史上最年長７５歳、黒田夏子さん「見つけて下さりありがとう」…芥川賞

安部さん（左）、朝井さん（中）とともに記念撮影に応じる芥川賞を受賞した黒田さん（右）

　第１４８回芥川・直木賞（日本文学振興会主催）の選考会が１６日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は黒田夏子さん（７５）の「ａｂさんご」（早稲田文学５号）、直木賞は朝井リョウさん（２３）の「何者」（新潮社）と安部龍太郎さん（５７）の「等伯」（日本経済新聞出版社）に決まった。黒田さんは両賞を通じて史上最年長、朝井さんは両賞初の平成生まれ、戦後では史上最年少の直木賞受賞となる。授賞式は２月下旬、都内で行われる。

　写真撮影で手を合わせた瞬間だった。笑顔を浮かべる黒田さんは、緊張で顔をこわばらせる朝井さんを心配するように見上げた。年の差５２歳。孫の卒業式に出席したおばあちゃんのような表情で、互いの受賞を祝福した。

　伸びた背筋が若々しい黒田さんは「生きているうちに見つけて下さいましてありがとうございました」とあいさつ。７５歳９か月。１９７４年「月山」で芥川賞を受賞した森敦さん（故人）の６１歳１１か月、８９年「小伝抄」で直木賞を受賞した星川清司さん（故人）の６８歳２か月の最年長記録を更新した。

　５歳の時に物語を書き始め、早大時代に同人誌を主宰。６３年に読売短編小説新人賞に入選した後、高校教師、校正者として働く傍らで小説を書き続けてきた。「長い長い時間でした」

　昨年９月に早稲田文学新人賞を受けた作品は、横書きで固有名詞と片仮名を使わない独特の文体で、ある家族の歴史を描いていく物語。選考会では圧倒的な支持を得て、第１回投票で過半数の得票を得た。

　１作書くのに約１０年を費やしただけに、次回作について問われると「生きているかどうかも分かりません」として「今まで書いてきたものをさかのぼって本にしたい。生きているうちに間に合えば」。年を重ねても、願い続ければ夢はかなう。高齢者に勇気を与える栄冠となった。

（2013年1月17日06時03分  スポーツ報知）

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