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序章
0-5 始まりの終わり
-あれから数日後・・・-
無事(?)に生理を迎え、月経前症候群から解放された私は今編入試験を受けるべく慶桜女学院の校門の前に来ていますっ!!
門は鉄で出来た策の鉄門で、美しい装飾が施されている
高さは3メートルほどだろう、てっぺんには侵入防止のためか、尖った槍のようなものがいくつもついている
たかが校門だとは思っているのだが・・・圧倒的な存在感・・・
この門の先には女の園が広がっているのかと思うと興味半分、恐怖半分・・・
見た目も性別も女となってしまったとはいえ、ある種の背徳感のようなものがハンパない・・・
この門の雰囲気に飲まれそうになりながらも私は意を決して門をくぐり、学校の敷地内へと入っていった
時期的に春休みということで生徒の姿はあまりなく、いても部活中の生徒達くらいのようだ、体操服を着てそれぞれの部活動に勤しんでいた
当然ここの生徒たちは全員女生徒
いくら私も性別が女になってしまったとはいえ、元男
必要以上に緊張してしまうし、先ほど以上の罪悪感と背徳感が容赦なく襲う
でもここまで来たのならジタバタしても始まらない、私は持ち前の気合とど根性で気持ちを奮い立たせた

「おと・・・じゃなかった、女は度胸っ!!」(気力130)

私は気合を入れなおし、校舎へと続いていると思われる道を歩いているのだが、門をくぐってからしばらく歩いているというのに一向に校舎が見えてこない
見えるのは道の脇に植えられている木々ばかりで、ここを並木道と言うんだろうなぁ・・・とどうでもいいことに感心しながら歩いていた
ふと左の方に建物らしきものが見えたので見てみると、どうやら寮か何かのようだ、少なくとも校舎ではないだろう
その寮らしきものを過ぎさらに歩いて行くとようやく校舎らしきものが見えてきた


やっと校舎に辿り着いた私は試験会場の案内の紙を見るべく鞄の中に手を突っ込んだのだが・・・

「えっと・・・案内の紙は・・・っと・・・」

-ガサゴソ・・・
・・・ガサゴソ-
あれ?おかしいな、ないよ?

「・・・
・・・・・・んーと(思い出し中)
・・・しまったーーーーっ!!家に忘れてきたーーーーっ!!」

私は思わず両手両膝をその場につき項垂れてしまった
なんてこった・・・場所がわからないなんて・・・
何階のどの教室だっけ・・・

「あれ?そこの君どうしたの?」

校舎の入り口で落ち込んでいた私は突然声がかけられ、声のする方向を見てみると一人の女の子が立っていた
その女の子は金髪のツインテールで、やや童顔っぽい顔をした可愛らしい女の子
髪の色からして外国人だろうか?ここは英語で答えないといけないような気がする・・・

「えっと・・・その・・・え・・・えくすきゅーずみぃ~?」

「あはははは、無理しなくても日本語で大丈夫だよ」

無理して英語で話そうとしたら笑われてしまった・・・
そう言えば日本語で聞かれたんだから日本語で返せばよかったんだな・・・とんだ大恥をかいてしまった

「あの・・・実はお・・・じゃなかった、私はこの学校の編入試験を受けに来たんですけど、
試験会場の案内の紙を忘れてしまって途方に暮れていたんです・・・」

「なーんだ、そんなことだったの、
じゃあ、案内してあげるからボクについてきて♪」

私は訳を話すと、その女の子はなんと案内を買って出てくれた
その時の彼女の顔はとても明るく、屈託のない笑みがとても印象的だった
私はその女の子に案内されながら、目的の教室にたどり着くことが出来た

「ありがとうございました、おかげで助かりました
あの、せめて名前だけでも教えてもらえませんか?」

「あはは、気にしなくていいよ
それにもう少ししたらまた会うだろうから、その時に改めて自己紹介を行うよ
じゃあ、ボクはこれで
試験頑張ってね」

するとその女の子は笑いながら意味深な事を言うと、私に手を振りながらどこかに行ってしまった
結局名前は教えてくれなかった・・・
たぶん、あの子もここの学校の生徒なのだろう、ああいう人ばかりだといいなと思い、いつの間にか私の胸の中にはこの学校に通ってみたいという思いが湧いていた
その思いを胸に教室のドアを開けるとそこにはどこかで見た顔があった

「「あ・・・」」

たしか、先日チャラ男に絡まれてるのを助けた子だったよね?
相手も私のことを覚えているようで、私をじっと見ている
彼女もこの学校に転入するのかな?
私はそう思いながらなんとなく彼女の隣の席へと着くことにした


-かなたパート-

慶桜女学院に転入することがほぼ決定的となった僕は、みゆきから毎日のように化粧の仕方や、女らしい言葉遣いに女らしい立ち振舞方などを徹底的に叩き込まれていた
その甲斐あってか、僕は男でありながら女性のような仕草や立ち振舞、それに女性的な言葉遣いまで出来るようになり、みゆきは完璧だと言っていたが正直僕は複雑な気分だった・・・
確かに女学院で男とバレずに生活するには女になりきるしか無いのだろうし、もし途中でバレたら僕の人生は勿論、父さん達にまで多大な迷惑を被ってしまうだろう
けれど、この生活が終わったら僕は男として社会復帰出来るんだろうか・・・僕の脳裏にそんな不安がよぎる
そんな不安を抱えながらも、僕は今慶桜女学院の校門の前に立っていた
この学校は僕の親族が運営している学校で、一応その親族にも僕のことは伝えられ承認は得ているのだという
でも、本当に男の僕がここに入ってもいいのだろうか、という疑問も生じている
いくら祖母の遺言とはいえこんな馬鹿げたこと・・・と、そう思いながらも僕は校門をくぐっていった
やはり僕は自分の意志というのが弱いのかもしれない、現にここには父さんたちやみゆきに言われるままにやってきた訳だし・・・


門をくぐり、校舎へと続く道を歩いていると、部活動に精を出す女生徒の姿をいくつも見かけた
その女生徒達が僕を見ているような気がしてならず、僕は顔をうつむかせながら足早に校舎を目指した

(うぅ・・・あまりジロジロ見られると恥ずかしいし、なにより女装がバレるかもしれない・・・)

僕は恥ずかしさとバレる危険を恐れ、校舎へと急いだ
そして校舎に辿り着いた僕は、まるでスパイのように誰にも見つからないよう急いで校舎に入り、そして周囲を警戒しながら目的の教室を目指した
春休みなので誰も居ないだろうけれど、それでも僕は誰かに見つかることを明らかに恐れていた
もし誰かが今の僕の姿を見たらかなり不審がるだろう、僕自身そう思いながらも、やはり必要以上に周囲を警戒せずにはいられなかった


目的の教室に辿り着いた僕は教室の中に入り、席についた瞬間ようやく緊張から解放された

「はぁ・・・っ!!
ただここに来るだけなのになんかどっと疲れた・・・」

緊張から解放された僕は今まで感じたことのない疲労感に包まれ、机に突っ伏してしまっていた
多分他に編入試験を受ける人なんていないだろうから、時間までこうやって休んでおこう・・・
そう思いながら上半身を机の上に投げ出していると、突然教室のドアが空いたので僕ははっと起き上がった
テスト開始の時間にはまだあるはず・・・そう思いながら僕は開かれたドアの方に目をやると、そこには見たことのある女の子が立っていた

「「あ・・・」」

たしか・・・僕が軽薄そうな男から絡まれてた時に助けてくれた女の子だ・・・
あの娘も僕のことを覚えているみたいで、僕のことをじっと見ている
なんかこう、女の子に見つめられるとなんか恥ずかしいけれど、何故か僕はあの子の顔から背けることができないでいた
あの女の子もこの学校に転入するのかな?
そう思っているとその女の子が僕の隣の席に座ってきた

(なんでよりによって僕の隣にっ!?)

僕は内心かなり焦っていたが、不思議と嫌な感じはしなかった


-亜希パート-

編入試験から数日後・・・私のもとに試験結果の通知の紙が入った封筒がやってきた
手応え的にはそれなりにあったような気がするのだが・・・
私はドキドキしながら封筒を開けるとそこには合格の文字が書いてあった


(さらにその数日後・・・)
私は自宅から通うのは遠いので寮生活を申請
そしていよいよ慶桜女学院へと行く日がやってきた・・・

「それじゃあ、母さん、行ってくるね」

私は慶桜女学院の制服(ブレザー)に身を包み、通学用カバンと着替えの入ったカバンを手に持っている
他にも寮に持っていく私物があるのだが、それはもう業者に頼んで送ってもらっている
私は母さんに笑顔を向けると出かける挨拶をした

「気をつけてね、亜希ちゃん
寮のみんなとは仲良くするのよ」

母さんも私に笑顔を向けながらも、その目には少し涙が滲んでいたような気がする
そんな顔をすると私までグッと来てしまう
私は涙をこらえながら母さんに手を振ると家を後にした
こうして、私は慶桜女学院へと向かっていった・・・


亜希が聖應女学院に行った後、冬美はなにか考え事をしていた

「うーん、亜希ちゃんほんとうに大丈夫かしら・・・?
今まで男の子だったわけだし、少し心配だわ・・・
・・・そうだっ!私も慶桜女学院に行っちゃおうかなー♪」

冬美は何か思いついたのだろう、ルンルン気分でどこかに電話をしだした

「・・・あ、もしもし?
お久しぶりです・・・はい、私です
実は・・・・・・
ええ・・・ええ・・・はい、そうです
はい・・・ではよろしくお願いします」

「これでよしっと・・・
亜希ちゃんきっと驚くわよ~、んふふ♪」

冬美は何か含みのある笑いを浮かべていたが、その事を亜希は知る由もなかった・・・


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