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序章
0-1 突然変異
「なんじゃこりゃーーーーーっ!!!」

ある日のこと、突然それは起こり、俺はトイレの中で呆然と立ち尽くしていた
おっと、自己紹介が遅れたな、俺の名は風原(かざはら) 亜希(あき)
現在高校二年で新年度から高校三年へと進級することになる
勿論一人称が「俺」だから性別は男だ
先日春休みに入ったばかりで、休みを満喫する予定だったのだが思わぬ自体が発生してしまった
普段俺は休みの日は昼まで寝ているのだが、今日に限って朝早くに目が覚めてしまい、いつもならまだ寝ぼけているにもかかわらず、今日は意識がはっきりしている
それが俺にとって幸か不幸かはわからないわけなのだが・・・朝起きてトイレで用を足そうとした時俺は思わぬ自体に直面してしまったのだ
そう、ないのだ、男のアレがっ!!
これは夢だろうか・・・そう思いながら頬をつねるが

「痛い・・・」

どうやら夢ではないらしい

「はっ!てことはまさか・・・っ!?」

俺は何かにふと気づき、恐る恐る自分の胸へと手をやるとなにかふくよかな柔らかい感触がそこにあった
恐る恐るパジャマの上着を覗きこんでみると、見覚えのない2つの膨らみがついていた
もう一度頬を、今度は強くつねってみる

「うん、痛いっ!」

どうやらやっぱり夢ではないようだ
人はあまりにも突拍子もないことが起きると冷静になると聞いたことがあったが、確かに本当のようだ
俺は何事もなかったかのように用を足した

「ふう・・・すっきり♪
・・・
・・・・・・てっ!俺の身体どうなったんだっ!?母さんっ!大変だっ!かあさーーーーーんっ!!!」

そして個室から出た途端突然頭の中がパニックになり、慌てて階段を駆け下りると下の階にいるであろう母の元へと走っていった
一階に降りた俺はリビングの扉を開けると、そこには母である風原(かざはら) 冬美(ふゆみ)がおり、洗濯物を干す準備をしていた
親父は俺が小さい頃に他界しており、女手ひとつで俺を育ててくれた人だ
一児の母とは思えぬほど若く見え、この人だけ時が止まっているんじゃないだろうかとさえ思えてくる

「母さん大変だっ!!俺の身体が変になってっ!!あったモノがなくなってっ!見覚えのないものがあってっ!!
兎に角大変なんだっ!!」

「あらあら、亜希ちゃん今日は早いのね
休みの日はいつもお昼頃じゃないと起きてこないから朝ごはん出来てないわよ?」

慌てふためいている俺に対し、母さんは至って冷静・・・というかまるで見当違いな返事をしていた
今は朝ごはんの事を言っている場合じゃないのにっ!!
俺の母さんはマイペースな自由人であり、俺の話を聞いていないことが多々ある
そのクセ俺が話を聞いていないと怒るし、しかも自分の思いつきで俺を振り回すためたちが悪い

「ご飯の事じゃないってっ!!俺の身体が大変なんだよっ!!」

「ご飯じゃないなら何なの?それに朝からそんな大声出したら近所迷惑でしょ?亜希ちゃんっ!」

我が母ながらその発言にはさすがにイラッときてしまう
一度殴ってみたら接触が良くなるのではないだろうかとさえ思うことが多々ある
こんな母だが、以前はかなりのやり手のキャリアウーマンであり、若くしてかなりの部下を持っていたというのだから驚きだ
今の姿からは全く想像がつかないが、暗算は得意らしく、何桁の足し算や引き算、掛け算に割り算までもスラスラと解いてしまう
しかも金銭感覚も凄く、安売りは決して逃さないのだという
ちなみに現在はスーパーのパート店員
しかしそんなことは今はどうでもいいっ!!

「そんな事行ってる場合じゃないのっ!!
俺の身体が大変なんだってばっ!!」

「亜希ちゃんの身体がどうしたっていうの?」

母さんはようやく俺の言葉を正常に聞くと先ほどの出来事を全て話した
すると・・・

「なーんだ、そんなことね」

こともあろうにこの母は「そんなことね♪」とか言放った
ここはキレてもいいところだろうか?誰も怒らないだろう、むしろ神様ですら俺の怒りは許してくれるはずっ!!

「えっとね、実は今まで黙ってたんだけど、亜希ちゃんの身体にはね女体化の呪いがかかっているの」

俺は今まさにブチ切れようとした時、母さんは初耳の情報を教えてくれた
え?女体化?え?呪い?なにそれ、美味しいの?
突然のことで俺の怒りは亜空間へと消え去り、その代わりに混沌が這い寄り、俺の心を埋め尽くしていった
そんな俺をよそに母さんは俺の体のことを話してくれた
なんでも俺の家系の者は100年に一度男でありながら突如女の体に変わってしまうという呪いを受けた子供が産まれるのだという
その子供の特徴は男でありながら、まるで女顔でありしかも傍から見ればとびきり美人なのだという
それを聞いた俺はふと自分の顔を思い出してみた
たしかに俺の顔は間違われるほどの女顔だ
しかも美人の部類にないるのだろう
その為俺の顔について触れてきた奴は片っ端からぶちのめして来た
こう見えて俺は空手は有段者なのだ。ケンカくらい楽なもの
しかし、まさか本当に女になるとは夢にも思ってなかった
そう言えば、声もなんか女のように高い声に変わってるような気がする
ていうか俺声変わりとかしてないじゃんっ!!

「それでね、一応回避方法もあったのよね」

自分の顔について思考を巡らせていた俺に母さんは今更回避方法とやらを教えてくれた
というか、あるのならもっと早くに教えて欲しかった・・・

「それはね、ある一定の年齢までにオトナになることなの」

「オトナになるって?」

母さんの言ったオトナになるとはどういう事だろう?
成人になるということかな?
だとすれば俺がまだ女体化するのは速すぎだと思うんだけど・・・

「もう、分かってるくせに♪
つ・ま・り、女の子とHをするってことよ♪」

「ぶーーーーーーっ!!!」

母さんの突然の言葉に俺は思わず吹いてしまった
何を言い出すかといえば一定の年齢までにHをすれば回避できたってっ!?

「母さんっ!あるんならなんでもっと早くに教えてくれなかったんだよっ!?」

「あら、だって亜希ちゃん彼女とか未だにいないんでしょ?
教えても相手がいないんじゃどうしようもないんじゃないかしら?」

俺は母さんにすかさず抗議を言うが、母さんは正論で返してきた
母さんの言うとおり俺は今まで彼女とかいなかったさっ!
たしかにそれを言われればぐうの音も出ねえ・・・くそっ!

「で・・・っ!でも教えてくれていればきっと出来ていたと思うんだっ!!」

「うーん、どうかしら・・・
でも今更どうこう言っても手遅れよ、亜希ちゃん♪」

俺は尚も母さんに食い下がろうとしたが、母さんはダメ押し・・・というか現実を突きつけてきた
もう泣いていいですか?女の子になったんだもん、泣いてもいいよね?
いや、いやいやいや、諦めたらそこで試合終了なんだってばよっ!!

「で・・・でも元に戻る方法があるとか・・・?」

「ああ、それはないわよ
亜希ちゃんは残りの人生女の子として生きていくのよ♪」

俺は一筋の希望にかけ、元に戻れる方法を聞いてみた
頼むあってくれっ!!
その思いも虚しく母さんはさぞ嬉しそうに無いと言放った
そして、女の子としていくるようこれまた嬉しそうに言い放ちやがった

「な・・・なんてこった・・・」

怒りよりも失意のほうが先にきた
俺は絶望に打ちひしがれるように両手両膝を付き落ち込んでしまった
あは・・・あはは・・・俺は今日から可愛い女の子、ひゃっほーい(泣)

「あらあら、亜希ちゃんそんなに落ち込まないで
きっといいことあるわよ
女の子になった亜希ちゃんも可愛いし♪
それにお母さん本当は娘が欲しかったの♪」

落ち込んでいる俺に対し母さんは嬉しそうに鼻歌を歌っていた
そんなに娘が欲しかったのかよwwww
思わず叫びそうになったが、今の俺にそんな気力は残されていなかったようだ
今の俺の気力は50(最低値)といったところだろう・・・

「さ、亜希ちゃん、落ち込んでいる暇はないわよ?
ご飯を食べたらお買い物に行くわよっ!
いるものがいっぱいあるんだからっ!!」

「買い物・・・?今はそんな気分じゃないよ・・・」

母さんは俺の気分を察することなく買い物に行くと言い出した
少しは女になってしまった息子の気持ちも汲んで欲しいものだ
しかし有無をいわさず連れて行かれるんだろうなぁ・・・
でも買い物か・・・憂鬱な気分を吹き飛ばすにはいいかもな・・・俺は少しでも前向きな方向で考えることにした

「買い物はいいけど、何を買うの?」

「勿論亜希ちゃんの服よっ!
4月から通うことになる新しい学校の制服でしょ?
それから亜希ちゃんの私服に下着に・・・後は生理用品もあったほうがいいかしら?
それに化粧品もあったほうがいいわねー、あとは・・・」

何を買うのか尋ねると、母さんは嬉しそうに指を折りながら買うものを数えていた
そんな中俺は聞き捨てならない単語が聞こえたのをしっかりと捉えた

「ええーーーっ!?俺転校するのっ!?」

「勿論よ、今亜希ちゃんが通っている学校は男子校でしょ?
女の子の亜希ちゃんが通えるわけないじゃない
それにそんな飢えた狼の巣窟に今の亜希ちゃんが行ったらどうなるかくらい分かるでしょ?
そういうのが好きって言うなら別だけど、お母さんの目が黒いうちはそんな事許しませんよっ!!」

突然のことで呆然としている俺に母さんは次々と話を展開していった
俺のこれからの人生はどうなるんだろう・・・
そう思いながら俺は出された朝食を取り、着替えを済ませると母さんに拉致される形で買い物に連れて行かれた


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