アルジェリア拘束:マリへの仏軍介入への報復措置か
毎日新聞 2013年01月16日 23時58分(最終更新 01月17日 01時25分)
【ヨハネスブルク服部正法、パリ宮川裕章】北アフリカ・アルジェリアで16日、イスラム武装勢力による日本人拘束事件が起きた。背景にあるのは、イスラム過激派が国土の半分以上を占拠する隣国マリの混乱だ。被害者にはフランス人が含まれ、仏軍によるマリ軍事介入へのイスラム過激派の報復措置との見方が出ており、地域の混迷は一段と深まりそうだ。
マリでは昨年3月、首都バマコで政府軍反乱部隊によるクーデターが発生。中央政府の混乱に乗じて、アルジェリアに隣接する北部で反政府武装組織が攻勢を強め、同4月に北部を制圧し、「独立」を宣言した。
「独立」を主導したのは北部の遊牧民による世俗主義武装勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」だったが、次第に増勢したイスラム過激派がMNLAを北部の都市部から放逐し、過激派による北部支配が固まった。
過激派は大別すると▽北部遊牧民主体のアンサル・ディーン▽国際テロ組織アルカイダの北アフリカ組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」▽「西アフリカ統一聖戦運動(MUJAO)」−−の3組織。3組織は連携して北部支配を強化し、シャリア(イスラム法)の厳格な適用を進めている。
AQIMなど武装勢力はこれまで身代金目的で欧米人らを誘拐。AQIMは07年にブーテフリカ・アルジェリア大統領を狙った爆弾テロを起こし、10年には拘束したフランス人の奪還作戦を実施した仏軍と交戦している。
国際社会では、多数の外国人過激派の流入を受け、「テロの温床」となる「第2のアフガニスタン化」(ルドリアン仏国防相)の懸念が高まった。このため、マリ周辺国でつくる「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」は過激派を北部から掃討するため部隊派遣を決定。国連安全保障理事会が昨年12月、派遣を承認した。
ところが今月10日に過激派が中部の政府軍の要衝を新たに攻略したのを転機に仏軍が過激派の南進阻止を目的に軍事介入。アルジェリア政府は13日、仏軍の領空通過を認め、14日までにマリとの国境を封鎖した。
今回の拘束事件は仏軍が北部の過激派拠点を空爆するなど戦闘が激化し、過激派側がフランスに対する報復の声を強める中で起きており、フランス政府に対する反発が背景にあるとの見方が強まっている。