• 『風穴の発生』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト10
  • これは流星のロックマンの二次創作です。あらかじめご了承ください
























    ▲サテラポリス


    『ロード』の電波体とミソラ達が戦闘を行っている中、天地はハンターVGに奇妙なポップアップが隅に現れたのに気づいた。戦いの行く末が気になりながらも、そのポップアップにタッチする。

     出てきたのは謎の穴だ。いや、正確にはワープホールと称したほうがいいのか。ただただ黒い穴がそこに映し出されていた。場所はTKシティの外れ。ゴンタが戦っている場所よりも数キロ離れた所。

    「これは……なんだ?」

     サテラポリスのサーバーがキャッチした謎のワープホール。サーバーが出す答えは「UNKNOWN」という簡潔な答え。無視することは出来る。そうするべきだ。これが何なのかなんて、ミソラ達が勝利したあとで解決出来る。

     なのに、無視できないのは何でだ?


    ▲ミソラサイド


    「セイントベール」

     どこから降って来たか湧いてきたかも分からない声、気づけばミソラはそこに無傷で立っていた。

    「危ない危ない。ぎりぎりだったよ」

     そう晴れやかに言うのは孤児院をアメロッパの精鋭から守った少女、黄璃光だった。

    「あなたは……」
    「言いたいことはいろいろあるだろうけど、まずは目の前の敵を倒さなきゃ」

     宵は自分の攻撃が防がれたのが予想外だったのか、完全に呆けた様子だ。けれど、ドレッドは光に攻撃を防がれたことを驚いていない。

    『ここで貴様も現れるか……忌々しい』
    「数日前にあったばかりだけど、そんなに嫌わなくてもいいじゃない」
    『おまえにとっては、たしかに数日前だ。だが我ら「ロード」は違うのだよ。……主よ、ここで立ち止まっていてはいけない。いくらこの電波人間が強かろうと、我々が勝てない相手ではない』

     ドレッドの言葉にアクションを示すことなく黄璃は手をかざす。

    「ミソラちゃん、行くよ。わたしが時間を稼ぐ。そのうちに──」

     光が言い終わらないうちに、宵が攻撃を再開する。彼が何故ほうけていたのか、それは簡単だ。彼が、光は自分とは比べ物にならないほどの人間だと分かってしまったからだ。
     宵の槍は人の心臓を貫くために振るわれる。しかし光はそのベールで宵の攻撃を無効化していた。

    「くっ……」
    「ホーリーレイン」

     光が天に手をかざすと、空から降ってきたのは雨だ。けれど雲など無い。降ってきたのは、光の矢だ。無数の矢が一帯にばら撒かれ、焦土と化す。
     宵は思わず息を呑んだ。降り注ぐ光の雨は可能だ。避けることに集中すればこの絨毯爆撃から逃れることは出来る。しかしその場合ミソラが宵に対して好きに攻撃出来てしまう。

     結論、黄璃の攻撃を受けながら突破口を開くしかない。

    「舐めるなっ」

     この程度の攻撃に臆していてはその先に進めない。宵はここで立ち止まれない。この世界に復讐をしなくては。なんのために両手を血に染めてきたのか。ここで負けるためではない。
     前へ進むごとに光の矢が体を掠める。三歩進んだ時点で肩に矢が刺さる。五歩進んだら右腕と左足を射抜かれた。しかし足は止まらない。
     数で負けている以上は各個撃破。ミソラがこちらに向かっている。相手の目は驚きで見開かれている。まさか宵が特攻をしてくるとは予想しなかったのだろう。けれどもう遅い。ミソラを瀕死にし死の恐怖を覚えさせたら宵は全快する。もう一人の電波体とは互角の勝負をすることが出来る。
     ミソラまであと三歩。そうすれば槍の切っ先はミソラの首を貫く。あと二歩。腹と左腕を矢に貫かれる。あと一歩。右ひざを矢によって砕かれた。そして槍をミソラに向け突き─

     見えない壁が宵の槍を止めてしまう。一秒経っても宵は反応することが出来なかった。何故止められたのか。そしてミソラがもう右手をギターの弦に触れていたから。

    「君の攻撃を止めたのは光ちゃんのシールドだよ。見えないでしょ? 外から見れば分かるの。黄色っぽいシールドが君を包んでる。だから君はわたしに攻撃できない」

    「君はがんばったよ。だから、もうこんなことやめよ?」

     宵が意識を手放す前に聞いた音は、ギターから奏でられる澄んだ音色と少女の優しい声だった。
     

    ▲ジャックサイド


     ジャックが連れてこられたのは、どこか深い海の奥底だった。電波人間は呼吸を必要としない。が、火属性のジャックと水属性の相手とではどちらが有利かは目に見えている。

    「ねえ、お兄ちゃん遊ぼう? こんなに楽しい場所なんだからさ♪」

     鎖で繋がれたジャックは未だに身動きが出来ない。睡蓮はジャックに対し容赦のない乱打を浴びせ続ける。鎖の先につけた錘が、遠心力を借りて体中にぶつかる。

    「ねえ、どんな気持ち? 女の子にいたぶられる気分はさ」
    「…………おまえの感情は、なんだ?」
    「えっ」
    「おまえが司る感情が『悲しみ(サッド)』なら、おまえは悲しいんじゃないのか?」
    「……うるさい!!」

     避けようのない攻撃の速度が上がり、鎖は数を増やし続け、ジャックを叩きのめす。

    「悲しくなんか無いっ。わたしはいつだって平気! アンナちゃんが死んじゃったくらい何でも──」
    「親友を失くしたか」
    「…………ッ」
    「そりゃあ、悲しいよな。道を踏み外すのも分かる。だけど」

     ジャックが思い出しのは自分の過去。全てがぐちゃぐちゃになり、そこである研究者に拾われた記憶。そして今ここに立っている理由。
     左腕のハンターVGからシステム音が響きだす。ポップアップが出現した合図だ。

    「だけど道を踏み外し続けるんじゃねえ!」

     叫ぶと同時に周囲に拡散していたノイズがジャックに収束していく。睡蓮の乱打が、ノイズ率を上げる原因になってしまった。

    「|究極変身(ファイナライズ)!」

     その容姿はまるで、自分の親友を連れて行った死神か。不覚にもそう睡蓮は幻想した。それほどジャックの姿は恐ろしく、だからこそ力強かった。

    「ペインデスフレイム!」

     睡蓮は気づいてしまった。「|悲しみ(サッド)」を手に入れて悪行を働きたかったわけではない。ただ、自分もアンナの元へ行きたかったのだと。こんな、涙を流してくれる死神に殺されたかったのだと──。






    感想まってま~す

  • 2013年 01月12日 (土) 20時50分
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