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2013年1月17日(木)付

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生活保護―子どもの貧困に光を

貧困家庭の子どもたちのことを考えれば、生活保護の引き下げは慎重に対応すべきだ。厚生労働省が、生活保護世帯の生活費(生活扶助額)の検証結果を公表した。[記事全文]

警視庁敗訴―当時の幹部に求償せよ

恥の上塗りというほかない。オウム真理教の流れをくむ宗教団体「アレフ」がおこした裁判で、警視庁が敗訴した。国松孝次・警察庁長官銃撃事件の時効が成立し[記事全文]

生活保護―子どもの貧困に光を

 貧困家庭の子どもたちのことを考えれば、生活保護の引き下げは慎重に対応すべきだ。

 厚生労働省が、生活保護世帯の生活費(生活扶助額)の検証結果を公表した。

 年収が下から10%の低所得世帯と比べ、生活保護世帯の暮らしぶりが高すぎたり、低すぎたりしないようにするためだ。

 検証によると、子どもがいる夫婦世帯や母子世帯では、生活扶助額の方が低所得世帯の消費支出より多かった。

 生活扶助費が子どもの数に応じて増えるのに対し、賃金はそれで増えるわけではないので、差が開いてしまうようだ。

 自民党は総選挙で生活保護基準の1割カットを掲げ、田村厚生労働相も引き下げる方針を示している。一方、連立を組む公明党は慎重だ。実際の基準は新年度予算の編成で決まる。

 保護を受けていない世帯が働く意欲を失わないよう、バランスをとることは必要だ。

 ただ単純な引き下げでは、子どもを持つ生活保護世帯の生活が一気に苦しくなりかねない。

 生活保護基準が下がれば、一般の低所得者世帯への影響もある。就学援助などの利用条件も厳しくなるからだ。

 所得が低い世帯で育つと、教育を受ける機会などで不利になり、安定した仕事が見つけにくい。生活保護を受ける世帯主の4人に1人は、自ら育った家庭も生活保護世帯という調査結果もある。

 「貧困の連鎖」を防ぐためにも、教育を含め子どもの成長にかかわる基本的な環境は社会が整えなければならない。

 成育環境が原因で、子どもが才能を開花させられないとしたら、社会にとって損失だ。

 お金を渡せば解決する問題でもない。勉強だけでなく、社会で生きる知恵を伝え、自立まで継続的にかかわる。そんな場づくりが必要だ。

 厚労省は、より広い範囲の生活困窮者を対象にした支援策を検討中で、子ども・若者の貧困防止は重要な柱だ。将来の生活保護費を減らすためにも、必要な財源を確保し、社会全体で取り組む必要がある。

 一方、安倍政権は祖父母が孫に教育資金をまとめて贈った場合、贈与税がかからない減税案を検討中だ。

 現役世代にお金が回り消費を活性化する面はあろう。だが、裕福な祖父母を持つ子どもと、そうでない子どもの格差は拡大するだろう。

 「自分の孫」だけでなく、すべての子どもの育ちを支える社会でありたい。

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警視庁敗訴―当時の幹部に求償せよ

 恥の上塗りというほかない。

 オウム真理教の流れをくむ宗教団体「アレフ」がおこした裁判で、警視庁が敗訴した。

 国松孝次・警察庁長官銃撃事件の時効が成立した直後の2010年3月、警視庁公安部長が会見し、「オウムが敢行した組織的テロだった」と公表するなどしたことが、アレフの名誉を傷つけたと判断された。

 東京地裁は、所管する東京都に対し、賠償金100万円を教団に支払うことと、知事名の謝罪文を差し出すことを命じた。

 警視庁の完敗である。

 私たちは会見当時の社説で、警察のやり方を批判した。膨大な人手と費用、時間をかけながら犯人を検挙できなかったのに、失敗を棚にあげ、オウムの犯行と断じたのだ。

 こんな理不尽な行動がゆるされるようでは法治国家といえない。公権力が違法行為に進んで手を染めてどうするのか。

 判決理由にも「無罪推定の原則に反する」「わが国の刑事司法制度の基本原則を根底からゆるがす」といった、厳しく、かつ当然の言葉がならぶ。

 裁判で警視庁がくり広げた主張にもあきれてしまう。

 「仮にオウムの名誉を傷つけたとしても、アレフは別の団体なので賠償を求めることはできない」と反論したのだ。

 ではなぜアレフは、「オウム真理教の教義を広め、その実現を目的とする団体」として、法律にもとづく観察処分をいまも受けているのか。

 治安をあずかる機関がこんな支離滅裂なことを言う。信頼を著しくおとしめる行いである。

 一部の警察官の不祥事とはレベルが違う。捜査を主導した公安警察の失態を覆いかくし、組織の体面をただ守るための会見だったのは明らかだ。

 かつて強調した「公表することの公益性」を、法廷で主張できなかったのも、説得力に欠ける言い分であることを自ら認めたからではないか。

 判決を受けいれ、これ以上恥を重ねるのを避けるべきだ。

 賠償金は東京都、つまり都民の税金から支出される。国家賠償法は、被害者がたしかに救済されるよう、責任は自治体が負うと定めているためだ。

 一方で、「公務員に故意や重大な過失があったとき、自治体はその公務員に対して求償できる」との条文もある。

 今回の公表行為は、まさにこの規定にあてはまるだろう。

 当時の警視庁幹部に支払いを求め、しっかりけじめをつける必要がある。都民に尻ぬぐいさせるのはおかしい。

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