公務員・川内、イタタ　パスポート忘れ自腹８０万円…マラソン

パスポート忘れに気づき、空港内のコーヒーショップでうなだれる川内

航空券のキャンセルと自腹を切っての購入を決意

母の美加さんに連絡し、パスポートの到着を待つ

パスポートを手に空港内を全力疾走

　川内、イタタ…。公務員ランナーの川内優輝（２５）＝埼玉県庁＝が１６日、エジプト国際マラソン（１８日、ルクソール）の前に“失速”した。成田空港で、パスポートを埼玉県久喜市内の自宅に忘れたことに気づき、エジプト航空のチケットをキャンセル。自腹で８０万円を払い、カタール航空の往復便に振り替えた。パスポートは母の美加さん（４７）が届け、間一髪で“１泊４日”の弾丸ツアーに旅立った。

　１８時５０分。背中に「ＳＡＩＴＡＭＡ」の文字が入った緑と白のジャージーを着て成田空港に現れた川内は「やばいです」とパニック状態だった。かばんに入れたはずのパスポートがない。慌てて母親に連絡したが、出発は２０時５０分。エジプト政府の招待で乗るはずだったビジネスクラスを、あきらめるしかなかった。

　仕方なく２２時１０分の便へ振り替えた。２０時３５分、母の到着を知ると国内最高峰の市民ランナーは、列車のホームに走り出した。パスポートを受け取り、右手に握り締めて発券カウンターへ自慢の快足を飛ばした。ようやくエジプト行きの航空券を手にしたが、代償は大きかった。当日販売のチケットは正規料金だけで、往復８０万円。２０１１年度の埼玉県職員３２歳の平均給与は２７万８０００円。２５歳の川内にとって、給料３か月半分の大出費となった。「やむを得ないです。自分が悪いので」。消え入るような声で肩を落とした。

　レース前日の１７日には、カイロで子供たちと交流する予定だったが、やむなくキャンセル。「人生で一番、焦りました」。関係各所に電話で謝罪し、何度も頭を下げた。「招待を受けたレースは断らない」が川内のモットー。優勝賞金で思わぬ支出を補てんしようにも、大会の優勝賞金は０円だ。

　◆川内のドタバタ
  ▽１８時５０分　成田空港に着き、パスポート忘れに気づく。
  ▽１９時１５分　コーヒーハウスで肩を落として母の美加さんを待つ。
  ▽１９時３７分　エジプト航空でキャンセル手続き。
  ▽２０時３５分　美加さんが到着。
  ▽２０時４５分　カタール航空の発券手続き。
  ▽２１時１０分　チェックイン。
  ▽２１時２１分　出国カウンターへ。
  ▽２２時１０分　やっと出発。