- 『襲撃』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト7
- ※これは「流星のロックマン」というゲームの二次創作です。あらかじめご了承ください
■8月11日
午前1時頃、ロードの宣言どおりに四方向に4体の電波人間が現れる。すぐさまウィザーズとニホンのバトルウィザードが展開される。この時刻よりロードとの、決戦が開始される。
ロードの差し金によりこの決戦が全世界のテレビやハンターへと流れるようになる。ミソラ達もその映像を見る。圧倒的物量で押すサテラポリス連合軍。だがそれは無意味なものに終わっていた。4体の電波体はそれぞれが操る属性で広範囲に攻撃をしかけると、一体も逃すことなく粒子の波に変えてしまう。
端から見ればそれがどれだけ無意味な闘争だったかなど答える必要など無い。あの中にどれだけ人間がいたのだろうか。どれだけその人を帰ってくることを望んだ人がいるのか。考えたくも無い。
そういえばと、あの中には暁やクインティアもいるのではないだろうか。ミソラはそのことに思い当たり画面を凝視する。けれど彼らの姿は見えない。最高戦力として後まで残されているのか。それとももうデリートされてしまっているのか。
ロード達はゆっくりと、だが着実にサテラポリス支部へと攻め込んでいく。彼らにとってこれは戦いでもなく、ただの遊興なのだといえるように、軽やかに、優雅に敵を討っている。命をかけているという事実があまりにも希薄。それほどの戦力差だ。
(ああ、戦おうとしないでよかった……)
自分がいても、きっとこの状況はさほど変わらなかっただろうと、ミソラは内心でほっとしていた。勝てるわけがない。スバルすらも殺してしまった電波体の集団が、自分ごときが敵うわけが無い。
──なのに、何故こうも胸が苦しくなるのか。どうしてすぐにでも動きたくなるのか。
気づけば暁とクインティアが見えた。2人とも究極変身をし終えているため、相当な戦力アップを成功させている。けれど、それは敵との戦力差を生めることが出来るほどなのだろうか。
無謀だと彼らはわかっているはずだ。勝てないと分かっているはずだ。だが彼らは2方向へと突き進む。2人で一度に四方向は無理だからか、各個撃破の作戦だろうか。
敵は、しかし暁やクインティアが来た所で何も変わらないとばかりに攻撃を繰り返すだけ。1、2回は避けられる。3、4回はかすり始めた。5回目は 直撃する。
声にならない叫びがハンターからミソラの耳へと流れ込む。体が震え上がる。2人のこんな声を、今まで一度も聞いたことが無い。本当に、死ぬ間際の人間が出す声。断末魔。
「や、やめて……」
あのときのスバルと同じように、2人も死んでしまう。ふと違う方角を見ればジョーカーも今にもデリート寸前だった。暁とクインティア同様攻撃を開始し、返り討ちにあったのだろう。けれど、戦場に立っていないミソラに救うことなど出来ない。
敵はあと一撃で3人を殺す。敵の攻撃が3人を襲うのがゆっくりと見える。けれど感覚的にゆっくり見えようが、死が永遠にやってこないわけではない。着実に、3人は、死に──
《そこまでにしてもらおうか》
地獄絵図には、不釣合いの淡々とした声。気づけば画面では風が荒れ狂っているように見える。別のカメラでは漆黒の炎が、別のは太陽のごとき光が、もう一つは紫色のオーラが確認できる。
《つまらない前哨戦はやめないか? 死人を増やしたってお互い意味がないだろ?》
そう何の緊張も持たずに言葉を吐くのは、ミソラが知っている電波体だ。シルバー・ウィンド。敵か味方かもつかない、最強の剣士。
では他の3人は彼の仲間だろうか? ──ミソラは知らないだろうが、もう2人は覇神と光に違いない。暁とクインティアを救出し、敵と対峙している。そしてもう一人は、ソロ。
「なんで……? だって、ソロはシルバー・ウィンドと……?」
あの2人は相当険悪な関係だったはずだ。シルバー・ウィンドはソロが狙っているムーメタルを持ち、そのせいで何度か戦っているはず。なのに、なぜあの2人が今は手を組めた?
《ロード……っていうのか? 俺たちはおまえたちの存在をつい最近知ったんだが、ちょっとあまりにも人を殺しすぎだ。おまえらが何故こんな目的をするかなんて知らないが、少しばかり頭に来た。
だからだ、ちょうどいいしここらにいる俺たち4人とおまえら4人で今から戦おうぜ。楽でいいだろ?》
ロード側からは応答は無い。ただ数秒後、各々がキリュウたちに突っ込んで言ったのが、ある意味では返事だろうか。
それからのことはカメラからではあまり何が起こったかはわからなかった。戦いが激しすぎて、攻撃が相殺しあいその余波で空間が揺れたからなのだろうか。
やがて、静寂が訪れる。双方の被害は皆無。あくまで小手調べに来たのだろうか。どちらとも拮抗したまま本気で倒そうとしなかったのか。
《…………あなた達がわたしたちの一番厄介な敵ですね》
ロード側から、今日始めて言葉が交わされた。
《ここで残りわたしたち4人を追加してもいいのですが…………それでは面白みが無い。あなた方の強さをもっと引き出し、それから倒したほうが後々効率がいいでしょうし》
《どっちにしろおまえらは俺たちに勝てないがな》
《………次の攻撃はいつになるかはお知らせしなくていいでしょう。あなたたちのような強力な電波体が、人間側に着いたのですから》
それが捨て台詞だったのだろうか。ロード側の電波体は全て撤退する。この場でキリュウたちを倒すことを不可能と感じたのだ。
《…………さて、ではこれから人間側はどうするかだが、俺たちは別にサテラポリスと組む気はない。俺たちは俺たちで、為すがままに行動する。それはサテラポリスだって分かっているだろう? …………もし戦力が欲しいなら、不貞寝している奴らをたたき起こせばいいさ》
そしてキリュウたちも去っていった。もうやるべきことはやった。戦いが無ければ彼らは矢面に立つことを良しとしないからだろう。
『ねえ、ミソラ……』
「……なに? ハープ?」
『あの、さっきのシルバー・ウィンドの仲間の一人がね。あなたに伝えたいことがあるって』
「わたしに?」
『あなたは、何のために今まで闘ってきたの?』
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2012年 12月18日 (火) 16時23分
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