厚生労働省が2013年度から生活保護の支給水準を引き下げる方向で与党と本格調整に入った。自民党も10%減額を衆院選で公約しており、具体的な引き下げ幅は13年度予算編成のなかで月内にも決定される見通しだ。
引き下げが検討されているのは生活保護費全体の約35%を占める食費や光熱・水道費などの基準額だ。同省の検証結果では、現在支給されている基準額は保護を受けていない一般の低所得世帯の生活費に比べて、夫婦と子供2人の4人世帯で月約2万7千円(14.2%)多かった。
支給水準の引き下げには生活困窮者の支援団体などからの反対が強い。だが、高齢の受給者などへの影響を配慮しつつ、働き盛りの受給者への支給額を適正な水準に見直すことは急務だ。保護を受けて暮らすより、働く方が損になる仕組みがある限り、働ける受給者の自立が進まないからだ。
長引く不況で生活保護の受給者は今や213万人を超え、12年度の給付総額は3兆7千億円に上る見込みだ。働けるのに受給している人はこのうち約40万人と推定される。就職して生活保護から脱した人はごくわずかだ。
重要なのは、生活保護を受けている人が就労意欲を持てる仕組みを整えることだ。最低賃金で働く人の手取り収入が保護の支給水準を下回る地域では、支給額の引き下げがこの逆転現象の解消にもつながる。受給者が働く意欲を持ちやすくなる。
本当に生活保護が必要な人だけが受給できる仕組みにすることで、制度の持続性が高まる。
保護費全体のほぼ半分を占める医療費の抑制にも取り組まなければならない。受給者は病院窓口での自己負担がないが、一部でも負担するようになれば病院側の意識も変わり、過剰な投薬などに歯止めがかかるはずだ。
支給水準の見直しとあわせて厚労省が示した生活困窮者対策案には、生活保護を受けていない人でも、就労や住宅などの相談ができる窓口を全国に設ける施策が盛り込まれた。
雇用情勢が厳しいなかで不安定な立場の非正規労働者として働く人は多い。病気やけがをきっかけに職を失い、生活保護を申請する例も少なくない。早い段階でこうした人たちの相談にのる支援策は保護に頼る人を減らすうえで効果があるだろう。
厚生労働省、生活保護
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