アベノミクス・安倍経済政策:期待と課題 金融緩和まだ足りぬ 元日銀審議委員・中原伸之氏
毎日新聞 2013年01月17日 東京朝刊
−−安倍晋三首相はデフレ脱却と経済再生に向けて、日銀に大胆な金融緩和を要請しています。
◆04年から08年まで景気が良かったのは、日銀が01年から5年間実施した量的緩和政策が効果をあげたからだ。しかし、日銀は06年3月に量的緩和を解除し、07年には政策金利を0・5%まで引き上げた。この二つが(景気低迷を再来させ、デフレを長引かせた)大きな敗因だ。08年のリーマン・ショック以降で言えば、日銀のお金の供給量が足りない。米国も英国もお金の供給量を増やしているのに、日本だけが伸びていない。
−−日銀は「GDP(国内総生産)比で見た通貨供給量は世界トップレベル」とし、強力な緩和を行っていると主張しています。
◆日本のGDPは他国のように拡大しておらず、(中央銀行が供給するお金である)ベースマネーをGDPで割れば、(分母が小さい分)見掛けの供給量が大きく見えるのは当たり前だ。それを根拠に「強力な緩和をしている」と主張しても意味がない。デフレ脱却を目指すなら、日銀は(市場からの国債買い入れ拡大などで)お金の供給量をもっと増やすべきだ。(民間銀行が日銀の口座に預ける)当座預金残高を100兆円程度までに引き上げ、どの程度物価が上がるか見続ければよい。
−−政府の緩和圧力には日銀の独立性が損なわれるとの懸念もあります。また、行き過ぎた緩和が長期金利急騰や超インフレにつながる心配は?
◆独立とは自分の手で勝ち取るもの。(デフレ脱却など)実績も上げていないのに、偉そうな顔で独立性を主張しても認められない。私は日銀を外から見ている評論家とは違う。(日銀審議委員として)ゼロ金利や量的緩和などさまざまな政策を進めてきた。金融政策に限界があるのは当然だが、その限界を少しずつでいいから破っていく努力を続けるべきではないか。物価が上がり出したら少し(緩和の)スピードを緩めるなどやり方はいくらでもある。【聞き手・三沢耕平】=随時掲載
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