い」方へと歪ませられているのに対し、こちらは心が「広い」「高い」方へと変容し、そのせいで、人間の想像を絶する、感情移入を許さない状態になった、というイメージです。「ある家族旅行」や「女狐先生」のラストもそんな感じでしたが、では、そんなものすごい境地を本当に描けているのか、というと…言うまでもなく、まったく自信はありません。

 

【キャラクター】

・碧:自分の描くヒロインは、特に一人称の場合、似たようなキャラが多いです。例えば脳改造前のOLさんと風俗嬢、チスイコウモリ女のユミコとヒトミ、家族旅行の中学生、女狐先生等、年齢や立場でちょっとずつ違いは出しますが、皆、異常な状況下で同じように希望を捨てずに知恵を働かせ、一条の光を見いだそうと最後の最後まで頑張り、しかしたいていは報われずに終わる、という役回りです(今回は…結局は報われたんでしょうか?)。自分なりの一つの理想の人物像なのかな、という気もするのですが、実はそんなんではなくて、要するに、「おにゃのこが心底頑張った上で、万事窮して絶望する姿に萌える」というかなり鬼畜な性分の表れなだけなのかもしれません。

・紗希:本編ではあくまで脇役で、キャラ的にも感情移入しにくいライバル役のような役回りです。孤独な戦いを続けてきたせいか、並はずれた判断力をもつものの、へっぽこ探偵以外の人物にはやや心を閉ざし気味、という雰囲気で動かしました。〔後記:このイメージはダイレン様版の紗希に、ちょっと極端な形で引き継いでもらったように勝手に思っています〕

・茜:改造前はひたすら賢くて姉思いの可愛い妹。実際に妹がいないからこんな都合のいいキャラを描けるんだろうな、などと思います。改造後は小悪魔キャラで、操り人形ではなく、自らの意志で悪を選択し確信して動くようになった完成品という位置づけです。家族旅行の話の弟や、女狐先生に出てくる教え子とも似ています。

・紗耶:オリジナルでは脳改造後の姿が描かれていなかったのですが、おもいっきり悪賢い悪の戦士として成熟したことにしました。碧をだましてあざ笑うシーンなど、書いていてかなり興奮しました。〔なお、紗耶の外道ぶりは次作のパピオマリオンの話でさらに暴走します〕

・骸教授:上記の理由で紗耶に悪いことを言わせるのが楽しくて、つい出番を食われてしまいました。2ちゃんのスレに骸教授本人が仕事が欲しいと言いに来ていたので、ちょっと心苦しくあります。〔なお、その後蟻蜂フリーク様が骸教授を大活躍させて下さっています。肩の荷がおりた気分です(w 〕

・へっぽこ探偵(獅子堂大五郎):本作では紗希の話題と、探偵が出した電子メールが登場するのみです。スレでちょっと書いたことですが、色々あった紗希が〔ちなみに、次作「砕かれた思い出」で、そりゃ大変な目に遭います(T・T)〕唯一心を許せる相手、という設定にしました。それゆえ、最終回に向けてどういう運命をたどるのか気になる人物で、その部分の展開が自分なりに固まるまでは、あまり詳しい設定をしないようにしようと思っています。例えば、真性のへっぽこなのか、そこそこ能力はあるのだがツメが甘い(そして、それは多分優しすぎるために)のか、というところも現段階ではオープンなままです。〔その後、シリーズもののキャラによくあるように、その辺はいい加減にしておいて、筋の流れでどっちでもいいようなままで動かす、というのもアリかな、と思い始めています。〕

・ネーミング:ヒロインのネーミングは、結局皮膚の色で決めました。当初はトンボだから「茜」にしていたのですが、赤くないのでやめにして、そっちは妹の名前に回しました。発想の一つのネタは、Dr.スランプの「葵・茜姉妹」です。茜は妹の名前だよなあ、と(w。となると、姉はアオ…いや、色からするとミドリか、と決まりました(書いた後になって、ミドリさんは千兵衛さんの奥さんじゃないか、と気づきました。鳥山氏もいいかげんなネーミングだったんですね)。もっとも、そうなると妹の方をアカネトンボの改造人間にでもしないといけないような気もするのですが、結局、病気で余命いくばくもないということで、トンボと近縁の昆虫でもあるカゲロウモチーフになりました。怪人の名は、「ドラゴンフライ」というのがなんだかいかめしい感じでイメージに合わないので、「トンボ類」の名だというodonateにしました(なお、その後、この点に関して、英語に詳しそうな9スレ目529様より、耳慣れない表現だとの指摘を受けました。きれいな響きなのでいいのではないかともおっしゃってくれたので、結局このままにしましたが)。妹を「メイフライ」とか「デイフライ」ではなくいかにも儚そうな「エフェメラ」にしたので、それと釣り合いをとるという意味もありました。「メイフライ」は「カゲロウ」、「エフェメラ」は「カゲロウ類」という違いがあると辞書に載っていたので。〔もっとも、上記9スレ目529様によるとこの区別もそんなに厳密ではないそうですが。〕名字は当初いい加減につけていたのですが、アップ直前になり、BeeF様の「名前は人形にちなんだ」という一句を見落としていたことに気づき、あわてて調べたもののもとの出典がよくわからず、結局映画版『ドグラ・マグラ』の人形師さんの名(ホリヒロシ)を調べてそれをもとにした名字にしました〔後記:なお、最近の指摘では、どうも、キャラの姓名自体は人形にちなんでいるわけではないのではないか、ということです〕。「堀碧」ではなく「堀江碧」にしたのは、前者だと名前だかなんだかわからないかな、と変な気をつかったためです。その他、一瞬しか出てこないキャラについては、「春子」(マリオンラーヴァに食われる親友)、「奈津子」(母)、「昭夫」(父)、と、あえていい加減な名を当てました(順に「春」「夏」「秋」です。なおその後一部改訂時、名無しさんだった茜の担当看護士さんに「冬美」という名をつけました)。言っておくと自分はネーミングが大の苦手で、主人公が名無しになるか、さもなければ最後の三人みたいなとってつけたような名前にすることの方が多いのです。ただ、オリジナル設定にいかにも洒落た名前が多い以上、適当な名前にするわけにもいかないかなあ、ということで、無い知恵を絞ったのです。ちなみに、自分は、読みにくい名前の初出に、例えば「碧(みどり)」のように表記するのがどうも違和感があって、読みにくい名については、初出前後に一度仮名で名を呼ばせる、という細工をしました。

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