赤き龍と白き戦士 (探偵)
<< 前の話 しおりを挟む/しおりを解除
第四話一夏VSセシリア

 勝負を終えた俺は、休憩とISの整備をした後、ピットに戻る。そこには一夏、箒、織斑先生、山田先生がいた。俺のISの待機状態は龍が彫られた赤いガントレットだ。何か、ごついな。
「草薙、先ほどの質問に答えてもらうぞ。」織斑先生がそう言ってくる。「はい。山田先生、これから俺が話すことは他言無用でお願いします。知られると面倒なんで。」一応、くぎを刺しておく。「あ、はい。分かりました。」
「俺は小学生の頃、束さんのIS開発を手伝っていました。完成した時、束さんは一流の科学者でも分からない言葉の羅列で論文を作っていたんです。それで、俺が理解できるように書き換えて発表しました。しかし、全く注目されませんでした。ISの技術は当時の科学を覆すものだったので、誰も信用しなかったんです。白騎士事件が起こったために、世界は、ISに注目せざる負えなくなりましたが。ここまで理解してくれましたか?山田先生。」「はい、途中からは一般常識だったので。草薙君ISの開発者だったんですね。」「90パーセント近く束さんの独力ですけどね。」よし、他の皆も大丈夫みたいだな。

 白騎士事件。十年前、世界がISに注目せざる負えなくなった事件。実は、束さんがISのマッチポンプの為に起こして、千冬さんが白騎士を操縦し、俺がそのサポートをしていた。俺が気付いた時には遅かったが。このことは話すとまずい。

 「白騎士事件の後、束さんが世界中の科学者と記者を交えて会見を行うことになりました。あの人は、意味不明な説明をしようとしていたので、予想される質問に答えてもらい、俺が翻訳と声真似をして後ろで答えて事なきを得ました。」俺が説明を終えると一夏が「そうだったのか。瞬もう一つ質問。手紙にお前のISはお前が設計したの使ったって書いてあったけど、あれホントか?」と、訊いてくる。「ああ、ISの設計や整備に関する知識・技術は全て教わったからな、つい最近まで教えられてた。その前から、自分で研究してて、アメリカの軍に両親と入ってからも、軍の訓練を受けながら続けてたし。で、出来た設計図を送ってて、今回その内の一つが採用されたってわけだ。って、一夏、箒、山田先生、口空いてますよ。」俺がそう言うと、「だって・・・。ISを一人で、しかもそんな性能の高い物を。」と、山田先生。
「てか、瞬。お前アメリカ軍属だったのかよ。」と、一夏「ああ。俺がISを動かせる関係で辞めてるけどな。」
「織斑、そろそろ時間だ。」織斑先生がそう告げる。「分かりました。」
「さっさと、終わらせて来い。」俺が言うと、「無様な姿は見せるな。」と、一夏と目が合い、頬を赤く染め、視線を外した後、箒が言う。素直に頑張れとか言えねえのかな。
一夏は頷いた後、ISを展開し、ピットから出ていく。

 『何故、この私が・・・。」セシリアは悩んでいた。ブルー・ティアーズの専任操縦者である自分が、
男に負けた理由が分かっていないのである。
『そう・・・、たまたま。たまたまに決まっていますわ!でなければこの私が負けるはずがありません!』
見当外れもいいところも自己完結をし、二戦目に向かう。

 アリーナには、ISを展開したオルコットが既にいた。
「逃げずに、来た事は褒めて差し上げますわ。」「そりゃ、どうも。」
「いかがかしら?今なら、まだ、土下座をして謝るのならば、許して差し上げましてよ。」
いかにも、勝利を確信して見下した表情で、オルコットは俺を見ていた。
やれやれ、どこまでも、俺の嫌いな事をしてくれるな。
「時間がないから、始めようぜ。」俺の言い方に不機嫌になったのか、オルコットの表情が険しくなる。
俺は、今でも、充分に不機嫌だけどな。瞬も平然としていたが、かなり怒っていた。
装備されている、近接戦闘用ブレードを実体化させる。「そうですの。少しは、手加減して差し上げようかと思っていましたけれど、徹底的に叩きのめして差し上げますわ。」
そう言って、オルコットは、手に持っているライフルの狙いを定める。
『右肩部に照準をロックされています。』白式のハイパーセンサーが、俺に知らせる。
だが、その前に、俺はその事を知っている。「右肩、もらいましたわ。」ライフルから、レーザーが発射される。そうはいかないぜ。オルコットがライフルの引き金を引くと同時に、俺は回避した。
『初期化と最適化が終わってないから、反応が悪い。』瞬も同じ状況で圧勝したんだ。         やれないわけじゃない。大丈夫だ。

 モニターには、セシリアの射撃を回避し続ける一夏の姿が映されている。
「白式の装備は、見た所、あの近接戦闘用ブレードだけ。不利ですね。」
「そうかな?私は、現役時代、同じような状況でも勝ちあがってきた。やりようがないわけじゃない。」
真耶にそう答えながら、千冬はモニターに映る一夏のセシリアの戦いを見続けていた。

 「織斑君。攻撃されっぱなし。」「負けちゃうのかな?」「さっきと同じ状況ね。」
1年生が、一夏の敗北を予想する。
「どうッスかねえ?先輩。新入生は、草薙の時と同じく織斑の負けだと考えているみたいですけど。」
フォルテが、ダリルに話しかける。
「お前もそう思うのか?フォルテ。」「さあ、どうッスかね?ただ、言える事は。」
「言える事は?」「オルコットが気づいてない内に、2人の距離が縮まっているってことッスね。さっきとほとんど変わらないペースで。」「気づいてたか。」「当然。オルコットは草薙との闘いから何も学んでませんね。」
このままではまた、負けるだろうな、二人はそう思っていた。

 『ブルー・ティアーズ。中遠距離戦を主眼として設計されたISか。大体分かった。』
瞬との闘いで、戦法も掴めている。
「どうなさいましたの?逃げてばかりでは、勝利はありませんわよ。」
さっきと同じ事言ってるし。
「それに、このブルー・ティアーズに射撃兵装一つないISで挑もうなんて、お笑い草ですわ。たまたまが二度続くほど、勝負は甘くありませんわよ。」
瞬に負けたのを、たまたまだと思ってんのか。道理で、さっきと戦法が同じなわけか。
「長々と、戦っている気はありませんわ。踊りなさい。私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で。」頃合いか。
オルコットが、非固定式の肩部パーツの一部を分離した時に、俺は一撃を加えた。よし、いい手ごたえだ。

 「ああ。あいつ、また全然、気づいてなかったッスね。」
「そうだな。徐々に、織斑が得意の間合いに近づけていたことにな。しかも、さっきの闘いの反省の反省が全く見られない。楽勝だろうな。」
ダリルとフォルテは、溜息混じりに言った。

 『そんな…。何時の間に。』
強烈な一撃を喰らって、ブルー・ティアーズのシールドが一気に削られる。
先ほどの闘いと全く同じパターンで攻撃を喰らっている。
『なんて…、強い、瞳…。』決闘だというのに、セシリアは一夏の瞳に惹かれる自分を感じていた。
『何を言っているの?セシリア・オルコット。今は、決闘ですのよ。』セシリアは、気持ちを切り替える。
『とにかく、距離を取らないと。』
セシリアは、一夏を引き離そうとするが、今度は一向に距離が縮まらない。
「どうやら、円舞曲を踊るのは、そっちだったみたいだな。」おれも同じセリフだな。ま、いいか。
ダリルとフォルテが予想した通り、一夏はセシリアの攻撃を回避しながら、二人の距離を、少しずつ自分の間合いに近付けていた。瞬と、同様の戦法である。

 「これで、勝ったと思わないでくださいます!?」
ブルー・ティアーズから、レーザーが発射されるが、一夏は全て回避しながら、セシリアを追い詰めていった。

 「凄い…。」
「徐々に徐々に、織斑の間合いに近付いていた事に、まるで気が付いていなかった。草薙と同じ戦法で攻めらている。反省ぐらいしろ、馬鹿者。」
再び真耶は驚嘆し、千冬はつまらなさそうに、鼻を鳴らした。

 『向こうは、ブルー・ティアーズが四つだけではないこと知っている。このままでは、さっきの二の舞。どうすれば・・・。』
ブルー・ティアーズのシールドは、八割以上削られていた。
『確率は低いですが、この手しか・・。』
セシリアは、一夏が離れた瞬間を狙って、ビットを一夏の上下左右に展開、レーザーを発射した。
しかし、イグニッショッン・ブスートで、レーザをかわされ、すれ違いざまの一撃を喰らう。
『くっ!えっ?』
背後に回った一夏に備えようとしたセシリアが見たのは、機体形状が変化した白式だった。

 「あれって、まさか?」「気づいたか。フォルテ。」
「ええ。こりゃ、決まりッスね。草薙といい織斑まで、こういう事だったなんて。」
ダリルとフォルテは、白式の形状変化の意味を、察した。

 ふう。やっと終わったか。瞬もこんなタイミングだったな。何かとあいつとは、息が合うらしい。
『初期化及び最適化終了。確認してください。』
モニターに映ったメッセージを見て、俺は白式の初期化と最適化が終わった事を確認する。
ところが、赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン)と白式はある程度戦闘経験を積ませないと、それが起きない仕様になっている。束さんが、何考えてこんな仕様にしたのかは分からないが、面倒だよな。
第一形態移行が終了した白式は、シャープな印象を持たせる純白の装甲を持つISになっていた。
「第一形態移行?まさか、あなたまで初期設定のままで戦っていたんですの?」
オルコットは、気づいたか。ま、代表候補だから当たり前か。
モニターに装備の一覧が、表示される。

展開可能装備一覧。
近接特化ブレード:雪片弐型

『雪片弐型。千冬姉が使っていた雪片の発展型か。』
 束さんも、気の利いた事するじゃないか。
 そう考えていると、雪片が変形してエネルギー状の刃が出現する。

ワンオフアビリティ:エネルギー消滅能力、零落白夜発動。

白式は第一形態移行から発動していた。
そして、零落白夜は、千冬姉が現役時代に使用していたIS暮桜のワンオフアビリティでもある。

 「俺は最高の姉さんを持ったよ。鬼より怖いけどな。さて、終らせようぜ。姉さんの名誉くらい、多少は守れる所を見てもらいたいし。何より…。」
俺は、雪片を握り直す。
「守られるのは、終りにしたい。今度は、俺が自分にとって大事な物を守る。守れるようになりたい。」
そうだ。どうして、俺がISを動かせるかなんてわからない。理由なんてどうでもいい。
俺は、今度は少しでも大事な物を守れるように、なりたいんだ。

 『何を、言っていますの?』
一夏の言葉が理解できなかったセシリアだが、また、一夏の瞳に惹かれていた。
活力と決意に満ち溢れた、強い瞳に。
『あの人とは、まるで別人。まるで…。』
そう思ったが、必死にそれを振り払う。
「私は、セシリア・オルコット。イギリス代表候補。その誇りに賭けて、そう簡単には負けられません!」
セシリアが、最後に起死回生のチャンスを見出そうとする。
しかし、そう思った時には、ISの機動スキル、イグニッション・ブーストで瞬時に迫った一夏の零落白夜の一撃が、ブルー・ティアーズのシールドを一気に0にしていた。
「勝者。織斑一夏。」

 「強いな。」「強いッスね。」
ダリルとフォルテが、一夏の技量に感嘆していた。
正直、1人しかいない3年の専用機持ちのダリルでも、一夏と草薙に勝つ確証はなかった。
それは、2人いる2年の専用機持ちの1人であるフォルテも、同じだった。

 「凄いですね。報告書通りです。」
報告書には、一夏と草薙のISを使用しての訓練時間は、両者とも約150時間とあった。
通常ならば、300時間を超える。
訓練を担当した自衛隊のパイロットと、アメリカ軍の大佐の考課表によると、全ての面で最高ランクの技量。
特に、近接戦闘においては飛び抜けた技量をもつ。と、ある。
一夏は、ISの訓練時間が思ったより短く済んだので、その他の代表候補が受ける各種訓練も通常より多く受け、さらに他の様々な訓練を受けている。
銃火器の射撃訓練、CQB及びCQCの訓練はもちろんの事。対空ミサイルや、対戦車ミサイルの使用訓練。
パラシュートを用いての、降下訓練。その他にも、サバイバル訓練等も受けている。
元々、子供のころから剣術や古武術等で鍛えていただけに、一夏は極めて優秀な生徒だった。
さらには、各種機器やISの整備訓練も受けている。既に、特殊部隊でも十分に任務につける技量に、達していた。草薙は元軍属の為、そのあたりの技量は一夏より圧倒的に上だ。
ここまでなら、委員会の極秘事項にはならなかっただろう。
だが、次の事項がその理由だった。
 
 織斑一夏と草薙瞬のIS適性:測定不能。最低でもSランク。

 つまり、二人のIS適性は、千冬や歴代の最強クラスのISパイロットをも凌ぐ事になる。
もし、各国のIS関係者がこの事を知ったなら、原因を探る為にどんな事でもやるだろう。
最悪、二人を巡っての争いも起きる。故に、二人に関してのデータは、委員会が極秘事項に指定していた。
通常で適性を図っても、Aクラスを越える事のないように細工が施されている。
『とんでもない新入生たちが、来ましたね…。』
そう思いながら、オペレーションルームの機器をシャットダウンして、真耶と千冬はピットに向かった。

 「で、いかがでした?弟さんの戦いぶりは。」「悪くない。もっと精進する事だ。」
千冬はどこか恥ずかしさを隠すように、真耶に答える。
「またまた。本当は嬉しいんじゃないですか?初期設定時から、代表候補を圧倒しての勝利。嬉しくないはずがないと思いますけど。」そんな千冬が微笑ましくなって、真耶はからかう様に言う。
「山田先生。どうだ?模擬戦でも。そうだな、5本勝負で。」「い、いいえ。遠慮しておきます。」
「そうか。それは残念だ。」
からかう真耶に反撃が成功したので、千冬はにやりと笑った。

 「さて。とにかく勝ったな。」
俺は白式を、展開状態から待機状態にした。通常、ISは待機状態として、主にアクセサリーになっている。
ちなみに、俺はガントレットだ。瞬もガントレットだったな。
それにしても、ガントレットってアクセサリーじゃないぜ。完全に、束さんの趣味だな。
「一夏、初勝利おおめでと。」「一夏、見事だったな。」瞬と箒がそう言ってくる。
「ああ、瞬と箒か。同門のお前たちに、恥をかかせずにすんだよ。」
今の俺の基礎は、千冬姉や瞬と一緒に、箒の親父さんの下で作ったからな。負ける姿は、見せたくなかった。
もちろん、それ以上に、たった1人の家族である千冬姉には見せたくない。だから、勝って、ほっとしている。
「織斑君。お疲れ様です。見事でしたね。」山田先生が、ニコニコしてピットに入って来る。
「あ、山田先生、ありがとうございます。」「それで、その、クラス代表の件なんですけど。」
その件か…。答えは決まっているんだが、とりあえず聞いておくか。
「山田先生は、どう思っているんですか?」こういう時は、回りくどい言い方をしないほうがいい。
「お二人は、オルコットさんに対して、色々と言いたい事はあると思いますけど、やはり、和解して、織斑君か草薙君がクラス代表になるべきだと思うんです。」
おいおい、それは悪い冗談だぜ。今回の決闘で、あいつと和解する気なんてなくなったよ。
瞬は俺ほどは、思ってないみたいだな。「条件次第では、和解しますよ。」そう言っている。  
自分が受け持つクラスの生徒が喧嘩しているなんて、先生としてみれば辛いんだろうが、ここは引けないな。
「すいませんけど、オルコットと和解する気はないです。織斑先生、整備室は空いてますか?」
「第二整備室が空いている。白式の整備をするのか?」
「はい。細やかなセッティングをする必要があるので、やっておきたいんです。」
「すいません。俺もいいですか。」瞬が、そう言ってくる。まだオルコットと話しあう気はないみたいだ。
「解った。アリーナは、もう少し使えるように申請をしておく。できるだけ、早く済ませろよ。」
「「すいません。ありがとうございます。」」
俺と瞬は、千冬姉に礼を言って、整備室に向かう。
山田先生が、話を続けたいらしいが、俺にも瞬にもその気はない。

 「待って下さい!一夏さん!草薙瞬!」
俺とし瞬を呼びとめる、オルコットの声が聞こえた。まだ、ISスーツのままだ。
おれだけ一夏さんて、何でだよ。
「何だ?オルコット。お前と話すことなんて、無いぞ。じゃあな、俺は忙しい。」
振り向いて、オルコットにそう言ってから、俺は整備室に向かった。
戦いの時次第では、和解していただろうけど、今はする気には到底なれないな。
「俺は、お前がした事を理解して反省すれば和解する。じっくり考えるんだな。俺は教えん。」
と、言って瞬がついてくる。

 「一夏さん…。どうして…。」セシリアは、肩を落とした。
「オルコット。」「はい。」
千冬が、セシリアに歩み寄った。
「織斑と、和解したいのか?」
「はい…。でも、私はお二人に嫌われたみたいです。お二人を、散々侮辱したからですね…。身から出た錆ですわ。」セシリアは、泣きそうな声で千冬の質問に答えた。
「違うな…。それが理由で無いよ。」
セシリアは、驚いたように顔を上げる。
「織斑先生。それはどういう事ですか?」「山田先生も、気づいていないか…。」
千冬は、小さな溜息をついた。
「瞳だよ。戦いのときに、オルコットが二人をどんな瞳で見ていたか、それが答えだ。」
セシリアと真耶の疑問に答えながら、千冬はメモリーをセシリアに渡す。
「さっきの戦いの録画だ。それを見て、自分で答えを導き出せ。それで駄目なら、クラス代表はお前になるな。」セシリアに言って、千冬はピットから去る。
『もしかして…。』
ある事に気がついた箒は、千冬の後を追いかける。
『私の瞳…?』メモリーを見ながら、セシリアはしばらく考え込んでいた。
『とにかく、見てみるしか、ありませんわね。』
セシリアは、自分の部屋に急いで帰った。

『やっぱり、細かな部分は、結構、微調整が必要だな。ハイパーセンサーの連動設定も、見ておくか。』
コンソールを操作して、別のデータを呼び出す。
「瞬、お前はどうだ?」「まだまだ、調整がいるな。これから、少しづつ、微調整をしていくつもりだ。」
 しばらくして、整備を終えた一夏と瞬はISを待機状態に戻したが、ある事を知らなかった。

 『織斑…、一夏…。』
部屋に戻ったセシリアは、汗を流す為にシャワーを浴びていた。
『完敗ですわ…。実力に、大きな隔たりがありますもの…。それ以上に…。』
セシリアの脳裏に浮かんだのは、一夏の瞳だった。
媚びる色が無く、まっすぐで、強い意志と前に進もうとする力強さにあふれた瞳…。
『あの人とは、まるで違う…。』

 セシリア・オルコットは、父親に恵まれなかった少女である。
男尊女卑の世であった頃から、セシリアの母はオルコット家が手掛けていた事業を努力の末に、飛躍的に成長させた。
そんな、オルコット家に入り婿として来たのが、セシリアの父だった。
元々、オルコット家が名家であり、階級意識が残っているイギリスの風潮もあって、父は卑屈だった。
父親と母親の距離は次第に遠くなり、セシリアが一緒にいるのは常に母親の方であった、セシリアの幼少の頃も事業を指揮していた母親を、尊敬のまなざしで見ていた反面、父親はセシリアにとって侮蔑の対象でしかなかった。そして、女尊男碑の世の中にあって、セシリアの心には男性への侮蔑の念が深く根付く事になる。
 だが、その両親が事故死。
後に残ったのは、一粒種のセシリアと莫大な遺産だった。
まわりには、遺産目当てに群がったハイエナのような大人。
そんな大人たちに、遺産を渡す義務は、セシリアにはない。
遺産を守る為に、セシリアはあらゆる努力を惜しまなかった。
そして、最新鋭の第三世代ISブルー・ティアーズの専属操縦者に、選ばれる。国は、セシリアに国籍保持の為に、様々な条件を提示した。それらは、遺産を守る為に有効であった。
そして、セシリアは稼働データを取る為に、IS学園に入学する事となった。

 『出会った…。理想の強い瞳をもった、男性に…。』
代表候補と聞いても、卑屈になる事無く、自分の名誉を守る為に戦う意思を持つ、強い瞳を持つ少年。
織斑一夏に、セシリア・オルコットは出会った。
『知りたい…。何故、貴方の瞳がこうも、私の心をとらえて離さないか。どうして、貴方の名前が、こんなにも甘く心に響くのか…。どうして、こんなにも、胸がときめくのか…。』
形のいい胸に、そっと手を当てる。
『でも、私は貴方を怒らせてしまった…。』自分に対する、明確な拒絶の意思。
一夏の瞳には、それが宿っていた。
『何が、貴方を怒らせてしまったの…?私は、どうすればいいの…?』
堪らず、セシリアは膝を抱え込んだ。







第四話。一夏VSセシリア。反省なしのセシリアは、瞬のときと同じような闘いをして、同じように負けました。しかし、セシリアの態度に一夏はカンカン。瞬はそれほどでもないですけど。
次回、三人は和解できるのか?
余談ですが、セシリアの目に、瞬は大して映ってませんでした。瞬は苦労人です。これからも、そう書いていくつもりです。

<< 前の話 目次 感想へのリンク しおりを挟む/しおりを解除 ページの一番上に飛ぶ

感想を書く

良い点※1000字以内

悪い点※1000字以内

一言※10~2000字以内


※以下の内容は禁止事項です。違反するとアカウント凍結等の対応を行います。
・他の感想への言及・横レス(作者以外の発言に対して言及すること)
・作者を攻撃している(人格否定等)
・規約に違反していない作品への削除や修正、設定改変の強要


一言(非強制、100文字まで) :
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10を入力する場合は一言の入力が必須です。
※評価値0,10はそれぞれ最大10個までしか付けられません。
※警告タグを評価基準に含める事は×