• 『決意』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト8
  • ※これは「流星のロックマン」というゲームの二次創作です。あらかじめご了承ください



















    ■8月12日

     ミソラ達に暁たちが重体で運ばれたことを連絡するメールが届く。五体満足ではあるものの、生命の危機であることには変わりないと。
     通達を聞いて、ミソラ達四人は考えていく。

     戦う理由とは何か。今まで相棒と一緒にここまで積み上げてきた過去はどんなものだったのだろうか。ミソラ達4人は自分達の軌跡を振り返り始める。
     最初はスバルに触発されてここまで来た。しかし、今まで全てがそうだったであろうか? スバルがいたから戦ってきたのか? 死ぬ恐怖がなかったから戦えたのか?

     考えを深めようとした頃、ミソラのもとに一通のメールがやってくる。宛名は黄璃光。メールにはある場所までの地図が添付されており、ハープはその行き先が先日襲撃された孤児院だと気づく。
     何のためにわたしを呼んだんだろう? 昨日、あれほどまでに苛烈な戦いを行った人間が、わたしを呼ぶりゆうは? 答えは一つしかない。これからの戦いについて。
     
     行けば何かが変わるかもしれない。そんな予感がミソラを孤児院へと突き動かす。


     ゴンタ、ツカサ、ジャックの元へは覇神からのメールが届いた。指定された場所は覇神コーポレーションオフィス。理由は明白だ。けれど行くまでの決心がつかない。
     昨日の戦いで傷を負った暁とクインティアの見舞いにやってきたジャックは、メールを凝視する。そのとき彼の姉は言うのだ。「行って来なさい。そして、自分の意志で決めて。これからどうするのかを」
     その言葉に触発され、ジャックはゴンタとツカサにメールを送る。「……3人で、行かないか。何か、何かが変わるかもしれないんだ。俺の中で」


    ▲孤児院


     ミソラが孤児院についてみると、そこではミソラよりも年齢の低い子供たちが明るく元気に庭で遊んでいた。先日、アメロッパの戦闘部隊に攻撃されたとは思えないほど、その光景は『平和』だった。
     
    「いらっしゃい」

     出迎えてくれたのは光の母=希恵だ。どうやら光は今外出中らしく、孤児院では見当たらなかった。どうぞ、といって中に案内してくれる希恵に、ミソラとハープは遠慮しがちに入っていく。
     何もないですがと紅茶を出してくれる。光はあと10分ほどで着くので、それまえ待って欲しい。
     紅茶をすすりながら、ぼんやりとミソラは庭に目をやる。本当に楽しそうだ。世界が恐怖につつまれているというのに、この建物だけはまるで何も変わらないかのように。

    「楽しそうですね、ここの子供たちは」
    「そうね。それもこれも、全部光のおかげだけど。光がいなければ、孤児院なんて出来なかったから」

     希恵は数年前まで住んでいた少女の話をした。少女が最終的には死んでしまったことも。光はその件をきっかけに孤児院を作ろうと希恵に相談した。幸い、最大規模の病院を経営している雷伽がいたために孤児院を設立できた。国から少々の補助金も出され、今に至っている。

    「こうして大勢の子供たちの世話をするのは、とっても大変だわ。でもね、とってもやりがいがある」

     自信に満ちた瞳でそう語る希恵に、ミソラは言葉が出ない。各個たる理由をもっている人間、それがどれほど強いのかをミソラは知っていた。つい最近失った友達も、その一人だ。
     
    「ただいま。待たせてごめんね」

     光がようやく帰って来る。希恵は野暮だと思いリビングから退室、庭で遊んでいる子供たちと混じって遊ぶことに。

    「戦う理由が見つからないの?」

     率直に光は言う。怖いのかと。スバルがいなければ戦えないのかと。このままじっとしているのかとも。
     ミソラは口を開く。光には分かっていた。ミソラが戦う理由を見失ったことも。そして恐怖が勝っていることも。

    「……ロックマンは、死んで後悔しているのかな?」
    「わたしは、彼のことをよく知らないけど、それでも戦って死ぬことに対しては後悔してなかったんじゃないのかな?」
    「わたしね、この子達を守りたい。ただそれだけで戦ってる。それだけで充分。……あなたはどう? 死ぬ覚悟が出来るほどの理由が、あなたにある?」


    ▲覇神コーポレーション


     その頃ジャック達3人は、オフィスのある一室に案内されていた。一室と言っても体育館くらいの広さ。そして、強固な壁。
    「やあ、よく来てくれたね」覇神は電波変換CFした状態で3人の前に現れる。すぐさま3人は電波変換し覇神と対峙する。けれど、脚が震え今にも倒れそうだ。

    「…………君らは最初から何が起こるか分かって来たんだ」
    「おまえから、戦う理由を訊き出せそうだからな」
    「なら、少しくらいは楽しませてくれよ!」

     ダークソードを構え覇神が突っ込んでくる。3人は各々が武器で覇神に対し攻撃するが、オーラを剥がすだけで精一杯だった。徐々に激しくなってくる攻撃に、3人は防戦一方になる。

    「ほら、そのままじゃロックマンのように死ぬよ?」
    「っ…………究極変身(ファイナライズ)!」

     不利な状況を打破しようとジャック達はファイナライズに望みを託す。覇神の圧倒的なスピードに対抗し、ついには拮抗するまでに至った。これならば、もしかしたら勝てるのかもしれない。そう思い始めた頃に、

    「なら、こっちは二重究極変身(デュアルファイナライズ)だ」

     スバルから奪ったキングPGM、それを使用し最強の力を手に入れた覇神。拮抗し始めた戦況は、結局元通りになってしまう。
     怖い、すぐにでも降参したい。命だけでも助けて欲しい。死にたくなんか無い。生きたい。生きたい。生きたい──!

    「ペインデスフレイム!」
    「ヴォルケーノ・ファイア!」
    「ジェミニ・ライトニング!」

     勝てないと分かっていた。けれど退くわけにはいかない。生きたい。それと同時にスバルの仇も討ちたい。震えてなんかいられない。ここで戦わなくて、何の意味がある。
     最大の攻撃を放ってきた覇神は、「それでいいんだよ」と笑いかける。同時に天高く右腕を突き上げ、覇神も最大の攻撃を繰り出す。

    「ダークネスギャラクシー」

     最大まで溜めた漆黒の炎塊を3人へと放つ。漆黒の炎はやがて3人の攻撃を全て焼き尽くし──そして身を焼く前に消滅した。

    「覚悟があるなら、それでいいじゃないか。生きたい。ロックマンの仇を討ちたい。僕に立ち向かえるだけで、恐怖を脱したよ。君達は」
    「世界を救うなんて、大それたことが理由じゃなきゃいけない理由なんて、ない。そんなのはヒーローの理由だ。ヒーローになりたいわけでもないなら、生きたいっていう理由だけでいいんだよ」

     そういうと覇神は電波変換を解く。3人は死の恐怖から開放され、戦いが終結したこと知り思わず腰が抜けてしまう。けれど、答えは得た。もう戦わないなんてことは、ない。
  • 2012年 12月30日 (日) 08時43分
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