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IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第2話 クラス代表決定戦
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作成日時 : 2011/07/02 23:06
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「ねえ。聞いた?」
「1年1組の事よね?」
「そうそう。織斑君と、イギリス代表候補の子が、クラス代表の座を争って、決闘だって。」
「それって、織斑君に勝ち目ないじゃない。」
「ううん。今まで政府の機密だったんだけど、織斑君て、ISの実力は代表候補クラスらしいよ。」
「しかも、今日、専用機が届くんだけど、あの篠ノ之博士が自ら開発したISなんだって。」
「うっそー!」
「しかも、1組の篠ノ之さんて、篠ノ之博士の妹なんだって。」
食堂では、他のクラスの生徒達が、今日の決闘について、噂をしていた。
一夏は、溜息をつくだけだが、箒は終始硬い表情をしていた。
「なあ、箒。」
「なんだ。今は食事の時間だ。黙って食事をしていろ。」
SHRから、ずっと箒はこの調子だ。
束さんの妹だって事は隠していたみたいだから、知られたくなかったんだろうな。
それにしても、箒と束さんて、昔は仲良かったよな。
なんで、こんなふうになったんだ?
やっぱり、あれか。
ISの訓練を受けるようになってから知ったんだが、ISが各国の軍事力の中心になってから、束さんは国家の重要人物になって、暗殺や誘拐から守る為に、箒達はばらばらにされて保護。というより監視か。
そうなったそうだ。
そして、束さんが行方不明になってからは、その行方に関する情報を得る為に尋問も受けたらしい。
子供に尋問するか?エグイことするな、日本政府。
それが原因で、箒は束さんの事を口にしたがらないんだろう。
姉妹は仲良くするべきだと思うけど、当人同士の問題だからなあ。
「私の事を、気にしている場合か?お前は、決闘で勝つことだけに専念していろ。同門が負ける姿を見て、いい気はしないからな。」
いつもより早く昼飯を済ませた箒は、そう言って、さっさとトレイを片づけて食堂を去った。
応援、か?
『なんで、私は…。』
教室に戻りながら、食堂での態度を箒は後悔していた。
束の行動で、家族は強制的にばらばらにされて、行方不明になった時には尋問までされたのだから、恨む権利くらいはあるはずだ。
けれども、一夏に対してあんな態度を取るのは筋違いだ。
それは、箒も理解している。
理解しているのだが、どうしても、一夏に対してはああいう態度になってしまう。
『私は、一夏を…。』
手をそっと握り締める。
「じゃあ。織斑。頑張れよ。」
「はい。ありがとうございます。」
箒が見たのは、赤いリボン。
3年生と親しげに話をして別れた、一夏だった。
「じゃあ。織斑。頑張れよ。」
「はい。ありがとうございます。」
俺が話していたのは、3年生でカナダの国家代表候補のダリル・ケイシー先輩。
第二世代ISヘル・ハウンドVer2.5を専用機として、持っているそうだ。
今度、手合わせする約束をした。
3年生か、相当に手ごわいだろうな。
でも、手合わせしたくなる。
こういう、手合わせは好きなので、俺は大歓迎だ。
大会とかは、興味無いけどな。
教室に戻る途中、箒が視界に入った。
『あいつは…!私は、こんなに…。』
食堂での態度、一夏へのそっけなさ、双方に後悔しているのに、当の一夏は、上級生と仲良くおしゃべり。
黒髪をショートカットにした、褐色の肌の活動的そうな美人。
箒も艶やかな黒髪を長く伸ばした美人なのだが、自分が美人だとは思った事がない箒は、ダリルにコンプレックスを持った。
「おお。箒。」
俺は、箒に向かって手を振った。
その時である。
箒が、ずかずかと近づいてきて、俺の足を踏もうとした。
「な、何だよ。いきなり?」
年月は人を変えると言うが、箒ってこんなに暴力的だったか。
これは、絶対、束さんのせいじゃないぞ。
「ふん!」
さっきとは全く違う感じで、箒は機嫌が悪いようだ。
俺、何かしたか?
「はあ。凄い人数ですね。」
アリーナのオペレーションルームにいる真耶はモニターに映る観客を見て、驚きの声を上げる。
一夏とセシリアの決闘の噂は学園中を掛けめぐり、学年を問わず見届けようと多数の生徒が押し寄せた。
「男がISで戦うのは、これが初めて。しかも、相手は代表候補だからな。」
モニターの一つに、セシリアのパーソナルデータが表示される。
「IS適性はA。今年の新入生の中でも、トップクラスですからね。」
ISに搭乗するには、IS適性がなければならない。
下はCから、上はS。
但し、適性Sランクとなると、モンド・グロッソの部門別優勝者ヴァルキリーや、総合優勝のブリュンヒルデクラスとなるので、ほとんど現れる事がない。CとBが半々、そして、全入学者の1割にも満たない割合でAクラスの新入生が入学してくる。
そして、Aクラスはほとんど全員が、各国から送り込まれた代表候補である。
「問題が、織斑君ですね。パーソナルデータは日本政府どころか、委員会から極秘事項扱いされていますから。私も見るのは初めてです。」
一夏のパーソナルデータは、ほとんどが国際IS委員会から極秘事項扱いされていて、学園でも閲覧が許可されるのは、IS操縦を教える教師に、学園の理事長だけである。
そして、閲覧するには守秘義務を遵守する誓約書を、山のように書かされる。
もし、この誓約を破れば、残りの人生の大半を檻の中で過ごす事になる。
「これって…。織斑先生。」
「私も見た時は、驚いたよ。届いたようだな。」
ピットの中で、ISを装着する際に着るISスーツに着替えた俺は、専用機が届くのを待っていた。
「箒、落ちつけよ。」
俺の目の前には、苛立たしそうにピットの中をうろうろする箒がいた。
と、いうか、そもそも何で箒がいるんだ?
ま、別にいいけどさ。
「遅い。まったく、あの人は…。」
「織斑君。今、専用機が届きましたよ。」
お、届いたか。
ピットにISが運ばれる。
「これが、織斑君の専用機。白式です。」
灰色に近い白の装甲を持つ、IS。
俺の専用機である、白式がそこにあった。
「時間がない。今までのデータを移植したら、初期化と最適化は、実戦の中で済ませろ。」
「解りました。」
俺は、コンソールにメモリーを差し込んで、今までの訓練データを白式に移植する。
『ん?これって…。』
やれやれ、面倒なISだな。
「織斑先生。初期化も最適化も終ってないISでは、織斑君が不利すぎます。」
「いいんですよ。山田先生。これで。」
驚いて千冬姉に少し時間をおくように言う山田先生に、俺はそう言う。
「一夏。」
「ん?」
箒が、どこか心配そうに俺を見る。
目があって少ししてから、箒は頬を少し染めて、視線をそらす。
「無様な様は、見せるなよ。」
「ああ。それじゃあ、行ってくる。」
ピットのリニアカタパルトで、俺はアリーナに出る。
アリーナには、ISを展開したオルコットが既にいた。
「逃げずに、来た事は褒めて差し上げますわ。」
「そりゃ、どうも。」
「いかがかしら?今なら、まだ、土下座をして謝るのならば、許して差し上げましてよ。」
いかにも、勝利を確信して見下した表情で、オルコットは俺を見ていた。
やれやれ、どこまでも、俺の嫌いな事をしてくれるな。
「時間がないから、始めようぜ。」
俺の言い方に不機嫌になったのか、オルコットの表情が険しくなる。
俺は、今でも、充分に不機嫌だけどな。
装備されている、近接戦闘用ブレードを実体化させる。
「そうですの。少しは、手加減して差し上げようかと思っていましたけれど、徹底的に叩きのめして差し上げますわ。」
そう言って、オルコットは、手に持っているライフルの狙いを定める。
『左肩部に照準をロックされています。』
白式のハイパーセンサーが、俺に知らせる。
だが、その前に、俺はその事を知っている。
「左肩、もらいましたわ。」
ライフルから、レーザーが発射される。
そうはいかないぜ。
オルコットがライフルの引き金を引くと同時に、俺は回避した。
『初期化と最適化が終わってないから、反応が悪い。』
だけど、やれないわけじゃない。
大丈夫だ。
「イギリス製第三世代ISブルー・ティアーズ。中遠距離戦を得意とする機体ですね。」
「ああ。そして、常に有利なポジションをキープできるように、高い機動性を与えられている。」
モニターには、セシリアの射撃を回避し続ける一夏の姿が映されている。
「白式の装備は、見た所、あの近接戦闘用ブレードだけ。不利ですね。」
「そうかな?私は、現役時代、同じような状況でも勝ちあがってきた。やりようがないわけじゃない。」
真耶にそう答えながら、千冬はモニターに映る一夏のセシリアの戦いを見続けていた。
「織斑君。攻撃されっぱなし。」
「負けちゃうのかな?」
1年生が、一夏の敗北を予想する。
「どうッスかねえ?先輩。新入生は、織斑の負けだと考えているみたいですけど。」
癖っ毛の金髪を長く伸ばした2年生が、ダリルに話しかける。
フォルテ・サファイア。
オーストラリアの代表候補で、第二世代ISコールドブラッドを専用機とする。
「お前もそう思うのか?フォルテ。」
「さあ、どうッスかね?ただ、言える事は。」
「言える事は?」
「オルコットが気づいてない内に、2人の距離が縮まっているってことッスね。」
「気づいてたか。」
「当然。」
それこそが、勝負の分かれ目になる事を、2人は知っていた。
『ブルー・ティアーズ。中遠距離戦を主眼として設計されたISか。なるほどね。』
オルコットの青い装甲を持つISのデータは、ある程度頭に入っている。
成程、オルコットの腕もいいな。
伊達に、代表候補じゃないってことか。
「どうなさいましたの?逃げてばかりでは、勝利はありませんわよ。」
だろうな。
それには、俺も賛成だよ。
「それに、このブルー・ティアーズに射撃兵装一つないISで挑もうなんて、お笑い草ですわ。いくら、篠ノ之博士自ら開発したISでも、所詮、男では、性能を活かす事は出来ないようですわね。」
さて。そいつは、どうかな?
「長々と、戦っている気はありませんわ。踊りなさい。私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で。」
頃合いか。
オルコットが、非固定式の肩部パーツの一部を分離した時に、俺は一撃を加えた。
よし、いい手ごたえだ。
「ああ。あいつ、全然、気づいてなかったッスね。」
「そうだな。徐々に、織斑の得意のレンジに近づいていたことにな。大方、近接兵装しかないISじゃあ、ブルー・ティアーズには勝てないとでも、思っていたんだろうな。」
ダリルとフォルテは、溜息混じりに言った。
『そんな…。何時の間に。』
強烈な一撃を喰らって、ブルー・ティアーズのシールドが一気に削られる。
ISの試合では、どちらかのシールドが0になった方が、負けである。
一夏は、セシリアの攻撃を一度も喰らっていない。
逆に、自分は、かなりシールドを削られた。
『なんて…、強い、瞳…。』
決闘だというのに、セシリアは一夏の瞳に惹かれる自分を感じていた。
『何を言っているの?セシリア・オルコット。今は、決闘ですのよ。』
セシリアは、気持ちを切り替える。
『とにかく、距離を取らないと。』
セシリアは、一夏を引き離そうとするが、今度は一向に距離が縮まらない。
「どうやら、円舞曲を踊るのは、そっちだったみたいだな。」
一夏の一撃が、再び決まる。
間合い。
自分にとっての、絶好の距離。
ダリルとフォルテが予想した通り、一夏はセシリアの攻撃を回避しながら、二人の距離を、少しずつ自分の間合いに近付けていた。
「これで、勝ったと思わないでくださいます!?」
ブルー・ティアーズに搭載された、特殊兵装。
ビット型自立稼働兵器ブルー・ティアーズ。
機体の名前の由来となった4つのビットから、レーザーが発射されるが、一夏は全て回避しながら、セシリアを追い詰めていった。
「凄い…。」
「徐々に徐々に、織斑の間合いに近付いていた事に、まるで気が付いていなかった。大方、近接型は射撃型には勝てないとでも思っていたのだろう。浅はかな事だ。」
真耶は驚嘆し、千冬はつまらなさそうに、鼻を鳴らした。
「でも、織斑先生。セシリアは代表候補の訓練で、近接戦闘の訓練も受けていたはず。どうして、気づかなかったんですか?」
代表候補となれば、ISでも生身でも様々な状況に対処できるように、訓練を受ける。
それは、セシリアも同様だ。
「簡単に言えば、瞳だ。そして、それこそが、織斑を怒らせている。この分では、勝敗がどうであれ、クラス代表はオルコットになるかもしれんな…。」
そう言って、千冬は黙って戦いを見続けた。
『このままでは…。向こうは、ブルー・ティアーズは4つしかないと思いこんでいる。なら、挽回する手はありますわね。』
ブルー・ティアーズのシールドは、7割以上削られていた。
しかし、セシリアとて、代表候補である。
不利な状況でも、挽回する手を考えていた。
『危険ですが、次の攻撃で…。』
セシリアは腹をくくって、一夏の次の攻撃に備えた。
次の瞬間、一夏の斬撃がセシリアを襲う。
「掛かりましたわね!ブルー・ティアーズは、4基だけではなくってよ。」
ブルー・ティアーズは、4基は肩部パーツに左右2基ずつだが、背部パーツに2基ミサイルランチャーとして装備されている。
セシリアは、白式が近接兵装しか持っていない事を逆手にとって、接近してきた所に、至近距離から攻撃を命中させて、活路を見出そうとした。
「近距離の備えがないなんて、思ってないさ。」
一夏は白式の姿勢制御スラスターをコントロールして、僅かに下がりながらミサイルを撃破してすれ違いながら、横薙ぎの一撃を加える。
『くっ!えっ?』
背後に回った一夏に備えようとしたセシリアが見たのは、機体形状が変化した白式だった。
「あれって、まさか?」
「気づいたか。フォルテ。」
「ええ。こりゃ、決まりッスね。まさか、こういう事だったなんて。」
ダリルとフォルテは、白式の形状変化の意味を、察した。
ふう。やっと終わったか。
『初期化及び最適化終了。確認してください。』
モニターに映ったメッセージを見て、俺は白式の初期化と最適化が終わった事を確認する。
通常、専用機はパイロットに合わせて、サイズや各種パラメータを調整する。
それが、初期化と最適化で、その後に起こるのが、第一形態移行だ。
ところが、白式はある程度戦闘経験を積ませないと、それが起きない仕様になっている。
束さんが、何考えてこんな仕様にしたのかは分からないが、面倒だよな。
第一形態移行が終了した白式は、シャープな印象を持たせる純白の装甲を持つISになっていた。
「第一形態移行?まさか、初期設定のままで戦っていたんですの?」
オルコットは、気づいたか。
ま、代表候補だから当たり前か。
モニターに装備の一覧が、表示される。
展開可能装備一覧。
近接特化ブレード:雪片弐型
『雪片弐型。千冬姉が使っていた雪片の発展型か。』
束さんも、気の利いた事するじゃないか。
そう考えていると、雪片が変形してエネルギー状の刃が出現する。
ワンオフアビリティ:エネルギー消滅能力、零落白夜発動。
ワンオフアビリティ。
パイロットとISとの相性が最高になった際に、自然発生するその機体固有の特殊能力である。
通常は、第一形態移行後の第二形態移行から発生し、確率は天文学的に低い。
しかし、白式は第一形態移行から発動していた。
そして、零落白夜は、千冬姉が現役時代に使用していたIS暮桜のワンオフアビリティでもある。
「俺は最高の姉さんを持ったよ。鬼より怖いけどな。さて、終らせようぜ。姉さんの名誉くらい、多少は守れる所を見てもらいたいし。何より…。」
俺は、雪片を握り直す。
「守られるのは、終りにしたい。今度は、俺が自分にとって大事な物を守る。守れるようになりたい。」
そうだ。
どうして、俺がISを動かせるかなんてわからない。
ああ。理由なんてどうでもいい。
俺は、今度は少しでも大事な物を守れるように、なりたいんだ。
『何を、言っていますの?』
一夏の言葉が理解できなかったセシリアだが、また、一夏の瞳に惹かれていた。
活力と決意に満ち溢れた、強い瞳に。
『あの人とは、まるで別人。まるで…。』
そう思ったが、必死にそれを振り払う。
「私は、セシリア・オルコット。イギリス代表候補。その誇りに賭けて、そう簡単には負けられません!」
セシリアが、最後に起死回生のチャンスを見出そうとする。
しかし、そう思った時には、ISの機動スキル、イグニッション・ブーストで瞬時に迫った一夏の零落白夜の一撃が、ブルー・ティアーズのシールドを一気に0にしていた。
「勝者。織斑一夏。」
「強いな。」
「強いッスね。」
ダリルとフォルテが、一夏の技量に感嘆していた。
「フォルテ。」
「何スか?」
「あたしさ。手合わせする、約束したんだよ。」
「頑張ってくださいね。ちょっとでも、気を抜いたら、負け確定ッスよ。」
「お前、先輩を助けようって気にはならないのかよ。」
ダリルが、フォルテを恨めしそうに見る。
正直、1人しかいない3年の専用機持ちのダリルでも、一夏に勝つ確証はなかった。
それは、2人いる2年の専用機持ちの1人であるフォルテも、同じだった。
「ふん。まあまあだな。篠ノ之、もう出ろ。基本的には、ここは生徒が入れる場所じゃない。」
「あ。すいませんでした、失礼します。」
箒が、オペレーションルームから出る。
「凄いですね。報告書通りです。」
報告書には、一夏のISを使用しての訓練時間は、合計で150時間とあった。
通常ならば、300時間を超える。
訓練を担当した自衛隊のパイロットの考課表によると、全ての面で最高ランクの技量。
特に、近接戦闘においては飛び抜けた技量をもつ。と、ある。
ISの訓練時間が思ったより短く済んだので、その他の代表候補が受ける各種訓練も通常より多く受け、さらに他の様々な訓練を受けている。
銃火器の射撃訓練、CQB及びCQCの訓練はもちろんの事。
対空ミサイルや、対戦車ミサイルの使用訓練。
パラシュートを用いての、降下訓練。
その他にも、サバイバル訓練等も受けている。
元々、子供のころから剣術や古武術等で鍛えていただけに、一夏は極めて優秀な生徒だった。
さらには、各種機器やISの整備訓練も受けている。
既に、特殊部隊でも十分に任務につける技量に、達していた。
ここまでなら、委員会の極秘事項にはならなかっただろう。
だが、次の事項がその理由だった。
織斑一夏のIS適性:測定不能。最低でもSランク。
つまり、一夏のIS適性は、千冬や歴代の最強クラスのISパイロットをも凌ぐ事になる。
もし、各国のIS関係者がこの事を知ったなら、原因を探る為にどんな事でもやるだろう。
最悪、一夏を巡っての争いも起きる。
故に、一夏に関してのデータは、委員会が極秘事項に指定していた。
通常で適性を図っても、Aクラスを越える事のないように細工が施されている。
『とんでもない新入生が、来ましたね…。』
そう思いながら、オペレーションルームの機器をシャットダウンして、真耶と千冬はピットに向かった。
「で、いかがでした?弟さんの戦いぶりは。」
「悪くない。もっと精進する事だ。」
千冬はどこか恥ずかしさを隠すように、真耶に答える。
「またまた。本当は嬉しいんじゃないですか?初期設定時から、代表候補を圧倒しての勝利。嬉しくないはずがないと思いますけど。」
そんな千冬が微笑ましくなって、真耶はからかう様に言う。
「山田先生。どうだ?模擬戦でも。そうだな、5本勝負で。」
「い、いいえ。遠慮しておきます。」
「そうか。それは残念だ。」
からかう真耶に反撃が成功したので、千冬はにやりと笑った。
「さて。とにかく勝ったな。」
俺は白式を、展開状態から待機状態にした。
通常、ISは待機状態として、主にアクセサリーになっている。
ちなみに、俺はガントレットだ。
それにしても、ガントレットってアクセサリーじゃないぜ。
なんか、ごつい感じがするし。
完全に、束さんの趣味だな。
「一夏、見事だったな。」
「ああ、箒か。同門のお前に、恥をかかせずにすんだよ。」
今の俺の基礎は、千冬姉と一緒に、箒の親父さんの下で作ったからな。
負ける姿は、見せたくなかった。
もちろん、それ以上に、たった1人の家族である千冬姉には見せたくない。
だから、勝って、ほっとしている。
「織斑君。お疲れ様です。見事でしたね。」
山田先生が、ニコニコしてピットに入って来る。
「あ、山田先生、ありがとうございます。」
「それで、その、クラス代表の件なんですけど。」
その件か…。
答えは決まっているんだが、とりあえず聞いておくか。
「山田先生は、どう思っているんですか?」
こういう時は、回りくどい言い方をしないほうがいい。
「織斑君は、オルコットさんに対して、色々と言いたい事はあると思いますけど、やはり、和解して、織斑君がクラス代表になるべきだと思うんです。」
おいおい、それは悪い冗談だぜ。
今回の決闘で、あいつと和解する気なんてなくなったよ。
自分が受け持つクラスの生徒が喧嘩しているなんて、先生としてみれば辛いんだろうが、ここは引けないな。
「すいませんけど、オルコットと和解する気はないです。織斑先生、整備室は空いてますか?」
「第二整備室が空いている。白式の整備をするのか?」
「はい。細やかなセッティングをする必要があるので、やっておきたいんです。」
ISの整備は、専用機を含めて、通常はISの整備や開発に関する知識を学ぶ整備科の生徒や先生がやるけど、俺は自分でやれるように訓練をしてきたので自分でやる事にしている。
「解った。アリーナは、もう少し使えるように申請をしておく。できるだけ、早く済ませろよ。」
「すいません。ありがとうございます。」
俺は、千冬姉に礼を言って、整備室に向かう。
山田先生が、話を続けたいらしいが、俺にその気はない。
「待って下さい!一夏さん!」
俺を呼びとめる、オルコットの声が聞こえた。
まだ、ISスーツのままだ。
一夏さんて、何だよ。
「何だ?オルコット。お前と話すことなんて、無いぞ。じゃあな、俺は忙しい。」
振り向いて、オルコットにそう言ってから、俺は整備室に向かった。
戦いの時次第では、和解していただろうけど、今はする気には到底なれないな。
「一夏さん…。どうして…。」
セシリアは、肩を落とした。
「オルコット。」
「はい。」
千冬が、セシリアに歩み寄った。
「織斑と、和解したいのか?」
「はい…。でも、私は一夏さんに嫌われたみたいです。一夏さんを、散々侮辱したからですね…。身から出た錆ですわ。」
セシリアは、泣きそうな声で千冬の質問に答えた。
「違うな…。それが理由で無いよ。」
セシリアは、驚いたように顔を上げる。
「織斑先生。それはどういう事ですか?」
「山田先生も、気づいていないか…。」
千冬は、小さな溜息をついた。
「瞳だよ。戦いのときに、オルコットが織斑をどんな瞳で見ていたか、それが答えだ。」
セシリアと真耶の疑問に答えながら、千冬はメモリーをセシリアに渡す。
「さっきの戦いの録画だ。それを見て、自分で答えを導き出せ。それで駄目なら、クラス代表はお前になるな。」
セシリアに言って、千冬はピットから去る。
『もしかして…。』
ある事に気がついた箒は、千冬の後を追いかける。
『私の瞳…?』
メモリーを見ながら、セシリアはしばらく考え込んでいた。
『とにかく、見てみるしか、ありませんわね。』
セシリアは、自分の部屋に急いで帰った。
『やっぱり、細かな部分は、結構、微調整が必要だな。』
メインスラスターの調整をしながら、俺はコンソールで確認する。
ISには、高度な自動調整機能が搭載されているが、きちんと整備する、しないでは、いざという時に決定的な差が出る。
だからこそ、IS学園には整備科が存在する。
ちなみに、俺は整備に関する訓練も受けているので、白式の整備は自分でやる事にしている。
実際に、白式を操縦しているのは俺だから、どこの調整が必要か、一番わかっているしな。
『ハイパーセンサーの連動設定も、見ておくか。』
コンソールを操作して、別のデータを呼び出す。
しばらくして、整備を終えた一夏は白式を待機状態に戻したが、ある事を知らなかった。
『織斑…、一夏…。』
部屋に戻ったセシリアは、汗を流す為にシャワーを浴びていた。
『完敗ですわ…。実力に、大きな隔たりがありますもの…。それ以上に…。』
セシリアの脳裏に浮かんだのは、一夏の瞳だった。
媚びる色が無く、まっすぐで、強い意志と前に進もうとする力強さにあふれた瞳…。
『あの人とは、まるで違う…。』
セシリア・オルコットは、父親に恵まれなかった少女である。
男尊女卑の世であった頃から、セシリアの母はオルコット家が手掛けていた事業を努力の末に、飛躍的に成長させた。
そんな、オルコット家に入り婿として来たのが、セシリアの父だった。
元々、オルコット家が名家であり、階級意識が残っているイギリスの風潮もあって、父は卑屈だった。
父親と母親の距離は次第に遠くなり、セシリアが一緒にいるのは常に母親の方であった、セシリアの幼少の頃も事業を指揮していた母親を、尊敬のまなざしで見ていた反面、父親はセシリアにとって侮蔑の対象でしかなかった。
そして、女尊男碑の世の中にあって、セシリアの心には男性への侮蔑の念が深く根付く事になる。
だが、その両親が事故死。
後に残ったのは、一粒種のセシリアと莫大な遺産だった。
まわりには、遺産目当てに群がったハイエナのような大人。
そんな大人たちに、遺産を1ペニーたりとも渡す義務は、セシリアにはない。
遺産を守る為に、セシリアはあらゆる努力を惜しまなかった。
そして、最新鋭の第三世代ISブルー・ティアーズの専属操縦者に、選ばれる。
国は、セシリアに国籍保持の為に、様々な条件を提示した。
それらは、遺産を守る為に有効であった。
そして、セシリアは稼働データを取る為に、IS学園に入学する事となった。
『出会った…。理想の強い瞳をもった、男性に…。』
代表候補と聞いても、卑屈になる事無く、自分の名誉を守る為に戦う意思を持つ、強い瞳を持つ少年。
織斑一夏に、セシリア・オルコットは出会った。
『知りたい…。何故、貴方の瞳がこうも、私の心をとらえて離さないか。どうして、貴方の名前が、こんなにも甘く心に響くのか…。どうして、こんなにも、胸がときめくのか…。』
形のいい胸に、そっと手を当てる。
『でも、私は貴方を怒らせてしまった…。』
自分に対する、明確な拒絶の意思。
一夏の瞳には、それが宿っていた。
『何が、貴方を怒らせてしまったの…?私は、どうすればいいの…?』
堪らず、セシリアは膝を抱え込んだ。
後書き
クラス代表決定戦です。
近接型と射撃戦型では、前者が圧倒的に不利と思われがちですが、ナイフや剣術の達人ともなると、10m以内では、銃を持った相手にかなり有利に戦いが進められると聞いた事があります。
発砲する前に、相手の懐に飛び込んで決着がつけられるのでしょう。
今回は、それをネタに一夏とセシリアの戦いを書いてみました。
さて、一夏は勝利しましたが、セシリアの態度に一夏はカンカン。
まるで、クラス代表を引き受ける気はありません。
セシリアはセシリアで、理想の男性たる一夏に出会いましたが、これ以上ないほど険悪な状態になってしまい、途方に暮れています。
二人の関係は、どうなるのでしょうか?
それは、次のお楽しみです。
拙い小説ですが、ご期待下さい。
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