つながる:ソーシャルメディアと記者 双方向の仕分けに可能性=三沢耕平
毎日新聞 2013年01月05日 東京朝刊
2009年の政権交代以降、注目され続けてきた事業仕分け。民主党政権の下で開かれる最後の仕分けが昨年11月16日から3日間の日程で開催された。今回はソーシャルメディアを駆使した新しいタイプの仕分け。衆院解散と重なったこともあってほとんど注目されなかったが、私はそこにオープンガバメントの可能性を見た気がした。
今回の仕分けの最大の特徴は、ツイッター上の意見を仕分けの議論にフィードバックする「双方向」を実現したことだ。インターネット中継する動画上のコメントやツイッター上のつぶやきを、仕分け人たちに見えるように流す。それらのコメントを会場内のジャーナリストが拾い上げて紹介し、ネット傍聴者に考えるヒントを与えていく。ソーシャルメディアを持つ人なら誰でもプレーヤーとして参加できる仕組みで、野田佳彦首相(当時)は「新しいオープンガバメントの実践」と胸を張った。
後日、仕分けの「生みの親」でもある民間シンクタンク「構想日本」が主催する勉強会に足を運んでみた。構想日本の加藤秀樹代表によれば、この双方向型の仕分けに関するアンケートでは9割以上が「意義があった」と回答したという。仕分け人の福嶋浩彦・前消費者庁長官は「市民の公共的な意思を作りあげていくのが政治」と指摘したうえで、今の政治に欠けているものを補う大きな可能性を今回の仕分けに感じたという。
つぶやきやネット上の書き込みは、口角泡を飛ばして理論武装する従来の政治論争とは一線を画す新しい政治参加のスタイルだ。また、今回の新型仕分けを見て、ソーシャルメディアが政治参加の垣根を低くする最適の道具であることも改めて感じた。同時に、新聞と読者の距離を縮める道具にもなり得るはずで、新聞のあり方を考える上での大きなヒントをもらった気がした。
双方向型の新聞。今年はそんな新聞を目指しながら、記者クラブ発のつぶやきを続けていきたい。【東京経済部】