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薄氷の内閣支持 TPP対応 農家は注視 (2013年01月17日)

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 日本農業新聞農政モニター調査で、第2次安倍内閣の支持率は66%と高かった。しかし民主党政権に対する失望の反動であり、積極的な支持ではない。環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題への対応では既に不安感を抱き始めている。6年前の第1次安倍内閣以降、毎年のように首相が変わった。政策の誤りは即、政権の命取りになる。TPPへの対応を農業者が厳しい視線で見ていることを肝に銘じるべきだ。農業者も監視を怠ってはならない。

 支持の理由では「自民党中心の政権だから」が最も多く、2番目が「他にふさわしい人がいないから」。安倍内閣への意見や注文などの自由記述でも、昨年12月の衆院選で自民党が圧勝した要因として「民主党の稚拙な政権運営が有権者に見放された結果」といった指摘が目立った。投票率が衆院選で戦後最低だったことも踏まえれば、支持基盤はもろいといえるだろう。

 安倍内閣に優先的に取り組んでほしい政策の3番目に「TPP交渉に参加しないとの決定」が入り、「農業所得向上など農業政策の拡充」を上回った。交渉不参加が農業振興の前提と認識されている。交渉参加には76%が反対と答えた。自民党支持者では80%に上る。回答者の8割近くが農業者とJA職員であり、安倍政権が仮に交渉に参加すれば農業・農村の支持を失うのは必至だ。政権の変心に農業者は敏感である。自由記述ではTPPについて「与党になった途端にもうブレが見られる」などの意見が多く寄せられた。

 衆院選の公約に自民党は「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」ことを掲げ、これに「国民皆保険制度を守る」など5項目を加えた計6項目を交渉参加の是非を判断する条件に挙げた。

 ところが安倍晋三首相は公約発表後から、条件を突破する交渉力の重要性を強調するようになった。また連立政権発足に際しての自民党と公明党の政策合意は、TPPについて「国益にかなう最善の道を求める」とし、公約の内容に踏み込まなかった。一方、自民党では高市早苗政調会長が、首相が交渉参加を決めた場合には容認する考えを示し党内外から批判を浴びた。公約を無視して政府が暴走しようとすれば、それを止めるのが与党だ。前政権では民主党がぎりぎりで役割を果たした。

 交渉参加問題への対応について自民党執行部は夏の参院選前に方針を示す考えだ。同党の議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」への参加者は同党議員の半数を超えた。各議員が信念を貫けば結論は「交渉に参加しない」しかあり得ない。

 「自公政策合意の内容が曖昧だし、経団連などの圧力で参加するのではないか、大変心配している。わが家の長男は夢と希望を持って、農業と地域文化の存続に頑張っている。夢を消さないでほしい」。60代の男性農業者の記述である。

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