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序章
0-3 それぞれのスタート
僕は家に帰り、しばらくすると祖父母を担当している弁護士の方が見えた
彼の名前は確か月島 純一(つきしま じゅんいち)さんだったかな?
歳は40代半ばくらいかな?誠実的な感じと優しそうな笑みが印象的な人だ
僕の祖父は気むずかしい性格の人でその祖父を認めさせた人でとても感じがよく、とても人のいい方だ
僕はふと何か視線を感じたのでそっちの方に目をやると、月島さんの横にショートヘアの女の子がいた
彼女は僕の従兄妹の御堂 みゆき(みどう みゆき)、僕の母親の姉弟の娘で歳は僕より一つ下なのだがなぜここにいるんだろう?
昔はよくみゆきに女装させられ、イヂメられていたけど今ではいい思い出・・・になるはずはない
今でも思い出したくもない苦い思い出だ
みゆきは僕の視線に気がついたのか、ニヤッと笑みを浮かべると僕は何か悪寒のようなものを感じ咄嗟に目を逸らしてしまった
僕が目を逸らしたのでみゆきは不満そうな顔をしていたが、気にしないでおこう
そんなやり取りをしている間に両親も揃い、祖母からの遺言状が正式に読み上げられた

「・・・とまあ、書かれている内容は以上です」

祖母の遺言状を要約すると、遺産の分配方法が主であった
遺産の件に関しては僕にはあまり関係ないのだけれど、問題はその後にあった
一番最後に僕を慶桜女学院に編入させよという事で、その点に関しては昨日父さんが言っていたこととほぼ一緒の内容であった
ただ唯一違ってたのは「このことは曲げてでも実現して欲しい」と、最後に締めくくられていたことくらいだ
月島さんの話では祖母が涙ながらに訴えていたらしい
その事から祖母の強い意志が感じられる
感じられるのだが・・・

「ち・・・ちょっと待ってくださいっ!そんな女子高に通えだなんて・・・
僕は男ですよっ!?そんなこと出来るわけが・・・っ!」

「はあ・・・それはごもっともなお言葉です・・・
私も弁護士生活は長いのですが、このようなケースは初めてで・・・」

僕はやや声を強めながら正論をつくと、月島さんはハンカチで汗を拭いながら気まずそうに返答していた
遺言状を託された月島さんの気持ちはわからないこともないけれど、僕としてはこれを受け入れるわけには行かないのだ
幸い月島さんもこの遺言には困っているらしく、もうひと押しすれば女子高に転校という自体は避けられるかもしれない
そう思い口を開こうとした瞬間、みゆきが笑を浮かべていた
それを見た時僕はとても嫌な予感がした

「んふふ~♪かなた?その為に私がここにいるのよ
かなたは女顔だし、チョコチョコッと手を加えるだけでキレイな女の子になりそうだしね
さ、こっちに来なさい♪」

「ち・・・ちょっと待ってよっ!みゆきっ!!
また僕を女装させる気なのっ!?」

僕の予感は的中した
みゆきは僕に女装させて、女学院に通わせようとしているに違いない
またあの時みたいにゴスロリ衣装とか何かのドレスのよなものとか着せられたらたまったものではない

「心配しなくても大丈夫よ
今回は遊ぶためにやるんじゃないもの、かなたをちゃんと一人前のレディにするためにするんだから♪」

みゆきは笑みを浮かべながらウィンクを一つすると、僕はドレッサー(化粧台)のある部屋へと無理やり連れて行かれた
ここで僕が抵抗するなり拒否するなりすればいいんだろうけど、何故か僕はみゆきには逆らえない
僕は押しに弱いらしくそれを知ってるためかみゆきは僕を無理やり自分の思い通りにしてしまう
今回の件はその最たるものだろう
結局僕は抵抗することも拒否することも出来ず、気が付いたらドレッサーの前へと座らされていた

「さ~て、かなた、メイクアップしましょうね♪」

みゆきは嬉々とした表情で僕をドレッサーへと座らせると、僕の肩にケープを巻き付け、化粧道具を取り出し、僕に化粧を施していった


それから数十分後・・・

「これが・・・僕・・・?」

鏡の前には一人の女の子がそこにいた、それも相当な美少女が・・・
僕が首を傾げてみると鏡の女の子も首を傾げ、笑みを浮かべると鏡の女の子も笑みを浮かべていた
どこからどう見ても女の子にしか見えないその子はやはり僕のようだ

「ふう・・・こんなところかしら?
もうかなたはどこからどう見ても女の子よ?
まあ、素材がいいっていうのもあるんだけど、やっぱり一番は私の美容テクよね、我ながらこの出来は惚れ惚れするわ~♪」

みゆきは自慢げに胸を反らしながら僕の顔を入念にチェックしている
うぅ・・・そんなにジロジロ見られたら恥ずかしい・・・

「それにしても何よ、このほっぺにこの肌・・・
本当に今までスキンケアとかしてなかったんでしょうね?
少し手を加えるだけでこんな美女になるなんて腹が立つわ・・・」

「そんな事言われても・・・スキンケアとかほんとに全然したこと無いし・・・
それとほっぺたをつつくのやめてくれないかな・・・」

みゆきは思った以上に美女に変身した僕に不満なのか、頬をつつきながら不満を漏らしていた
でも確かに眼の前にいるのはどこからどう見ても美少女で・・・
僕は不覚にもその姿に見とれてしまっていた

「さて、立ってクルッと一回転してみて?」

みゆきは僕の肩にかかっていたケープを外し、ドレッサーの前から立たせると一回転するよう命じてきたので、僕は言われた通り鏡の前で一回転をしてみせた

「・・・はぁ、完璧ね」

みゆきはやや呆れながらため息をついていた
僕が一回転した時、僕の長い髪もふわっと一回転し、それだけでもかなり女らしいと思え、不覚にもドキッとしてしまった

「それにしてもこの男とは思えないこのウェストの細さは何よ・・・
世の女性すべてを敵に回す気?
これであとはブラパットをつければ完璧ね
顔は女顔だし、体毛は殆ど・・・というか全くないし・・・
どこかで男性ホルモン置いてきたんじゃないの?
私もこれがかなただって知らなかったら男だとは絶対思わないわ・・」

「・・・」

僕は一瞬反論しようとしたができなかった
それは鏡の中の僕は、どこからどう見ても女の子にしか見えなかったからだ
確かに僕の顔は女顔だけど、それは母さんに似ただけで、ウェストが細いのもただガリガリなだけで・・・
体毛に関しては僕自身一番きにしていたところ
この年になってヒゲもすね毛も生えてこないことに少なからずショックを受けているのに・・・
おまけに声変わりまでしていない・・・どころか喉仏すら目立たない
本当に男性ホルモンをどこかに忘れてきてしまったんだろうか・・・

「さ、かなた、叔父様達の所に戻るわよ」

そういうと、やや落ち込んでいる僕を他所にみゆきは僕の手を引いていった


「・・・とまあ、これが変身後のかなたです」

みゆきは部屋に戻ると父さんと母さん、それに月島さんの前に女装した僕を見せると3人は驚きの声をあげていた

「た・・・確かにこれなら母さんの遺言は実行できるな・・・」

父さんはやや顔を引き攣らせながらも遺言が実行できる事を喜んでおり、母さんにいたっては「まあ・・・」と言いながら嬉しそうに手を合わせていた

「なるほど、これなら遺言を守れますね
一時はどうなるかと思いましたが、みゆき様、あなたのご助力に感謝いたします
では、私はこれで・・・」

月島さんは遺言が反故にならなかったことに安堵すると、いそいそと帰り支度を整え、僕の家を後にした
僕は半ば放心状態でその光景を見つめていただけだった

「さ、かなた後は女らしさに磨きをかけるだけよ
春休みはまだあるんだし、この間に完璧に女らしく振る舞えるよう練習するわよっ!
そうそう、あと転入にあたってテストがあるんだけど、かなたの学力なら余裕でしょ」

こうして僕は春休み中みゆきから女らしく振る舞うための立ち振舞や言葉遣い、さらに化粧のやり方などを徹底的に叩き込まれ、慶桜女学院に転入する破目になった
男であるこの僕が・・・


-亜希パート-

買い物から帰った俺は、引き出しの前で固まっていた
まず理由の一つは、俺が今まで着ていた男物の服が全て消えていたからだ
間違いない、これは母さんの仕業だろうっ!!
そしてもうひとつの理由・・・それは今俺が手にしているブラジャーとシパンツである
こんなものを持ったまま固まっているところを見られると、変質者呼ばわりされてもおかしくはないのだが今はそれどころではない
もっとも、女となった俺が持っていても不思議ではないのだろうが、問題はそこではない
やはり元男としては女物の下着など見慣れているはずもなく、さらにこれが女の子の肌に触れるのかと思うと、それを想像しただけで顔が赤くなってしまう
早く仕舞えばいいのだろうが、一度意識してしまうとなかなかそこから離れられなくなり、逆にさらに意識してしまうという悪循環に陥ってしまってる
しかもこの下着の柄にも問題があるだろう
ピンクや水色、さらに白に黒といった色とりどりのブラジャーとパンツ
さらにはフリルだの、レースだの、リボンだの、といった可愛らしい柄
これを俺に付けろというのか・・・?
想像しただけで血を吐いてこの場に倒れてしまいそうだ
確かにブラジャーをつければ胸は安定するし、パンツも今まで履いていたトランクスとは違い、この女の股間にもジャストフィットして、それが何かの安心感をもたらす
必要性については現在実感しているため否定のしようがない・・・
しかしっ!!心が拒絶反応を示していた
元男として譲れない部分がそこにある・・・ような気がする

「亜希ちゃん?いつまで下着を握り締めているの?」

そんな俺をいつから見ていたのだろうか?母さんに声をかけられた俺は慌てて全てを引き出しにしまっていった
我ながら先ほどまでが嘘のような瞬発力だ

「あの・・・母さん・・・いつからそこに・・・?」

全てを仕舞いこんだ俺は、恐る恐る母さんがいつからいたのかを聞くことにした
後で思えば聞かなければよかったと思うのだが、この時はまだそれに気が付かなかった

「んふふ、言っていいのかしら?
亜希ちゃんが買い物袋から取り出した下着を握りしめたり、見比べていたりしながら顔を赤くしていたところからよ♪」

「最初からかよっ!!」

どうやら母さんは最初から俺の一部始終を見つめていたらしく、テンパってた俺は全く気が付かなかった

「荷物をしまったのならちょっと来なさい、話があるの」

荷物をしまった俺は母さんに呼ばれリビングに行くと、とある学校のパンフレットがテーブルの上においてあった
どうやらここが次に俺が通うことになる学校なのだろうか?

「亜希ちゃんは4月からこの学校に通うのよ
ここはお母さんの母校でもあるの、とてもいい学校だから亜希ちゃんも気に入るはずよ」

母さんは俺に学校のパンフレットを見せるとそこには「慶桜女学院」と書かれていた
たしか、御剣財閥とかいう大企業が経営している有名なお嬢様学校だったよな・・・
ん?お嬢様学校・・・?

「ちょっと待てーーいっ!!俺お嬢様学校に通うのっ!?」

突然のことで俺は全力でツッコミを入れていたが、母さんはさも当たり前のようにただ一言「そうよ♪」と言っていた
なんてこった・・・せめて共学なのかと思えばお嬢様学校かよ・・・

「でもねー、この学校編入試験があるのよ、亜希ちゃん勉強の方は大丈夫?」

なるほど、編入試験がるのか、それくらいチョロいもんさ
今の学校でも赤点はギリギリ回避できているんだしきっと大丈夫さ

「ああ、勿論、そのくらい軽いもんさ♪」

「そう?じゃあ、7×8は?」

7×8だって?ふ・・・俺も舐められたもんだ
7×8は・・・

「54だっ!!」

「・・・平安京は何年?」

平安京?ああ、社会か、社会は俺の得意種目だ

「鳴くぜウグイス平安京だっ!!」

ふふ・・・決まったぜ、俺の答えにさぞ母さんも驚いているだろう
なあに、このくらい朝飯前さ

「・・・それ何年よ」

む?違ったか?えっと・・・?
カナリヤ?ハト?

「はぁ・・・
亜希ちゃん、勉強頑張りましょうね・・・
あと数日したら編入試験があるから、それまでみっちりとお母さんが勉強見てあげるわ
もし落ちたら今の男子校で輪姦生活が待ってるわよ♪」

俺の答えに母さんは呆れながらため息をついていた
もしかして違っていたのかっ!?バカな・・・っ!!
それに落ちたら輪姦生活まっしぐらだってっ!?
突然女の子になった俺にそれはハードすぎるっ!!
せめて初めては好きな人と・・・
って、俺は何考えているんだ

「お・・・おう・・・」

「それとその言葉遣いも直しましょうね
亜希ちゃんは女の子なんだし、お嬢様学校に通うんだから、言葉遣いや立ち振舞も完璧になるよう徹底的に指導してあげる
元キャリアウーマンとしての血が騒ぐわー♪
こう、出来の悪い部下を指導していくかのような高揚感・・・
お母さん久しぶりに仕事の鬼としてのスイッチが入っちゃったから覚悟しといてね♪」

「・・・はい」

こうして俺は今の母さんに逆らうことは危険だと本能が察知し、素直に聞き入れた
そしてこの日から母さんに勉強と女としての立ち振舞、言葉遣いなどを文字通りスパルタ的に教育されることとなった


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