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1章 4月
1-6 入寮式
「ただいまー・・・」

私は未だ絶望から立ち直れずに寮のドアを開けた

「あ、おかえり、亜希ちゃん。遅かったね・・・て、どうしたの?なんかすっごく落ち込んでるけど・・・」

「ううん、何でもないの、なんでも・・・」

今の私の様子を見てレナは?マークを浮かべているようだ
私はなんでもないと答えたものの傍から見ればそうは見えないだろう

「そ・・・そう?
って、あれ?亜希ちゃんの後ろにいる子って、ひょっとして・・・」

レナはえらく落ち込んでいる私の後ろにいる零夢さんに気が付いたようだ
目を輝かせながら私を見ている
どうやら紹介しろということだろう

「あ、うん、この子は私の義娘・・・じゃなかったっ!!
新入生の朝倉 零夢さん。リア先生から寮まで案内してあげるよう言われてね」

「初めまして、朝倉 零夢です☆
よろしくお願いします♪
ところで風原先輩、さっき言った義娘ってなんですか?」

「あ、それボクも気になった♪
亜希ちゃんどういうことかな~?
これはゆっくりと聞き出さないと行けませんな~、にしし・・・♪」

私は盛大な墓穴を掘ってしまったようだ
未だにあの時の妄想が残ってたなんて・・・なんてこった・・・
零夢さんならどうにか誤魔化せたかもしれないがレナにはその手は通じそうもない・・・
というか説明できるわけがない
それになんか興味津々って顔で私を見てるし・・・あの顔はきっと逃がしませんって顔だ・・・うぅ・・・

「さ~て、亜希ちゃん?夕方まで時間はたっぷりあるし、ちょっとお話しましょうね~♪
あ、零夢ちゃんは玄関から左に行ったらリビングがあるから寛いでいてよ
それと君の義母さんかな?をちょっと借りるね~♪」

「はーい、分かりましたー」

「ちょっ!?レナ離してっ!?
零夢さん助けてーーっ!!
いやあぁぁぁぁぁーーーーー・・・・・・ッ!!」

私はレナさんに引きづられると彼女の部屋に拉致されてしまった

-そしてここはレナの部屋・・・-

「んふふ。さ~て、亜希ちゃん?さっきの件を詳しくお姉さんに話してみようか?」

「あ・・・あのレナさん?目が怖いんですけど・・・
というか、この縄ほどいて欲しいんだけど・・・」

レナが不気味な笑みを浮かべながら私を見つめている
私は椅子に縛られ身動きができない状況で目に涙を浮かべ、開放を求めるがその気はないようだ

「素直に喋れば解いてあげるよ?
亜希ちゃんが悪いんだよ?私の前で面白そうなネタを喋るから♪
さーて、大人しくしゃべりましょうね?
でなければ・・・」

「でなければ・・・?」

ゴクリ・・・
一体私はどんな目に合わされるのだろうか・・・?
なんかレナの顔怖いし・・・

「でなければこうだ~っ!!
コチョコチョコチョ・・・♪」

レナはそう言うと私の脇や横腹、足の裏などをくすぐりだした

「きゃははははははっ!!
やめてっ!くすぐったいっ!!」

「ダメだよ~、素直に教えてくれればやめてあげるよ~♪
ほれほれ~、コチョコチョコチョ・・・♪」

「あはははははっ!!
分かったっ!言うっ!言うから・・・っ!!」

「ホントに?」

「ウ・ソ♪」

「おのれ、こしゃくな~っ
コチョコチョコチョ・・・♪」

「あははははははっ!!
言うっ!今度こそ言うからっ!!」

「ホントに・・・?
同じギャグは三度までだよ?」

・・・レナ外人なのによくそんな事知ってるな
というかそれならもう一度同じ手を使えるんじゃないのかな?
でもそんな事したらさらにくすぐられるんだろうなー・・・
レナにロープを解いてもらうと話しだすことにした

「はぁ、はぁ・・・実は・・・」

私はレナの尋問に屈し、リア先生と母さんから言われたことを話した

「えーーーっ!!ロボットっ!?」

「しーーーっ!!声が大きいってっ!!」

話を聞いて大声を上げるレナの口を私は慌てて閉じた

「あ、ごめん・・・
ところでその話ほんと?」

「ホント、それとこのことは絶対言わないでよっ!?」

「勿論わかってるよ、ボクだって人に絶対言えない秘密持ってるし・・・あっ!」

私はキツく口止めをするとレナはなにか口を滑らしたようでしまったという顔をしている
口笛を吹いて誤魔化しているつもりだろうけどそうはいかない
人に言えない秘密?それは面白そうだ♪
というかさっきの仕返しのチャーンスっ!!
私は咄嗟に先程まで私を縛っていたロープで今度はレナを拘束すると尋問を開始した

「んふふ、レナちゃん、絶対に人に言えない秘密って何かな?
私にちょーっとお話してみようか?♪」

「あは・・・あはは・・・亜希ちゃん?
目が怖いよ・・・?」

「問答無用っ!!
コチョコチョコチョ・・・♪」

「きゃははははははっ!!
亜希ちゃんやめて・・・あははははっ!!」

その後レナにくすぐり攻撃をしたが結局白状しなかった
恐るべし、レナ・・・


-夕刻・・・-
レナを尋問した後下に降りるとなにやら賑やかな話し声が聞こえた
リビングのドアを開けてみるとそこにはかなたさんとみゆきさん、それに零夢さんが話をしており、そしてその中に見覚えのない女の子が一人いた
その女の子は背が小さく肌も白いまるで人形のような子で
髪はやや長めのポニーテールでチャームポイントだろうか、頭のてっぺん付近に二本の髪が跳ねていた
あれがいわゆる触角だろうか?

「あ、亜希先輩、おかえりなさい・・・ぷくく・・・
あはははは・・・っ!!亜希先輩マジウケルっ!!」

みゆきさんが私の顔を見ると爆笑していた
一体何のことだろうか・・・

「な・・・何が・・・?」

「だってっ!
帰国子女の零夢さんの面倒を見るよう言われただけで養子扱いするなんて天然すぎですよっ!!
あはははははっ!!」

はうっ!
零夢さんそんなふうに話したのか・・・
みゆきさんが文字通りお腹を抱えて笑い転げている

「みゆき、そんなに笑ったら亜希さんに失礼だよ・・・
プクク・・・」

かなたさんがフォローをしてくれようとしているがその顔は明らかに笑いを我慢しえいる顔だ
もう穴があったら入りたいです(泣)

「だってよっ!?かなたっ!!
義妹じゃなくて義娘よっ!?これ絶対ウケるってっ!!
あははははははっ!!」

「あ、あのみゆき先輩、そこまで笑うと風原先輩に失礼かと思うのですが・・・」

零夢さんが必死にフォローしてくれようとしているがあれも笑いを我慢している顔だ
もう好きにして(自棄)

「あの・・・風原先輩って、天然なんですか?」

グサリっ!!(クリティカルヒット☆)
触角の女の子の言葉が私の胸に突き刺さり、私はその場に両手両膝をつき項垂れてしまった
今の一言が一番胸に突き刺さりました・・・
もう不貞寝していいですか?(泣)

「はいはい、亜希ちゃんを弄るのはそれくらいにしといてあげてねー
ところで、君がひょっとしてもう一人の新入生の子かな?」

「あ、はい
今日からこの寮でお世話になる川澄 風香(かわすみ ふうか)です
よろしくおねがいします」

触角の女の子・・・もとい、風香さんはそう言うとペコリとお辞儀をした
なんというか、クールっぽい感じの子だな
・・・あの触角を除けば



-夜・・・-

「さて、全員入寮したということで、第60回入寮式を開始します」

食事を済ませた後レナは立ち上がると入寮式の開始を宣言した
私は一瞬拍手を贈ろうかとしたが誰もしていなかったのでやめておくことにした

「最初に改めてそれぞれ自己紹介をしてもらうね
まずはボクから
ボクはレナ・フローベル、この寮の寮監を務めている三年生
次、亜希ちゃん自己紹介をお願いね」

「あ、はい
私は風原 亜希、3年生です
今年この学園に転入したばかりで、一年間だけですが、よろしくお願いします」

「私は御堂 かなた、3年生です
亜希さん同様今年入ったばかりでまだよくわからないことだらけですが、よろしくお願いします」

「私は御堂 みゆき、2年生です
一応かなた先輩とはいとこ同士です
みなさん、よろしくお願いします」

「私は朝倉 零夢と言います
新入生で帰国子女なのでわからないことが多いですが、温かい目で見てあげてください」

「私は川澄 風香です・・・
朝倉さん同様新入生です、よろしくお願いします」

「さて、これでひと通り自己紹介が済んだかな?
では次にこの寮の規則の説明をするね
まずは門限っ!!」

門限か・・・
お嬢様学校の寮だから門限は厳しいのだろう・・・

「門限は・・・ありませんっ!!」

無いのかよっ!!
お嬢様学校とは思えないほどの緩さだな・・・
というかザル同然?

「無いけど、一応22時までには寮に戻っておいてね
出来ればそれ以降の外出は控えてもらうと嬉しいな
あ、それと塾に行く人とかいるかな?」

塾か・・・
それは勿論・・・

「今更そんな事言いませーん♪」

私は堂々とかつ高らかに言放った
だって、三年生の今頃になって塾に行ってもねえ・・・

「ふむ、いないみたいだね。
あ、あと夜外出するときは二人以上で出かけてね、物騒だから
もし相手がいない場合は諦めてね☆物騒だから
はいっ!大事なことだから二度言ったよっ!?」

レナさん本当に外人なのか・・・?
めちゃくちゃノリがいいんだけど・・・

「ここまでで質問ある人はいるかな?
・・・
いないね?じゃあ次行くよ」

「次は料理当番
基本二人一組でその日の料理を行なってもらうことになるんだけど、
この人と組みたいっていう希望あるかな?」

ふむふむ、それは希望を取るのか
じゃあ、私は零夢さんと組もうかな?
一応フォローも任されてることだし・・・

「あ、私零夢さんと組んでいですか?」

「亜希ちゃんはそう言ってるけど零夢ちゃんはそれでいいかな?」

「はい、全然おっけーです☆」

私の申し出に快く頷いてくれる零夢さん
どうやら私の意図を読んでくれたみたいだ
その後の組み合わせでかなたさんとみゆきさん、レナと風香さんの組み合わせとなり、明日の食事当番はじゃんけんの結果かなたさんとみゆきさんのようだ
ちなみに昼食は主に学食を利用しているらしい
お弁当がいい人は各自作るようにとのこと

「ああ、それと明日から確か各部の勧誘活動が行われるはずだから興味がある人はいってみてね」

クラブ活動か・・・
そう言えば前の学校では空手やってたんだよな・・・
お嬢様学校に空手部があるとは思えないし、他の部に入るにしても三年生の今頃に入ってもな・・・
うーん、帰宅部でいいや

「ふむ、これで全部かな?他になにか質問ある人いるかな?
なければこれで終わるけど・・・」

どうやら誰も他に質問はないようだ

「ではこれで第60回、入寮式を終わりますっ!!」


-夜中・・・-
私は入寮式の後お風呂に入り、そして今髪を乾かしながらリア先生からもらったCD-ROMを見ている
勿論零夢さんの取扱説明書である
書いてあることは説明で聞いたのとほぼ一緒だが私はとある項目に目が止まった
内蔵武器の項である
えーっと、なになに?
-緊急時には武器を用い防衛手段に出ることがある
その緊急時とは本機に殺意を向けられた場合、マスターに余程の危険が生じた場合などである
その際は武力を用い危険分子の強制排除を行う
使用する武器は以下の物である
左腕に仕込まれたサイコガン
以上-
コ◯ラじゃねーかっ!!
母さん(あの人)は何考えてんだっ!!
ロケットパンチとかじゃなくよりによってサイコガンかよっ!!
・・・そう言えばマスターがどうとか書いてたな、マスターってなんだ?
聞いてないなそれは・・・
えっと?・・・あ、あったあった
マスター登録の項
-本機の性格の調整は基本的にマスターが行わなければいけない
マスターの言動により本機の性格が構築されるからである
マスター以外の者が行なってもそれは参考程度にしか留めず性格や言動に完全には反映されない
本機にとってマスターとは人間で言う親そのものである
なお、マスター登録をするには本機にマスターとなる者の遺伝情報の登録を行う必要がある-
・・・か、
ん?遺伝情報の登録・・・?
え?女の体でどうやって行なえと・・・?
そんな事を考えているとドアをノックする音が聞こえた

「風原先輩、いいですか?」

誰かと思ったら零夢さんか

「あ、うん、開いてるよ」

「失礼しまーす
ん?先輩何読んでたんですか?」

「ああ、零夢さんの説明書だよ」

「わわ、私の説明書・・・
なんか恥ずかしいです・・・」

恥ずかしがってるな、このロボット・・・
というか、本当にロボットなのか?
本当は人間ですと言われてもきっと信じるだろう

「あ、ところでさ、このマスター登録って何?」

私は零夢さんにマスター登録の項を見せた

「ああ、これですか。これは私が先輩の遺伝子情報を登録すればいいんです」

「い・・・遺伝子情報・・・?」

それを聞いた瞬間私はイケナイ方向へと考えが及んでいた
私の遺伝子と言えば・・・お腹の奥にある・・・

「では、登録を行いますね、じっとしていてください・・・♪」

零夢さんはそう言うと怪しい笑みを浮かべながら私に近づいてくる
私は女の子に襲われてしまうのだろうか・・・
そう思い目を閉じた時

「えい♪」

零夢さんはそう言うと私の髪の毛を一本抜き、それを口に入れた

「零夢・・・さん?」

「もぐもぐ・・・ゴックン・・・
遺伝子情報なら髪の毛一本でもいいんです
それとも、何か他のこと想像したんですか?亜希先輩♪」

はい・・・お恥ずかしながらそのとおりです・・・
て、亜希先輩?

「とりあえずこれで先輩とのマスター登録は終わりました、これ以降は亜希先輩と呼ばせてもらいますね♪
あと、私のことは呼び捨てで零夢でいいですよ☆」

「あ、うん、分かったよ零夢」

「あのぉ、それと・・・
恥ずかしいんですけど、今日一緒のベッドで寝てもいいですか?
最初はマスターと一緒に寝たいんですけど・・・」

零夢が上目遣いで甘えたような口調をしながら私を見ている
うぅ・・・元男としてはこの視線と喋り方にはかなり弱い・・・

「あ、うん、いいよ」

「わ~いっ!亜希先輩大好きです♪」

結局あの視線には勝てなかった・・・


そして零夢と同じベッドで寝てからどのくらい経っただろうか・・・
ふと目を覚まさし周りを見渡すと零夢は布団に潜っているらしい
私は布団をめくってみる私の胸に顔を埋めている零夢の姿があった

「お母さん・・・」

どうやら零夢は私をお母さんだと思っているらしい
というか、この子ロボットだよねっ!?お母さんいないよねっ!?
そう思った瞬間、マスターの項を思い出した

「マスター=親って書いてたな・・・」

零夢は私を母親だと思っているのだろう
そう言えば母さんが今の零夢は生まれたばかりの赤ちゃんのようなものだって言ってたな・・・

「仕方ない子ね・・・」

私はそう思うと零夢を優しくそっと抱きしめた
そして再び布団を被せると、私は零夢の体温を感じながら、まるで母親のような幸せな気持ちと、優しい感じに包まれながら眠りについた
-亜希は特殊技能(新スキル)「母性本能」を習得した-チャチャ~♪


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