私は零夢さんを連れ廊下を歩いていると出来れば会いたくない人にばったりと会ってしまった
理由は簡単だ、突然のことで混乱していた私はいつの間にか保健室の前を通りかかったからだ
そんな私を目敏く発見した出来れば学校では関わりたくない人、母である
「あら、亜希ちゃん♪
わざわざお母さんに会いに来てくれたのね、嬉しいわー
・・・て、あら?その子は零夢ちゃん?どうしたのその子?」
いきなり私に抱きつこうとした母さんだったが零夢さんの顔を見て思いとどまったらしい
丁度いい、零夢さんのことを聞いてみよう
「先生から零夢さんのこと頼まれたんだけど・・・母さんこの子の開発者ってホント?」
「え?ああ、うん、そうね・・・
とりあえずここじゃちょっと話しにくいので保健室に来てくれるかしら?」
母さんに零夢さんのことを問いかけると急になんかバツの悪そうな顔をし、私と零夢さんを保健室へと通し、鍵を閉めカーテンまで占めていた
一体何をする気だろうか・・・
「えっとね、亜希ちゃん、実はお母さんはとある研究室の科学者で、この子の開発責任者でもあるの
そして、この子がロボットであるということはトップシークレットなの」
急に母さんは真面目な顔をしながらそう言放った
トップシークレット?
・・・最重要機密?
どういうことだろう・・・?
「えっと、母さん、それは一体どういう意味・・・?」
「言葉通りの意味よ
その子は究極の人形ロボットなの
見た目だけでなく内部構造まで人間と全く一緒
人造人間だと言われても否定出来ない代物よ
もしそんなものが人権保護団体の過激派みたいなのにバレたら最悪スクラップにされかねないの」
「なっ!なんだってーーーーっ!!」
「しっ!声が大きいわよ
私は今回の計画には反対だったんだけど、この子には将来的な役割が大きいのよ」
つい大声を上げてしまった私の口を母さんが手で塞いできた
というかこの零夢さんの将来的な枠割って何なんだろう?
「この子・・・というかこの子の娘たちというべきかしら、
零夢ちゃんが得た知識や経験は主に介護などで活躍する介護ロボットなどの開発に繋がっているのよ
それだけじゃなく様々な分野での活躍も期待されているわ
だからこの学校での運用テストに全てがかかっているの
お母さんは保護観察と運用データの回収のためにこの学校に来たといっても過言じゃないわ」
「そうなんだ・・・
てっきり私を近くで見つめるためかと思ったんだけど・・・」
「ああ、それもあるわね♪」
あるのかよ・・・
「とりあえず亜希ちゃんが零夢ちゃんのサポート役に選ばれたのなら出来ればでいいからその子をフォローしてあげて欲しいの
その子は自分がロボットであるという自覚はあるし、自分から正体をばらすようなことはしないはず
知識の方も一般常識と一般教養くらいは覚えさせているわ
だけど、知識はあっても経験がないのよ」
「経験がない?」
「そう、例えばごはんを食べるときには箸を使わなければいけないという知識はあっても、実際に箸を使った経験がないからどう使えばいいのかわからないってこと
だからそういう時のフォローを出来る限りでいいからしてあげて欲しいの」
それはなかなかに面倒くさそうだ・・・
というかフォローが必要なロボットって・・・
「亜希ちゃん、なんか嫌そうな顔してたけど、言い換えれば今の零夢ちゃんは生まれたばかりの赤ちゃんみたいなものなの
知識はあっても経験がないから何もできないと言っても過言じゃないわ
それとも亜希ちゃんは面倒だからって何も出来ない小さな子供を見捨てるようなことをするのかしら?お母さんはそんな子に育てた覚えはありませんよっ!?
どうしても無理だというのなら仕方ないけど、一度は引き受けたんでしょ?」
そんな事言われても・・・と思ったが、確かに母さんの言うとおり何も出来ないのであれば小さな子どもと一緒だろう
それにリア先生もロボットではなく人間として接して欲しいと言っていた
確かに零夢さんはどこから見ても人間の女の子だ
でも中身は何もわからない小さな子どもと一緒・・・それを見捨てるなんて事は私はイヤだ
それに一度は引き受けたんだ、やってやるさっ!!
「・・・分かった、引き受けるよ
でも、どうすればいいの?」
「引き受けてくれるの?流石私の亜希ちゃんね♪
さて、説明だけど、さっきも言った通り基本的にフォローでいいわ
一応零夢ちゃんは帰国子女ってことになってるから多少ズレてても納得してくれるはず
後は亜希ちゃんが正しく方向修正してあげて
あと、これが重要なことで、決してこの子がロボットだとバレないようにすること
自分からロボットだとバラすような真似はしないとは思うけど、一応気をつけておいて」
「それとね、零夢ちゃんには高性能な学習型コンピューターが内蔵されてるの
今は真っさらの状態だけど
教えればいろんなこと覚えるわ
正しいことを教えればいい子になるし、悪いことを教えれば悪い子になるの
それは全て亜希ちゃん次第ね
まあ、亜希ちゃんだから大丈夫だと思うけど、その点は覚えておいて」
なるほど、私の教え方で性格とかも変わるんだ
まるでリアル育成ゲームみたいだな・・・
「あと、これ渡しておくわ」
そう言って母さんは私にタイピンらしきものをくれた
「なにこれ?」
「これは超小型の発信機よ
それをつけていれば亜希ちゃんの居場所が零夢ちゃんに分かるようになってるの」
・・・は?
私がフォローするんだから付けるの逆では・・・?
え?私がフォローされるの?
「あの・・・母さん言っている意味がわからないんだけど・・・」
「だから、もし亜希ちゃんがピンチの時には零夢ちゃんが助けに来てくれるの
もっともいい子に育てていればだけどね」
「助けにって・・・
どうやって?」
「んふふ~♪
こう見えてこの子武器を内蔵させてあるのよ♪
飽くまでも最終防衛手段だけどね」
・・・武器持ってるのかよっ!?
しかも内蔵式って・・・スー◯ーロボットか?
「ああ、でもね、ロボット三原則は覚えさせているから余程のことがない限り使わないはずよ
詳しいことはリア先生からCD-ROM貰ってるんでしょ?それを見てね」
ロボット三原則?
-ロボット三原則・・・
「一条、ロボットは人間を傷つけてはならない」
「二条、ロボットは人間の命令に従わなくてはならない」
「三条、ロボットは一条、並び二条に反しない限りで自分の身体を守らなくてはならない」
の3つを指すのである-
ふむふむ、なるほど
・・・ん?
「って!武器持って時点で違反してるっ!?」
「しっ!だから声が大きいってば
それに行使するのは最終最終最終手段よ
それと2つ目のは零夢ちゃんにはあまり効果はないわね
自身で考え行動する自立プログラムを組んであるから」
自分で考えるのか・・・どんだけ高性能なんだよ・・・
ド◯えもんかロッ◯マン並だな・・・
「それとね、多少のケガなら零夢ちゃんの身体を覆っている生体ユニットが自己再生を行うから問題ないんだけど
あまりに深刻なケガとかだったら見せに来て
修理が必要な場合があるから
それとこの子は完全防水だからお風呂に入れても平気だしプールや海だって大丈夫よ
もっとも生体ユニットに大きな損傷がなければだけど」
自己再生機能まであるのか・・・
オーバーテクノロジーでも使っているのだろうか?
「とりあえずそういう訳だから、何かわからないこととかあったらいつでも聞きに来て
それとは別にお母さんに会いたくなったらいつでも来ていいからね♪
だからって授業をサボりたいからって理由で来たらダメよっ!?」
「あ、うん」
私はやや呆然としながらも保健室を出ると寮へと目指した
高性能学習装置に自立プログラムに完全防水で再生機能を持つ生体ユニット・・・おまけに内蔵式の超兵器(?)か・・・
というかよくこんなオーバーテクノロジーみたいなロボット作ったな・・・
・・・E◯T?
それにしても内蔵兵器ってどんなの持ってるのかな?
普通に考えればロケットパンチや目からビームまたはレーザーといったところか・・・
漢のロマンだな♪
ドリルもあれば完璧だが・・・それは無理だろう
それとも胸からミサイル・・・はないな、流石に・・・
そう言えば母さんの話では私の育て方で零夢さんの性格などが変わるって言ってたけど、考え方を変えれば私の娘・・・みたいな感じになるのかな?
それとも義妹?
いやいや、やっぱり義娘ね
・・・ということは私は連れ子ということになるのかな?
じゃあ、私はこの年でお母さん?・・・なんかビミョーだなー・・・
あ、でもそう呼ばれたらなんか嬉しいような気もしなくもない・・・かな?
娘と一緒にお買い物とかお出かけとか・・・
それはそれで悪くないな・・・
そしてゆくゆくは恋して、好きな人と付き合って・・・たまに悩みを零夢に聞いてもらったり、相談に乗ってもらったり・・・あ、その逆もありそうね
将来誰かと結婚して、好きな人の子供を産んで、そしてたまに零夢に育児を手伝ってもらったり・・・
あ、もし旦那が零夢に手を出したらどうしよう・・・そんときはシバくか・・・
そしてゆくゆくは零夢もお嫁に行ってしまうのね・・・
その時は私は若くしておばあちゃんって言われるのかなー・・・その呼ばれかたは嫌だけど、なんかいいなー・・・
少なくとも零夢よりは先にお嫁に行きたいなー・・・
私の運命の人ってどこにいるのかしら・・・
「はぁ・・・」(恋する乙女の眼差し100%発揮中☆)
「あのぉ~、風原先輩?
さっきからどうしたんですか?
難しい顔をしたと思ったら楽しそうな顔になったり、今度はまるで恋する乙女にみたいになってましたけど・・・」
・・・しまった、また顔に出てたのか
いけないいけない
・・・
・・・・・・ん?
というかなんか恥ずかしい妄想してたっ!?
もう心まで女の子に侵食されているのだろうか?
途中から完全に女言葉になってたし・・・
うぅ・・・もう後戻りできないところまで来てしまったのかも・・・
私はそう思いながら両手両膝をつきその場に項垂れてしまった
「あれ?先輩?どうしたんですか?」
「ううん、何でもないの・・・なんでも・・・
ははは・・・」
なんか同情が身にしみる・・・
ははは、空が滲んで見えるよ☆
私はある種の絶望に打ちひしがれながら寮へと帰宅した
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