記者の目:大震災と宗教者=平元英治(RT編集部)

毎日新聞 2012年07月12日 01時04分

 「宗教者の活動は布教と表裏一体。被災者支援は公的機関が主になるべきだ」と考える人もいると思う。被災地支援など社会貢献活動にボランティアとはいえ宗教が関与することへのアレルギーや違和感は欧米より日本で強い。憲法20条は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない」と定める。だが77年の最高裁判決は国(行政)と宗教との関係をこう指摘する。「かかわり合いを持つことを全く許さないとするものではない」。そして政教分離の原則に反するのは「社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合」と判断した。被災者に寄り添い、東北の復旧・復興にも一定の役割を果たすということを考えれば、震災後の宗教者の活動は「相当とされる限度」の範囲内とみるのが適切ではないか。

 宗教界では原発の慎重な運用や全廃を求める動きも出ている。104の仏教団体が加盟する「全日本仏教会」は昨年12月「原発によらない生き方を求めて」との宣言文を発表した。「日本キリスト教連合会」に加盟するキリスト教系57団体のうち4団体も同様の声明を出している。

 キリスト教団体の一つ、日本聖公会東京教区は今年4月、原発全廃を政府に要望した。東京都清瀬市の同教区司祭、井口諭さん(61)は「政治に判断を委ねるべきだ」との慎重意見が内部にもあったと言う。それを説得したうえでの要望だった。政治的な問題でもある原発の存廃論議に意見を示すことへの是非はあるだろうが、宗教界が原発を将来の人々の生活や生命にかかわる深刻な問題として無視できないところまできていると解釈している。

 被災者の心の支援や将来の原発のあり方を決めることは日本が将来にわたって取り組むテーマだ。善を希求する点ではどの宗教も共通していると思う。宗教者の善意が社会に活用されることを願う。(元仙台支局)

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