• 『決戦』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト9
  • ※これは流星のロックマンの二次創作(ダイジェスト)です。ご了承ください。


















    ■8月13日

     
     コダマタウン、TKシティ、ネオスピカモール、サテラポリス付近に再度ロードの電波体が出現。WAXAからメールが届きミソラ達4人はすぐさま急行する。

    「……おまえたちが何故ここに?」
     
     キリュウ達が迎撃にくるかと予想していたらしく、拍子抜けする敵。いくら待ってもキリュウ達が来ることはなく、この四人が本当に今日の自分達の敵なんだと理解する。


    ▲ミソラサイド

     
     敵が司る感情は『恐怖』。オペレーターは中学生くらいの男子。名前を宵。

    「よく来たねぇ。誉めてあげるよ。でもさ、君みたいなアイドルが僕にどれだけ怖いって思っているか、僕には手に取るように分かるんだ」

     宵が操るのは槍だ。3メートルほどに及ぶ細長い槍。遠距離攻撃主体のミソラは、リーチを見誤れば即座に心臓を貫かれるだろう。

    『……おまえらには積年の恨みがある。悪いが娘、苦しんで死ね』

    |恐怖(ドレッド)は重く圧し掛かるような言葉で、そう宣言する。

    「初対面なのに何を言っているの? ……まあいいわ。悪いけど、ここであなたには倒れてもらうわ」
    「ロックマンもいないくせに、その脇役が何を言っているの? 君とぼくとじゃ戦力差がありすぎる。この壁は生めることは出来ないよ」
    「やってみなきゃ分からない、でしょ!」

     宵が先制攻撃をしかけてくるが、その前にハープ・ノートは0キログラムというアドバンテージを生かし距離を開ける。ショック・ノート、マシンガンストリングなどの遠距離攻撃を宵に向かって放ち続ける。
     しかし、宵はミソラの攻撃を軽々と捌いていく。決定だの無いミソラには、攻撃を与えることが出来ない。
    「影槍」という声と共に、一瞬で間合いをつめてきた宵にミソラは対処できない。辛うじて致命傷をさけながらも。右肩を突かれる。

    「ほらほら、どうしたの? このままだとあのロックマンみたいに死んじゃうよ~?」

     舐められている。そのことを理解しながらもミソラにはぎりぎりで回避し続けるしか道がない。敵が居つくであろう一瞬の突いての攻撃でしか、勝機はない。

    「あーあー、避け続けるなんて卑怯だな。つまらないじゃない。まあ、仕方ないか。カタをつけよう。──夜影一陣」

     すると、宵の槍が急速にその穂先を肥大化させる。避けようとするミソラだが、宵の槍は最初からミソラを狙っていたわけではない。どこでも良かったのだ。槍はウェーブロードにつきささると、その点から一気に影の刃がミソラへと襲い掛かる。三百六十度から攻められたミソラは、為す術もなく直撃することに──


    ▲ジャックサイド


     ジャックが対峙したのは、ジャックと同じくらいの歳の女の子だ。司る感情は『悲しみ』。

    「お兄ちゃんも、エミをいじめに来たの? そうなんでしょう? ……『悲しみ(サッド)』、このお兄ちゃんも殺しちゃおう?」
    『ええそうねエミ。わたしもこのお兄ちゃんには借りがあるもの。よーやくここで返せるなんて、わたしも嬉しいわぁ』

     するといきなり地面から飛び出してきたのは何十本もの鎖。悲しみの海へとひきずりこむそれがジャックへと向かう。地面から、はたまた突如空中から現れる鎖を避けることは不可能。

    「ペインヘルフレイム!」

     力ずくに迫り来る鎖の包囲網を突破しようとジャックは試みる。だがどこからやってくるかも分からない鎖が、たった一本ジャックを掴む。すると一瞬動きを止められたジャックの自由を奪おうと、後からやってくる鎖が四肢の動きを奪う。

    「お兄ちゃんおいで。一緒に遊ぼうよ!」

     サッドの|担い手(オペレーター)──睡蓮の後ろにワープホールが現れる。真っ黒い、水の底へと続く道へ、2人は飛び込んだ。


    ▲ゴンタサイド


     ゴンタがやってきたのはTKシティ付近。ロードが襲撃してきたことはサテラポリスから発令されているので人がいないのは当たり前なのだが、何かが不自然だと感じられる。たとえば、臭い。この状況では嗅げないであろう肉を焼いた臭い。ゴンタの鼻腔がくすぐられる。

    「焼肉パーティーでもやってんのか?」
    『ブロロ……そうじゃねえみたいだぜ。この臭いは……食いもんを焼いたときの臭いじゃねえ。これは──』
    「人を焼いたときの臭いですよ」

     答えたのはどこからか現れた中年の男だ。髪は薄くなり、気味悪い笑みを浮かべる口からは金歯が見て取れる。そして街中では見慣れない白衣──医者か何かか?

    「ここら一体にいる人間を焼きました。いやぁ~、実にいい『匂い』ですねぇ。最高ですよ」

     その言葉に背筋を冷たくしながら、ゴンタは周囲をくまなく見渡す。脳裏には嫌な想像が浮かび上がり、心はそれを必死になって否定する。けれど、現実はいつだって残酷だ。
     数えられないくらいの焼死体が、この街には転がっていた。老若男女問わず。赤ん坊の死体さえあったかもしれない。

    「ぐっ……おぇっ」

    《焼肉》だと想像してしまった自分が恨めしい。人肉を食べ物だと想像してしまうなんて。

    『そろそろ行こうではないか、マスター。あの憎き電波人間に、わたしは殺さなければ気がすまない』
    「そうだな|苦しみ(ペイン)。我らが与えるのは生きることへの傷み……」

     電波変換と唱えると、彼らが変身したのはまるで死人のような肌が焼け爛れた電波人間。構えるは小さな一本のメス。

    「さあ苦しめぇい! この世界を生きることをぉお!」


    ▲ツカサ・ヒカルサイド


     稲妻と爆炎が真正面からぶつかりあい、そのエネルギーがコダマタウン上空で爆ぜた。

    「……これ程強いとは、女の子でも油断しちゃいけないものだね、ヒカル」
    『それはあいつの周波数を感じ取れば分かることだろ。油断なんてするんじゃねえぞ』

     ツカサとヒカルが対峙するのは、小柄な女子高生だ。しかしその姿形はもはや可憐な女の子ではなく、地獄にでも出てきそうなほど真っ黒なドレスを身にまとった女性だ。名を、火花。

    「白と黒の双子……中々に美形じゃない。あと数年すればあの人に届くかもしれないわ。けど残念、わたしはあなたたちを愛せない。だって、わたしはあの人一途なんだから」
    「……どうやら君がさっき攻撃しようとしていたのはその「あの人」らしいね。なんで?」
    「決まってるじゃない。 あの人がわたしを振ったからよっ。わたしはこんな姿になるほど彼を愛しているというのに、彼はまったくわたしを愛してくれない。……だから決めたの。わたしのこの愛の炎で、彼にわたしの愛がどれだけ熱いのかを教えてあげようって」
    『そいつもきっと、おまえが滅茶苦茶に自分を好いていることくらいは知ってるさ。だがな、おまえのことは好きじゃなかった。ただそれだけだ。理解していて振っているのさ』
    「…………あなた、何様?」
    『ねえ、ちょっと待って火花。わたしも彼と話したいわ』

     火花の後ろに真っ赤な人形のようなウィザードが現れる。彼女が司る感情は『愛情』。

    『わたしのこの可憐な姿を知っていたりするかな? 時空をこえてさ!』
    『……何言ってんだこいつ。ツカサ、教えてくれ』
    「そんなこといわれても……」
    『……ねー、あなたたち、わたしのことを覚えていないの?』
    「だって、初対面じゃないか」
    『……あぁああったまっきた! わたしのことを忘れるなんて! わたしは、わたしはあなた達のことを時空を超えて覚えていたって言うのにぃいいい。火花、こいつらを燃やそう』

     ボウッ、と空気が膨張する。赤や青などではない、漆黒の炎を手に宿した彼女の殺意が二人を射抜く。

    「死んじゃえばいいのよ! わたしの『あの人』への愛を理解できない人間なんて!」
    『わたしのことを覚えてないあなたたちなど、死んでしまえ!』
    「来るよヒカル」
    『まったく、骨が折れそうな奴だなぁ!』
  • 2013年 01月04日 (金) 14時14分
コメントの書き込みはログインが必要です。