記者の目:大震災と宗教者=平元英治(RT編集部)

毎日新聞 2012年07月12日 01時04分

 東日本大震災では多くの尊い命が失われ、生と死の苦悩は切実に被災者の身に迫った。宗教者も動いている。仏教僧やキリスト教の牧師たちが、悲嘆に暮れる被災者と向き合う「移動喫茶」をともに開き、「脱原発」を呼びかける宗教者もいる。教えの違いを超え、被災者に寄り添う姿勢に、宗教者が社会で果たすべき新たな役割も見え、心強さを感じている。

 ◇合同で移動喫茶、悩みや不安聞く

 「カフェ・デ・モンク」という移動喫茶がある。被災地・宮城県でほぼ毎週1回開かれ、仏教やキリスト教の宗教者が被災者の声に耳を傾けている。名のモンクは英語の「僧侶(monk)」と日本語の「文句」をかけている。

 同県石巻市の仮設住宅の会に伺うと、被災者約80人がコーヒーやケーキを味わいながら僧侶ら十数人と約3時間語り合っていた。木村良子さん(62)は約40年、夫の由行さん(63)ら家族でカキ養殖業を営んでいたという。栄養を蓄えたカキの収穫は何ものにも代えられない喜びだった。だが、津波は義父(当時87歳)の命とすべての養殖設備を奪い去った。「自殺したいと何度も思った」。良子さんの声に僧侶は静かに耳を傾けていた。

 「被災者は震災が自分たちに与えたものは何か、その意味を何年もかけて問い直す。その思いに向き合えたら」と同県栗原市の僧侶、金田諦応さん(56)は話す。

 今年3月には同県南三陸町で曹洞宗の僧侶8人とプロテスタントの牧師2人が合同で犠牲者の慰霊をした。10人は「鎮魂」と書かれた旗を掲げて約7キロを歩き、道々に読経と賛美歌が響いた。「被災地に尽くしたい。その思いと比べると教えの違いなんて小さなこと」と栗原市の僧侶、小野大竜さん(36)が話せば、仙台市の牧師、川上直哉さん(38)も「異なる宗教への尊敬が強まった」と語る。

 連携の動きは東北だけではない。学者ら44人が呼びかけて、昨年4月に東京都内で「宗教者災害支援連絡会」を結成した。宗教者の被災地での活動を支えるためで、ほぼ2カ月に1回集って情報を交換している。今年5月の会合では、被災地を訪れた金沢市の真言宗僧侶、辻雅栄さん(51)が足を洗って心もほぐす取り組みを報告した。連絡会代表の島薗進・東京大教授(宗教学)は「奈良時代の僧・行基以来、日本では宗教者が災害で苦しむ人たちを助けてきた」と話す。行基は諸国を巡り、民衆の間に入って橋や貯水池を建設した。今だからこそ、行基から続く自発的な行動を被災地で生かすことが必要だと島薗教授は話す。

 ◇原発問題にも積極的に発言

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