母子6
5000万円を騙し取られたYさん旦那は、会社をクビになりながらも、何とか家賃支払いを頑張っているように思えた。期日が遅れる度に、必ず連絡を入れて来た。その姿勢を小生は評価していた。
話変わるが、小生に限らず、大家業にとって滞納は頭の痛い問題。その滞納する店子というのは、大体決まっている。勿論それは店子自体の雇用・経済状況が安定しているかどうかにも依存するので、仕方ない面もある。だが雇用状況と同等に、いや雇用状況そのものにも関係するものとして、やはりその人自体の人間性が問題となる。
つまるところ、キチンと連絡が取れるか、ウソをつかないか、という点。大体の滞納常習者は、支払がないと判明する時点で連絡が取れない。しばらく経ってから連絡が取れたとして、そこで来る返答も大体パターンが決まっている。
「すいません、風邪ひいて寝込んでました。」
「携帯を実家に置き忘れてました。」
「財布を落としてしまいました(あるいは盗まれました)。」
世の中には1年強の内に4回も財布を盗まれる不幸な人もいるようである。この手の人達には、世にも不思議な現象が起こったりする。
「すいません、家賃振り込んだんですけど、金融機関の方が振込先を間違えたようです。お金が戻って来るのにそれで一週間かかると言われました。」
金融機関のミスで間違った口座にお金が振り込まれる。しかもその組み戻しに一週間かかるという。一体どこの発展途上国の話だろうか、インドならよくありそうな話だが。。。
このインド並み金融機関を使った店子は、別の機会に滞納した時、全く連絡が取れなくなった。ひたすら携帯メールに送信し続けると、次のような返信が来た。
「この携帯電話を●●公園で拾いました。何度もメール送信されているようなので、返信してみました。明日池袋のソフトバンクショップに届けておきます。」
わざわざ拾ってくれた人が、メールの返信までしてくれた上に、ソフトバンクショップまで届けてくるという。この幸運(!)な連絡不能店子を捕まえる為に、その店子のルームシェア物件のキッチンに小生は数泊した。店子を捕まえた小生は、滞納の上連絡がないことを問い詰めるわけだが、次のような言い訳を述べ立てた。
「携帯も財布も落としてしまったので連絡を付けようがなかった」
ウソをつく人間は、大抵どんなに締め上げてもそのウソをウソと認めない。これに対しては、逃げ道を一個一個塞いでいくしかない。その対策として小生は、
「じゃあ次からはお金も携帯もなくなっても連絡できるように、ここに非常連絡用のテレホンカードをおいておきますから」
と述べて、テレホンカードを入れた封筒をその店子の部屋のドアに貼り付けておいた。封筒には小生の携帯電話番号と、「非常時以外絶対使用禁止」と記した。
この小生の対応に相手も観念したのか、その後しばらくは滞納もなかった。そのテレホンカードも2年ほど使われることもなく、ドアの前に貼り付けられたままだった。
ところが2年ほどして気が緩んだのか、また滞納の上連絡がつかなくなった。この滞納の直前(1週間ほど前)、小生は部屋の前のテレホンカードが未使用のまま封筒に入っているのを確認していた。しかし滞納・連絡不能となった後、訪問すると、そのテレホンカードは無くなっていた。その物件はルームシェアなので、他の部屋に2人居住者がいてその店子の部屋の前も通る。非常時にも小生に連絡をしてこないその言い訳として以下の返答が来るのは目に見えていた。
「誰かがいつの間にかテレホンカードを使って持って行ったようです。だから連絡できませんでした。」
この呆れた店子は30代にして生活保護。元々生活保護だったわけではなく、一年ほどでクビになったので小生が保護申請に同行した。それから2年以上生活保護から脱却できないのは、本人の人間性に問題があると判断せざるを得ない。
このような連絡が取れないウソつき店子に比べると、Yさん旦那は毎回必ずキチンと連絡を寄越してくれる信頼できる「クソバカ正直」な人間に思えた。
(大分話が逸れたが、次回は元に戻る予定でつづく)
コメント