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1章 4月
1-2 初めての共同作業?
学園長室を後にした僕は、学生寮の前に立ち尽くしていた
この玄関の先には女の子たちが住んでいるのだ
いくら女装をしているとしても僕は男・・・
果たして本当に入ってもいいのだろうか・・・
入った途端僕の女装が見破られるかもしれない・・・
一応胸には高級なパッドを入れているし、下着も女物を着せられている
もし正体が見破られた挙句、そのようなものまで着けていると知られたら変態のレッテルは一生取れないだろうし、どんな言い訳も通用しないだろう
そう思うと急激に口の中が乾きだし、脚はがくがくと震え、指はインターホンを押す途中で止まり心なしか震えている
押すべきか・・・押さぬべきか・・・
って、押さないと中にも入れないし、荷物も全てこの寮の中に届いているんだし・・・
しかも自宅から通うにもそっから正体がバレる可能性もあるし、かと言って野宿するわけにも・・・
でも中に入るのも・・・う~ん・・・

「・・・かなた、あんたなにしてるの?」

「うわっ!?
なんだみゆきか・・・脅かさないでよ・・・」

僕が寮の前でうんうん考えていると、突然後ろから声をかけられかなり驚いてしまった
後ろを振り向くと、まるで不審者を見るかのような目で睨んでいるみゆきの姿があった

「はぁ~・・・
あのね、寮の前であからさまに不審な動きを見せてたら普通声をかけえるわよ
警察に通報されなかっただけありがたく思いなさい」

僕はそんなに不審な動きをしていたんだろうか?
女装している上に不審者とか・・・うぅ・・・落ち込んできた

「ほら、かなた落ち込んでないで早くなかに入るわよ」

僕はみゆきに腕を掴まれると寮の中へと入っていった
寮の中は思ったよりも広く、玄関のすぐ前に二階へと続く階段があった
みゆきの話では玄関から見て左側にリビングへと繋がっている扉があり、右には洗面所兼風呂場があるのだという
まずはこの寮の寮監督生という人に挨拶をしようと思ったのだけれど、姿が見えないようだ
僕は仕方なく自分の部屋に届いている荷物を片付けるために二階へと上がることにした


二階に上がると幾つものドアがあり、僕はみゆきの案内のもと、割り当てられた自分の部屋へと向かっていると、1つのドアが開いた
中からは金髪のツインテールの女の子と、先日編入試験で会ったあの女の子の姿もあった

「あ、レナ先輩、こんなところにいたんですか。
探しちゃったじゃないですか・・・あ、ひょっとしてそちらの方が・・・?」

「あ、みゆきちゃん。お帰り♪
ゆっくり出来た?
みゆきちゃんの推測通りボクの後ろにいるのが今日この寮に来た風原 亜希ちゃんだよ」

「今日からこの寮でお世話になる風原 亜希3年生です
よろしくお願いします」

「ボクは亜希ちゃんの荷物の片付けを手伝ってたんだよ
あれ?みゆきちゃんの後ろにいる人はひょっとしてかなたちゃんかな?」

「あ、私は御堂 みゆき2年生です。亜希先輩、こちらこそよろしくお願いします
そしてこちらが私の従姉妹の御堂 かなたです」

「あ、えっと、私わたくし今日からこの寮でお世話になります、御堂 かなたと申します
亜希さんと同じ3年生ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

「ボクはここの寮監督生を務めているレナ・フローベル、3年生だよ
よろしくね、かなたちゃん♪」

僕たちはそれぞれ自己紹介を行ったが、なぜ廊下なんだろう・・・?
ある意味シュールに見えた
それにしてもあの女の子、亜希さんっていうのか・・・可愛いな・・・
って、僕は何考えているんだっ!!
とりあえずは女装はバレてはいないようだけど、一時も気は抜けないのだ

「では私、かなたの部屋の片付けがありますので・・・」

みゆきはそう言って僕が怪しまれないうちに退散しようとした時

「かなたちゃん・・・?」

突然レナさんの目が光った
まさかバレたのか・・・?
やっぱりこんなことで騙し通せれるはずが無いんだ
僕は背中に冷や汗を流しながら、レナさんの次のセリフを緊張しながら待っていた

「ここでは余所余所しい敬語は禁止っ!!
ボク達はここでは家族なんだからっ!
それと部屋の片付けをするのならボクも手伝うよ」

レナさんは何を言うのかと思ったら僕のあらたまり過ぎた敬語のことを指摘してきた
どうやらここではアットホームな感じが習わしなのかもしれない
さらに僕の部屋の片付けまで申し出てきた

「あ、じゃあ、私も手伝うね
さっきレナに手伝ってもらったし、今度はかなたさんの部屋を手伝うよ」

断ろうとした時、今度は亜希さんまで手伝いを申し出てきた
いや、いやいやいや・・・男の荷物を女の子たちに手伝わせるわけには・・・
そう変な物はないんだけど、僕の荷物を女の子たちが触るのかと思うと、なんか恥ずかしくなってくる
そんな僕の気持ちを他所に、女の子たちによる僕の部屋の片付けが行われた・・・
そして終わった時には僕の心は焼き切れる寸前となっていた


-夕刻・・・-
部屋を片付けた後リビングでお茶を飲んでいたのだけれど、僕は先ほどの精神的なダメージから未だ立ち直れないでいた
それにしても本当に変なものは持ってこなくてよかった・・・まあ、そんなものは持ってないけれど

「さて、そろそろ夕飯の支度をしようか
今年度はまだ入寮式が済んでないからとりあえずグーパーで決めよう」

僕はそんな事を考え事えていると、レナさんが夕食の支度の話を切り出してきた
どうやらこの寮には料理を作る専属の人はいないようだ
あとで聞いた話だけど、これは情緒教育の一環でもあるのだという
料理は二人一組で作り、協調性を養うことを目的としているようだ
そして結果、今日の夕飯は僕と亜希さんで作ることになった
それはいいのだけれど、実は僕は料理ができないのだ
僕の家では「男子厨房に入らず」という言葉が今も息づいており、僕は今まで台所に入れさせてもらえなかったのだ
それどころか家事全般やらせてもらえず、家事はさっぱりである
そんな僕が今女子高で寮住まいしており、しかも料理まで作る事になってしまった・・・
なんという皮肉だろうか
ここは亜希さんに頼り切るしか無いのだけれど・・・男としてなんか情けない・・・


僕は台所に立ち、エプロンを着けると冷や汗を流していた
亜希さんはエプロンを着けると、冷蔵庫の中を見て献立を考えているようだ
どうしよう・・・今からでも料理ができないことを打ち明けるべきだろうか・・・
でも男としてのプライドが・・・

「うーん・・・かなたさん、今日の献立何にしようか?
レナは何でもいいよって言ってたけど・・・」

「いや・・・あの実は亜希さん・・・
私料理・・・出来ないんです・・・」

僕は意を決して打ち明けることにした

「え?あ・・・ああ、そうなんだ
じゃあ、切ったりとかは・・・?」

亜希さんが明らかに顔を引く付かせている
うぅ・・・すみません・・・

「それは大丈夫」

・・・だと思う
献立は亜希さんが結局決め、料理を作ることになったのだけれど、亜希さんの料理の腕は本当にすごかった
あっという間に下拵えを終え、料理を完成させてしまった
僕はただたまに手伝いを任せられる程度で、後は亜希さんが作っている様子を呆然と見てるほかなかった
亜希さんの作った料理はとても美味しかった
料理のできる女性ってなんかいいな・・・


-亜希パート-

どうやらみんな私が作った料理に喜んでくれていたみたいだ
んふふ~、家事に関しては昔から母さんに徹底的に仕込まれたから得意なんだよね~♪
・・・て、私よく思い出せば元男なんだよな・・・
たまに忘れそうになる・・・このままでは身も心も女の子になってしまいそうだ
いかんいかん、気を引き締めねば・・・と思いながらもそれでもいいんじゃないかと自分もいる・・・うーん、どうしたものか・・・
それにしても、かなたさんは料理はできないんだ・・・なんか以外だ
なんでもできそうな気がしたんだけど・・・まあ誰しも得意不得意あるよね♪
現に私勉強苦手だし・・・
それにしてもこの寮には先生とかいないんだな・・・
なんでもこれも生徒の自主性を養うためって言ってたけど・・・まあいいか
学校外でも先生と一緒だと息が詰まりそうだし

「さて、明日からいよいよ新学期が始まるわけだけど、亜希ちゃん、かなたちゃん、朝食は7時だからそれまでに起きてね
みゆきちゃんは明日はボクと料理当番だから少し早く起きてね」

「あ、はい分かりました、レナ先輩」

私がそんな事を考えていると、レナが明日の連絡事項を伝えてくれた
そうか、明日から学校が始まるのか・・・
一体これから先どんなことが私を待っているんだろう?
私は期待と不安を胸に抱きながら食器を片付け、お風呂に入った後、眠りについた


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